〜教経 Side〜

雪蓮達と話をした後、気になっていることがあったので冥琳だけ呼び出した。
気になっていることが何かって?
それは勿論、彼女の『眼鏡』に決まっているだろうが!
『眼鏡』こそ至上!『眼鏡』こそ最強!
体の部位を超えた純粋なフェチそれが『眼鏡』だ!!

……100%中の100%状態になりそうだったのでこのチャンネルは切ってしまおう。

「どうしたのだ、教経?私だけを呼び出して」
「いや、気になっていることがあってねぇ。お前さん、体調が悪かったりしないかね?こう、目眩がするとか、咳が止まらないとか」
「……そんなことがあるわけがないだろう」
「有るンだな?」
「……ない」
「意地張るんじゃねぇよ。良い医者が居るんだ。見て貰うと良いと思う」
「私には必要ない。それに、どうやっても治らないと言われたのだ」
「諦めてんじゃねぇよ。俺はお前さんを失うなんて真っ平御免だ。お前さんがいない将来なんて御免被りたい。何としても生きていて貰わないと困るンだよ」

才能的に考えて。諸葛亮なんかより間違いなく優秀だったんだからねぇ、史実では。

「な、何を言っているのだ、お前は」

何やら頬を赤くしているが、まぁそれは良いだろう。

……周公瑾と言えば早逝だ。
ワンセットで覚えられている位、有名だからな。
折角平家の郎党になったンだ。出来れば、長生きして欲しい。
そう思って、ブラックジャック先生の所に連れて行ったンだが。

「……教経、私は外科医だぜ?お前さんの期待には応えられそうにないね」
「先生よ、そう言わずに何とか診断だけでもして貰えンかね」
「そうは言ってもな……原因が分かったとしても、私では対処のしようが……ん?」

押し問答をしていると、ブラックジャック先生は何やら思い当たったようだ。

「先生、もしかして、冥琳の病気が分かったのか?」
「いや、それは分からん。が、私の他に良い医者が居るのを思い出してな。お前さんの要望に応えることが出来そうな医者だ。腕は、私が保証しよう」

おお!ブラックジャック先生が腕を保証する先生だって!誰だ!?本間先生か!?

「今から奴の診療所に行こうか」
「あぁ、頼むぜ先生。冥琳、行こうか」
「あ、あぁ」

冥琳、頬が赤いが、大丈夫か?









「此処だ。此処にいる」

そこは普通の一軒家を改装した診療所だった。
こんな所に診療所なんて有ったか?
怪訝そうな顔をしていたのに気が付いたのだろう。ブラックジャック先生が説明してくれた。

「これは、ついこの間作ったばかりの診療所だ。私が金を出してやったんだよ」
「先生が金出してやるなんて、珍しいな」
「妃乃子が世話になったのでな。私は恩を忘れるような人間ではない。お互い様なのさ」

ピノコねぇ……。

「おい、居ないのか?」
「誰だ?……あぁ、黒男か。どうしたんだ一体」
「私の患者がな、私の力を借りないとどうにもならないような病気に罹っているかも知れないと言って病人を連れてきたのだが、診察しようにも内科の領分でな。お前さんの力を借りに来たのだ」

中から出てきたのは、赤髪の兄ちゃんだった。

「教経、紹介しよう。鍼師の琵琶丸だ」
「おい!黒男!俺は琵琶丸じゃないって何度言えば分かるんだ!俺の名前は華佗だ!華佗!」
「全く、五月蠅い奴だな。俺は切る、お前さんは刺す。そうやって患者を救うだけの存在だ。名前などどうでも良いだろうに」
「む。それは確かに……」

いやいやいや。ブラックジャック先生がぶっ飛んでるだけだ。
ついでに、先生よ。琵琶丸は盲目のオッサンで有ってこんなイケメンじゃない。
……華佗?今、華佗っていったのか?あの、神医の?

「おお!琵琶丸先生!患者を診てやって下さい!」
「だから俺は琵琶丸じゃ……ん?患者というのは、そこの女性だな?」
「琵琶丸、分かるのか?」
「……この際呼び名はどうでも良い。直ぐに治療しよう。病魔が膏肓に入る前に、撃退しなければならない。これは、緊急性が高いぞ」
「琵琶丸先生よ、助かるのか?冥琳は」
「任せろ!まだ何とかなるだろう!直ぐに治療だ!」

暑苦しい奴だな、この琵琶丸は。ダンクーガと良い勝負だ。

「行くぞ!うおおおおおおおおお!全力全快!必察必治癒!五斗米道ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

体が薄く発光している……これ見たことある気がするな……勇者王的に考えて。
……まさかと思うが、お前さん、光にするつもりじゃ……

「げ・ん・き・に・なれぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

叫び声と共に、鍼を冥琳に突き刺した。

……これで治ったら奇跡だろうが……そして、暑苦しい……
……獅子王凱以外の何者でもないだろうが……

「……琵琶丸、どうだ」
「うむ。手応えアリ」

そっちの台詞も万全かよ……どうなってんだこの世界はよ……

「冥琳、体調はどうだ?」
「……よく分からないが、軽くなった気がするよ」
「それはそうだろう。病魔は退散した。命の危険は去ったと言って良いだろう」

どうやってそうなったのか全く理解出来ないが、兎に角良かった。

「そうか……良かった、冥琳」
「……あ、有り難う、教経」
「いや、当然のことだ。気にしないでも良いさ」

まぁ、本当に良かった。
これで周瑜が早逝することはなくなったンだからな。
フッ……フラグブレイカーとでも呼んでくれ給え!

「じゃな、冥琳。体、気をつけろよ?」
「あ、ああ……」

まだ調子が悪いのか?頬が赤いンだが。

「……先生よ、大丈夫なのか?まだ病気なんじゃないのか?」
「……アレはな、不治の病だ。私では直せない。まぁ、死んだりすることがない病気でな、しかもこの場合、間違いなくその病気によって幸せになるだろうよ。お前さんがお前さんだからねぇ。私はこの病気には関わりたくないな」

何言ってるのか全く分からん。

「……兎に角、死んだりしないんだな?」
「それは保証してやる。絶対に死なないさ。琵琶丸、お前もそう思うだろう?」
「あぁ、そう思う」
「……なら、いいか。先生よ、今日の礼は必ずさせて貰う。俺は平教経だ。教経と呼んでくれ」
「俺は華佗だ」
「分かったよ、凱。じゃ、また今度な」
「お、おい!俺の名前は……」
「まぁいいじゃないか、琵琶丸」
「……お前ら、俺の名前を何だと思ってるんだ……」

後で凱が何やら言っていたが、そんなことはどうでも良いやね。
冥琳の病気が治って良かった良かった。



















〜碧 Side〜

孫策達がご主人様に従うことになった。
だが、私の興味はあんな小娘達にはない。今最も私が興味があるのは、いつご主人様を襲ってやるか、ということだけだ。風には既に宣言してあるんだし、何時にしようかねぇ。

どうヤるのか、については、既に策を講じてあるのさ。
馬鹿娘がご主人様と寝る事になっている日に、馬鹿娘を拘束して衣装棚の中にでも放置し、馬鹿娘の振りをしてご主人様を襲う。完璧な策に、我ながら惚れ惚れしちまうよ。私が髪を翠のように留めて居た時、ご主人様は間違えて声を掛けてきたからねぇ。ついでにそのまま襲ってくれれば良かったものを。

問題は、馬鹿娘とご主人様が寝るのは何時なのか、ということだ。流石に、それは風も教えてはくれないだろうねぇ。その程度の障害は越えて見せろ、というに決まっているのさ、あの娘は。ああ見えてかなり嫉妬深いのは分かってるんだ。絶対に私には教えないだろう。だが、障害があればあるほど燃えるってことを計算していないのかねぇ、あの娘。必ずものにしてみせるよ、この馬寿成がね。

しかし翠の奴、最近本当に女らしくなって来やがった。
仕草の一つ一つに匂うような女の色気を感じさせる様になってきている。女として、充実した生活を送っているからああなるんだろうねぇ。まだまだ私には敵わないが、いい女になったと言える。あれなら馬家の頭領として十分にやっていけるだろう。







「翠、ちょっと来な」
「なんだよ、お母様」

呼びかけると、翠はぶっきらぼうに答えた。
ん?何かそわそわしてるね、この娘は。これは……鎌を掛けてみる必要があるね。

「アンタ、何そわそわしてるんだい。ご主人様に今日抱いて貰うのに体を洗ってないとかそういうことかい?」
「ななな何言ってるんだよお母様!そりゃ、確かに湯浴みしないと拙いけど……」

……フッ、翠。今日はどうやらお前の厄日だよ。
それにしても、こうも簡単に引っかかるとは。まだまだ修行が足りないねぇ。

「まぁ、別に良いけどねぇ。あ、噂をすればご主人様だよ」
「えっ、どこ?」

この馬寿成に背中を見せたのがお前の運の尽きさ!翠!

「はっ!」
「うっ……お、お母様、計ったな……」

私の手刀を首筋に受けて、翠は昏倒したようだねぇ。
この馬寿成、故あれば裏切るのさ!恨むならお前の生まれを恨むが良い。
……ちょっと尋常でない音がしたような気がしないでもないが、まぁ大丈夫だろう……大丈夫かな……大丈夫だと思いたい。
それは兎も角、この馬鹿娘を後手に縛って……と。これで馬鹿娘への備えは万端だろう。後はコイツの服をかっぱらって、髪留めも頂いて……と。よしよし、何処からどう見ても翠だろう。
風が言う所の、じゃぶろー襲撃は今日に決定した。たった今。

フフフ……
いくよご主人様―――種の貯蔵は十分かい?














〜教経 Side〜

「ブルルルルッ」
「?主、どうしたのですか?」
「いや、何かこう、急に寒気がしてな?嫌な予感というか何というか」
「どうせまた変なこと考えてたんじゃないの?」

何を仰いますか、ツンデレラ。そんなことはありませんよ。
失礼なツンデレだな。

「……何かむかつくのよね。こういう時、間違いなくアンタは失礼なことを考えているのよね」
「詠、その手に持っている『100t』って書いてある鎚は流石にやばいと思うんだよねぇ」

香ちゃんハンマーはやばいって。

「やばいのはアンタの頭の中であって私じゃないわよ」
「人をガイキチさんのようにいうのは感心しないな、詠」

言いながら尻を撫でてみる。こうするのが礼儀だろう。新宿の種馬的に考えて。
おぉ、意外に良い尻してるな!安産型か?

「……このっ……馬鹿!飛んでけ!」
「ヘブッ」
「主、聞こえていないかも知れませんが、今日は早いところお休みになった方が宜しいと思いますぞ?翠にもそう伝えておきますから、早々に部屋に戻って養生されることですな」

き、聞こえてはいるんだけどな……取り敢えず、部屋に運んで貰っても良いかね……
翠がこっちに近づいてきているのが視界に映ったのを最期に、俺は意識を手放した。







「……ん……?」
「んっ……ちゅ……」

目を醒ますと、誰かが一生懸命に俺に口づけしていた。
今日は確か、翠の番だ。
そう思ってみると、いつも通りポニーテールを揺らしながら俺に口づけして来ている翠が居た。

……いつもと違って、本当に積極的だな。
俺が意識がないと思ってるからこうも積極的なんだろうが、これはこれでアリだな。
驚かせてやろうと、翠の舌を吸ってやる。

「!んぅ……んっ……」
「ちゅ……ぷは。……翠、俺が寝てると思って好き勝手やってくれt」

……おい、碧じゃねぇか!

「碧!お前何やってんだ!?」
「へ?……まさかもう気付いたってのかい?」
「いや、普通に気が付くだろ。お前さんの方が良い体してるし、色気的にもこの妖しい色気はお前さんのモンだって事は分かる。何より、どんなに似てても碧は碧なンだ。間違えるはずがないだろうが」
「翠を基準にして違和感を覚えたんじゃなく、私だってちゃんと気付いてくれたのが嬉しいよ、ご主人様」

そういって、口づけをしてくる。

「ちゅ……はぁ……」
「……お前さん、それ以上やったら俺だって自制出来ないぜ?」
「自制なんてしなくて良いよ。あたしは、アンタに抱かれに来たんだから」
「何故」
「アンタに惚れたから、じゃ理由にならないのか?」
「そんなことはないが、いつ惚れたんだよ、いつ」
「最初にアンタに逢って、アンタの理想を聞いた時だよ。決定的になったのは、あたしを助けに来てくれた時かな。……嬉しかった」

……何か普段と違って、綺麗じゃなくて可愛いって思っちまうねぇ。

「なぁ、碧。お前さん、言葉遣いが変わってないか?自分のことを『あたし』って、まるで翠みたいだが」
「……こ、これがあたしの地だよ。……おかしいかな?」

そう言って、ちょっと首をかしげて、潤んだ目で俺を見上げてくる。
馬鹿野郎、俺を殺す気か。何だこのギャップは!これがGAP、もといギャップ萌えか!

「普段の碧と違って、新鮮で驚いていただけだ。……可愛いよ、碧」

そう言いながら、抱きしめる。
お前さん、既に服脱いでるのな。そう言えば俺も全裸っぽい。脱がされたのか。

「ば、馬鹿」

恥ずかしそうに顔を背けながらも、しっかりと抱き返してくる。
あぁ、駄目だ。絶対無理だ。
普段あれだけ気が強くてしっかりしてて大人な雰囲気の碧が、こんなになるなんてなぁ。想像出来ねぇだろこれぁよ。

「碧、こっち来い」
「ん……」
「もういいや。駄目だ。抵抗はしない。このままで良い。俺は、もうこのまま抱いちまうことにする」
「う、うん」

いちいち可愛いじゃないかね。
もうどうにでもな〜れってこんな状況なんだろう。

「髪、解いてくれ。翠じゃなくて、碧を抱くんだから」
「ん……嬉しいよ、ご主人様」

翠や他の子供を産んでいるのに、初々しいというか、何というか。
そう言うと、アンタと寝るのは初めてなんだから、恥ずかしいだろ、と。
そう返してきた。

それでいて、主導権を握ろうとするんだよねぇ。碧は。
返り討ちにした時、悔しい、とか、気をやって恥ずかしいから見るな、とか。
兎に角、可愛らしい。

「風達に何と説明したものかなぁ」

事が終わって、腕枕をしてやりながらそう呟く俺に、碧が答えて言った。

「風達には宣言してあるから気にしなくて良いよ、ご主人様」

……公認だってのにも驚いたけど、風に許可を取る辺りは流石だな。
亀の甲より年の功ってやつか?
そう思っていると、凄い顔で睨まれた。……年のことは口にしたら殺されそうだから気をつけようかね。
暫くそのままゆっくりして落ち着いた頃、碧がもう一度口づけしてきた。

「ご主人様、まさか一度だけって事はないよな?」

そう言って。

その後何度したのか覚えていない。
取り敢えず、太陽は黄色かった。
風達に報告したらしく、それから6日間、酷い目に遭った。いや、極楽だとは思うけど。死にそうだ、と思ってBJ先生に強精剤を貰ったのは秘密だ。
そう、秘密なんだ。そうじゃないと、風達に飲まされて……ねぇ。凄いことになりそうだから。