〜教経 Side〜

孫策軍が函谷関まであと10里の地点まで迫っている。詠から、そう報告を受けた。
函谷関にまで寄せてくる事はない。そう思っていたが、どうやら俺の見込み違いだったらしい。

欲を掻いて、長安でも陥落させに来たのかね?
それとも、飽くまで董卓とこの俺は不倶戴天の敵であるとでも言うのかね?

まぁどちらでも構わない。自分たちの行動に相応しい報いを受けて貰うだけのことだからねぇ。

「ご主人様、どうするんだ?」
「どうするもこうするもない。先ず関外で一当てして退く。後は、水関や虎牢関での甘酸っぱい思い出でも思い出させてやればいい。孫策が撤退する時全兵力を以てこれを追撃し、一気に南郷郡と南陽郡を貰うとしようか。誰にちょっかいを掛けたのか、思い知って貰う必要があるからねぇ」
「ま、経ちゃんがそう言うならそうなるんやろ。騎馬が15,000もおる時点で、関に篭もりっぱなしで終わるつもりがない事ぐらいは分かっとったしな」
「そういうことだ。引っ掻き回してやれ、夢に見るほどにな」
「分かっとる。経ちゃんに仕えることになってから初めての戦や。ウチの実力をしっかり認めて貰わんとな」
「何言ってやがる。霞、お前さんの実力は、しっかり認めてるつもりだぜ?お前さんは騎兵を指揮させれば、この国で一、二を争う将だと思ってるンだからねぇ」
「……そ、そか。ほなら、その評価が間違っとらんことを証明して見せたるわ」

嬉しそうにしてるねぇ。格好は痴女だが、意外に純情だな、霞。まぁ、純愛物語読むくらいだもんなぁ。

「あぁ、期待してる」
「将の配置は、如何なさいますか?お屋形様」
「霞が右翼で7,500。翠は左翼で7,500。俺と琴で中央の15,000を受け持つ。詠も中央だ。
陣形は鶴翼。包囲殲滅するように見せて叩いてやる。
先ず中央が突出して敵に当たる。その後に退いて引き摺り込もうとしているそぶりを見せつつ、右翼と左翼から騎馬隊を突入させる。但し、二度に分けてな。一度目は5,000。二度目が2,500。一度目は止められるだろうが、止められた時機に中央を反転させて敵陣に一気に圧力を掛ける。敵の主力が前面に集中した時に、第二陣として2,500の騎兵を突入させる。恐らく、兵数からして耐えられないだろう。
これで叩いたら、函谷関にとって返す。付いてくれば予定通り関で抗戦し、付いてこず撤退するならそのまま追撃戦だ。これで勝てるだろうさ」
「……戦場での采配に関しては、アンタには軍師は要らないわ」
「阿呆め。俺が見落としている事や思いつかない事、俺の策を相手がどのように見るのか等を提示してくれる人間が必要だろうが。
どんなに完全に見える人間でも、人間である以上完璧では居られない。璧でさえ珍しいから秦の昭襄王はそれを欲したンだ。人においては、絶対に存在しない。俺はそう思ってる。そもそも、死ぬだろうが。完璧な存在ってのは、死すら超越した存在だ。あり得ないんだよ。
だからそんな事を言わずに、俺に意見してくれよ?詠」
「分かってるわよ。どちらにしても今回はボクの意見が必要だと思えないけどね。アンタの策で間違いないと思うから」

詠がそう言うなら、問題無いだろう。
某魔術師と常識家のオッサンの関係か?俺と軍師様達の関係は。
……まぁ、某魔術師を名乗るには少々性格が悪い気がするがね、俺の方が。奇跡も起こせそうにないしねぇ。『ミラクル・経』とか『経・ザ・マジシャン』とか言いにくい事この上ない。特に後者。プロレスラーとしか思えないンだねぇ。

「ま、気負わず適当にやろうかね」
「御意」

……いつまで経っても慣れそうにないねぇ。
言われる度にあの音楽が流れ始めるから吹きそうになるんだよねぇ……















〜冥琳 Side〜

函谷関まであと5里の地点まで来たところで、前方の平家軍が現れた。
我々を確認すると左右に大きく軍を展開した。鶴翼の構えだ。
その軍の展開速度と展開の仕方は、見事としか言いようがない。
現状率いている孫呉の兵では勝つ事は覚束ない。

「雪蓮、出てきたぞ。平教経だ」

敵中央に林立する平家の赤旗を従える、『揚羽蝶』の旗。
平教経。此処でも、先陣を切ろうというのか。

「じゃ、冥琳。話し合いに行きましょうか」
「まあ待て。こちらが話し合いをしたい旨、伝令を向かわせる。可能性は低いがいきなり襲いかかってくる事も考えられるからな」
「そんな事しないと思うけど。ま、冥琳に任せるわよ」

話し合いをしたい。
そう、伝令に書状をもたせて向かわせる。
さて、応じてくるだろうか。









話し合いに応じよう。平教経からそう返答があった。
いきなりぶつかり合いにならなくて良かった。見れば見るほど、あの軍勢は危険だと思えてくる。何の気負いも怯えもなく、唯々そこにいる。孫家の兵の気勢に反応もせず、静かにこちらを見つめている。アレは異常だ。反董卓連合の際、あの軍兵が見せた戦いぶりは驚嘆に値するものだった。ぶつかれば、南陽郡攻略どころかこの場で全滅してもおかしくないのだから。

互いの軍勢から離れ、中間地点で話をしよう。
主君と軍師。それぞれ二人ずつで。
その提案を受け入れる事を返答し、雪蓮と共に会談の地へ向かった。


「ようこそ、京兆府へ。早速だが、何を望んで剣を持って訪いを入れてきたのかね?」

平教経がそう問いかけてくる。
いつか見た時と同じ、浅葱色にダンダラ模様の羽織を着ている。
……こだわりでもあるのだろうか?

「南郷郡の豪族達を追って此処まで来たんだけど、それは口実でしかないのよね。本当は、貴方に会いに来たのよ、平教経」
「態々訪ねてきてくれた事には礼を言うがね、俺とお前さんは戦場で殺し合った仲で、親しく訪いを入れるような仲では無かったと記憶しているんだが?」
「殺し合う事ほどお互いを理解するのに手っ取り早い手段はないと思うんだけど?」
「ま、賛同しておいてやるさ。その点についてはな。で、何の用だね、孫策」
「……先ず、先日の事を詫びさせて頂戴。ごめんなさい、平教経。わたしは一騎打ちだと思っていたし、貴方もそう思っていたと思うけど、そう宣言せずに戦ってしまった。そのせいで、私の配下が貴方に弓を射掛けてしまった。水を差すような真似をさせたのは、偏にわたしのせいだわ。ごめんなさい」
「……そういえばそんな事もあったかね?俺はあの程度じゃ殺せないし、別に気にする事はない。一騎打ちだと思っていたのは否定しないが、宣言していなかった事には気付いていたからな。自分の主君が命を落とすという局面で、ああも迅速に動けたお前さんの配下を褒める事はあっても非難しようとは思わんさ」
「そう言って貰えると有り難いわ」
「で、先ずは、と言ったンだ。他にもあるンだろう?」
「ええ。平、貴方が天下統一を目指している事は知っているわ。率直に聞くけれど、貴方はどんな天下を目指しているのかしら」
「そんな事に興味があるのかね?それを聞いてどうするつもりかね」
「……貴方次第では、わたし達孫家は貴方に従っても良いわ」
「……周瑜、お前さん、それを肯んじるのか?」
「軍師というものは主君の意を汲んで策を立てるものだ。従いたくもない主君の下に長々と居るほど私は気が長くないつもりだ」
「ふむ」
「平、答えてくれるかしら?貴方は、この天下で何を望み、何を為そうというのかしら」

平教経は雪蓮の問いかけに少し考えてから話し始めた。

「俺が望むのは、誰もが『平凡な人生』を送る事が出来る世の中だ。越えられぬ苦しみが存在しない、ありふれた人生を皆が送る事が出来る世の中。それを現出するために天下を統一したい。それが俺の望みであり、為すべき事だと思ってるンだ」
「それをもたらす為に、多くの人間を殺してでも?」
「あぁ、そうだ。……まさかとは思うが、孫策。お前さん、誰も傷つかずに皆が幸福になれる世界があるとでも思っているのかね?」
「……もしそうだったら?」
「ハッ。誰も傷つかない世界だと?おかしな事を言うもんだねぇ。
誰も傷つかずに幸福を保つ世界などない。『人間』とはな、犠牲がなくては生を謳歌できぬ獣の名だ。それが些末なものであろうと、必ず犠牲というものは存在する。その犠牲の上に幸福が成り立っている事を認識すべきだな。平等という奇麗事は、人の闇を直視できぬ弱者の戯言にすぎない。孫策、お前さんがいうその世界は、まやかしだ。『誰も傷つかずに幸福になれる』など、人間の醜悪さを覆い隠す為の綺羅布にすぎん。どんなに綺麗な布で覆い隠そうとも、その裏側にある醜悪で鼻が曲がりそうな汚らしさは消えて無くなるモノではない。
俺はそんなものは認めない。醜悪な現実を直視する覚悟無き者に時代を統べる資格はない。この世界が、人間という存在がそのように糞に塗れた汚れたものである事を知って猶、人を愛し共に糞に塗れながらも出来るだけ多くの人間の幸福を希求する者だけが時代を統べる資格を有しているンだ。
俺はそうやって俺の理想を実現してやるンだ。邪魔をする、覚悟無き者共を亡き者にしてな。俺は自分が絶対的な正義を掲げているとは思わない。同程度に正しいと思える正義はきっと他にもあるだろうさ。だが、俺の掲げる正義を否定するなら、力を以てそれを否定して見せろ。それがどんなに美しくとも力を伴わない理想や正義は、只多くの人間を巻き込んで殺すだけの、論ずるに値しないゴミ屑だ。それでもその理想を抱えて生きていくというのなら、理想を抱いて溺死しろ。それだけの覚悟を示して見せろ」

……理想家で現実家。理想を実現させる為に、現実的な手法を用いる。
現実を知って猶、理想を掲げて天下を駆けるというのか、この男は。
人の汚さを知った上で猶、人を愛するというのか。

夢と現。
理想と現実。

一歩間違えれば、身の破滅を招く事くらい分かって居るだろう。
だからこそ人は妥協し、夢と現実の折り合いを付ける。
だがこの男は。
飽くまで理想を貫き通すというのか。

「あはははっ。貴方、気に入ったわ」

雪蓮が心底愉しそうに笑う。
平教経が本当に気に入ったようだ。

「……何が気に入ったのかね?」
「何がって……全部よ、全部。わたしの夢は、旧領を治めることが出来て、孫家の血と従ってくれる民達が笑って暮らせる世の中を創り出す事よ。貴方のように、この天下に住まう全ての人間の幸福を希求しようとは私は思わなかったわ。従ってくれる民達だけで十分だと思っているもの。
わたしは、天下が孫家の下に統一されている必要はないと思っているのよ。わたしの夢を保証してくれるなら従っても構わない、そう思っているのよ」
「……孫策、一つ言っておくが、俺は今のお前さん達を対等な同盟者だとは認めないぜ?俺に従う諸侯の一人として俺の理想をこの世に顕現させる為に尽力する。そういう形でなら受け入れられると思うがね」
「分かってるわよ。董卓もそのつもりで貴方に従ったんでしょうしね。でもその董卓に、絶対的な服従を要求していないらしいじゃない、貴方。独自に動かせる軍勢とそれを自由に動かす事が出来る権限を与えるなんて、どうかしてるわ」
「大事なのは、俺に従う事じゃ無いンだよ。俺の理想とする世の中を顕現させる事だ。月には俺の目が届かない箇所に目を配って貰う。是正すべき事を見つけた時、力でしかそれを為し得ないと判断した際に振るう事が出来る力を彼女に与えているに過ぎないンだよ。
もしその是正すべき対象がこの俺自身なら、彼女に与えた力で俺の目を醒ますべくその力を振るえばいい。掲げた理想から外れ、我が身の保身だけを考えて生きるようになったら俺はお終いなンだ。結果として俺が斃れる事になろうとも俺が理想とした世の中が顕現されるなら構わないンだよ」
「……もしわたし達が貴方に従ったとしたら、わたしの夢を尊重して貰えるのかしら?」
「お前さんが俺にその理想を貫き通すだけの器量と力がある事を証明して見せたらな」
「そう。それなら話は早いわね。
……貴方が天下を統一した暁には、揚州の自治権を頂戴。当然、貴方の示す方針には絶対に従うわ。ただ、それをなす方策についてはわたし達が考え出してわたし達なりのやり方でやらせて貰う。孫家が揚州を治めることを認めてくれるなら、わたし達は貴方に従うわ」

雪蓮の考えている事は分かる。この男が作り出す天下で、謂わば呉王として揚州を統治することを目指すのだろう。
雪蓮の夢を叶えるには、こういう男には従っておいた方が良い。
主君として希有な器量を有する、恐らく名君と呼びうる男だ。彼に従っている家臣から考えて才能もそれなりにあるのだろうし、信義に厚い事は反董卓連合時に確認済みだ。その行蔵にブレはない。彼の保証は天に日が昇るのと同じように確実なものであるだろう。
今日の軍の展開の仕方を見る限り、余程有能な臣が付いているのは間違いない。他にも数多くいるのだ。虎牢関にいた将で此処にいるのは一人だけなのだから。軍事的に見ても今一番天下で充実している勢力である事は間違いない。これと敵対するよりは、従った方が良い。雪蓮の誇りが保たれる限りにおいて。

「……従うには早いだろう。この先俺がお前さん達に対して優位を保ち続けるとは限らない。お前さん達が優位に立つ可能性も十分にあると思うがね。今この時点で俺に臣従する必要性をお前さん達は持ち合わせていないと思うが」
「……これはわたしの勘だけど、少なくとも貴方を凌駕するだけの力をわたし達が身につける事はないと思うわ。
地理的な条件で考えて、わたし達は周辺を諸侯に囲まれた状態。勢力を伸張させようにも、必ず周辺諸侯に対して備えた上でないと軍旅を催す事は出来ない。対する貴方は、伸張する方向を決めるだけでいくらでも伸張出来る国力を備えている。後背に敵を抱えている訳ではないし、調べた限り異民族との関係は極めて良好だから後方を扼そうにも扼せるだけの勢力が存在しない。
その治世は殆どの民を満足させ、その軍兵はちょっとした反乱程度なら即座に鎮圧してみせるだけの練度がある。それを率いる将も有能で、策を考え出す軍師にも困らない。金穀も豊富にあるようだし。こうやって改めて言葉にしてみて分かるけど、現時点で穴がないのよ、貴方たちには。
ちょっと悔しいけど、物の考え方といい領国経営の手腕といい軍兵の練度と士気の高さといい、現状でわたし達が上回っている点はないわ。この現状から、わたし達が貴方を上回る勢力を築き上げる事が出来るとは思えない。
幸いにも貴方の夢や理想はわたし達が思い描いているものをより広範にしたものであることを確認出来た。そしてそれを実現させるために、綺麗事だけでなく血にまみれても構わないという覚悟を持っている事も確認出来た。此処で従わなかった場合、いずれ貴方はわたしを屈服させるために軍旅を催すのでしょう?そして恐らく、わたし達は絶望的な戦いに身を投じる事になる。それであれば、今この時点で臣従しておいて、天下統一後に揚州を任せて貰う方が得策だわ。
抵抗して敗れた後でも、多分貴方はわたし達に揚州の自治権を認めてくれると思う。それを認めて貰うだけの力を貴方に見せる事は出来ると思うから。ま、これも勘なんだけどね。どうせ結果が変わらないなら、より血を流さずに済む方法で同じ結果を出した方が良いもの。その方が、貴方の心証も良くなるでしょうしね」
「……周瑜、お前さんのところの主君は、勘で全てを決めるのかね?俺ぁお前さんの意見を聞いてみるべきだと思うんだがね。俺が言うのも変なンだが」
「……言いたい事は分かるが、これが雪蓮という人間でな。もうとうに諦めている。しかもその決定が誤っていた事がないのだから、軍師としてはこれ程やっていられないことはない。そうやってわたしが斬り捨てた未練を思い出させるような事を言わないでくれ」
「……二人とも、気に入らない言い方ね……」

それならば勘で策を上回る結果を出さないでくれ、雪蓮。

「……俺はお前さんは従わないと思っていたンだがね。少なくとも、一度戦って白黒付けるまでは。誇り高き虎だけに」
「虎も故あれば従うわ。さっきも言ったけど、どうせ同じ結論が出るなら人が死なない方が良いのよ。従っても、わたし達は虎としての誇りや牙を失う事はない。そう思えばこそこう言っているのよ」
「……詠、どうすべきだと思う」
「……孫策が言っている事は嘘じゃないと思うわ。従う、と言うのも本気だと思う。天下統一後、全てを領地をアンタの直轄地としようとは思ってないんでしょ?」
「あぁ。そんな面倒な事は願い下げだ」
「なら、ボクは受け入れた方が良いと思うわ。この時点で孫策達が平家に従ってくれるなら、戦略的に大きな自由を得る事が出来るもの。どれだけ孫策達が領地を広げようと、最終的に揚州しか望まないと言っているのだし、受け入れて良いと思うわよ?勿論、将来にわたってずっとそう思っているとは限らないけど、その時は思い知らせてやれば良いだけだしね。アンタに戦で勝てる人間がこの世に居ると思えないもの」
「ふむ……話が急すぎて判断出来ん。後日、改めて臣従云々については話すとしよう。さしあたり俺に従う意志がある、ということが確認出来た訳だからこの場はこれで良いだろう」
「それでいいわけ?」
「お前さんに従ってきた人間がいきなり俺に従える訳がないだろうが。後日互いに落ち着いた時に改めて話をすべきだろう。大体、俺たちは一度殺り合ってるンだぞ?」
「だから言ってるじゃない。殺し合い程互いを理解出来る方法はないって」
「それが理解出来るのは、お前さんみたいな戦闘狂だけだ」
「あら、賛同した貴方も戦闘狂ってことになるわね」
「俺は違うぞ、そこまでイカれてない……じゃぁまぁ、袁術の旧領を平定したら長安に顔を出してくれ。今後の展望についても話をしておきたいしな。そうだな……一月もあれば十分だろ?」
「力を示せ、ということか?」
「そう受け取ってくれて構わんよ。力なき者に揚州を預けるなんて出来ないだろう?それに相応しい実力がある事を示してくれ。ま、天下に名高い美周嬢の軍略を見せて貰うとするさ」

『美周嬢』。
コイツは、何を言っているのだ。
……まぁ、悪い気はしないが。

この程度が出来なければ、力を持つ諸侯として臣従する事は許さない。
気宇の大きな事だ。楚の荘王が男であったなら、こんな男であったのかも知れないな。

「ふ〜ん」
「なンだ?」
「べっつに〜。冥琳、行くわよ?とっとと平定して長安に行きましょう」
「あぁ」

雪蓮の言う通り、早々に終わらせて長安に行くとしようか。
孫家の力をしかとその目に焼き付けてやるのだ。
私達にその驥尾に付すだけの資格がある事を示してみせるさ。