〜星 Side〜
主が楽平から帰還した。
兵達に話を聞くと、完勝、という言葉以外では表すことが出来ない勝利だ。
主か帰還した。ということは、一日付き合って貰えるということだ。
主と一緒に何をしようか、それを考えているだけで私は愉快な気分になる。
そして一日の最後には……
「星ちゃん、ご機嫌ですね〜」
風だ。ふふっ、それはそうだろう。
「まぁな」
「こんな真っ昼間からお兄さんとの情事を想像して嬉しがるなんて、星ちゃんはとんだ淫乱娘ですね〜」
「なっ……人聞きの悪いことをいうな!」
「……ぐぅ」
「寝るな!」
「おぉ!……麗らかな春の陽気に襲撃されて、ついつい寝てしまったのですよ」
「風、今は冬だ。ついでに言うと、春の陽気は襲撃などしないぞ?」
「ま〜ま〜星ちゃん、冬の次の季節は、春なのですよ〜」
……相変わらずのようだ。
「星ちゃん、留守の将を引き受けた時の約束のことですが〜」
「うん?」
「当然風も一緒にお兄さんに一日付き合って貰いますので〜」
何!?
「い、いや、風!風は主と何も約束はしていなかったではないか!」
「ですが、風もお留守番をしたわけですし、同じ境遇にある二人が同じ約束をして貰っていても不思議はないのですよ〜」
約束して貰っていても不思議はないって……
風、お主は約束していないではないか……
「いや、それならばそれでも良いが、別々の日に主を一日付き合わせれば良いではないか」
「……掛かりましたね〜星ちゃん」
「何?」
「風が一緒にいると困ることをお兄さんにするつもりですね〜?」
「……そんなわけがあるまい。この趙子龍。そのようなことはしない」
「本当ですか〜?」
「本当だ」
「絶対に〜?」
「絶対だ!」
「……ぐぅ」
「寝るな!」
「おぉ!麗らかな春の……」
「風、それはもうやった」
「では、風が一緒にいても問題はありませんね〜、星ちゃん」
とりあえず言いたいことは山ほど有るが、直前の言葉からどうやったらその結論が……?
「おや、問題があるのですか〜星ちゃん。
グッ……問題あるに決まっておろう!風!
私がそう言えない性格をしていることを分かっていてこのような……
「……問題ない」
「そうですか。では、お兄さんの所へ一緒に行きましょう〜」
「くぅ……」
「どうしたのですか〜星ちゃん、おいていきますよ〜?」
……悔しい……主と二人きりで居られると思っていたのに……
これ以上はもうどうしようもないから今日は諦めよう。
だが、もう手段を選んでいる状況ではないことは分かった。
風、稟、私。三竦みの状態になっている気がする。
これを打破するには、少々強引な手を使わないと駄目だろう。
丁度、今の風のように。
風、私は恨みは忘れぬぞ?
〜風 Side〜
お兄さんが帰ってきました。
稟ちゃんは、すっきりした顔をしていました。
溜まっていたものをすっかり落として、いい女になって帰ってきたのですよ〜
こういうと、変態さんは喜びそうですが、別に何かあったわけではありませんのであしからずご了承下さいね。
お兄さんが帰ってきたら、一日付き合って貰うと言っていた星ちゃんの機嫌がいいです。
稟ちゃんも、お兄さんに抱きしめられたと聞きました。
風は稟ちゃんがすごく悩んでいたのを知っていたので、お兄さんが稟ちゃんを安心させる為に抱きしめてあげたのを聞いてお兄さんらしいと思うと同時に、ちょっと稟ちゃんがうらやましくなったのです。
……むぅ〜お兄さんは風にもっと構ってくれるべきだと思うのですよ。
そう思っていると、星ちゃんがどうしても一緒にお兄さんに一日付き合って貰いたいと言ってきたので、風は仕方なく付いていってあげることにしました。
「ところでさぁ、風」
「なんでしょうか〜」
「……その飴、どこで売ってんの?」
「お兄さん、年頃の女性には秘密がいっぱいあるものなのですよ」
「……今の質問に年頃と性別関係有るのか?」
「そうですね〜、お兄さんがどうしても今風が舐めているこの飴を舐めたいというのであれば、仕方がありませんから舐めさせて差し上げましょう」
「風!そうはさせんぞ!」
「おやおや、星ちゃん、どうしてここにいるのですか〜」
「最初からずっと一緒にいる!」
「そうだったのですか〜。あ、お兄さん、風は次はあのお店でお茶を飲みたいのですよ」
「へいへい、分かって御座いますよおぜうさま」
「おぉ〜、風はお嬢様ですか〜。そんなお嬢様にお兄さんは劣情を抱いてしまい、我慢が出来ずとうとう自分の女にしてしまうわけですね〜」
「……主、私は次はあちらへ行きたいのですが」
「わかったわかった、劣情話が終わったら星の行きたい店に行ってみよう」
こんな心温まる会話を続けながら、一日お兄さんと一緒にいました。お兄さんが女の霊的なものに取り憑かれて酷く殴られていたようでしたが、自業自得というものなので仕方がないと風は思うのですよ。
ちゃんと風に構ってくれないと。風は放置されて喜ぶ変態さんではないのです。
お兄さんを使って、実験をすることにするのです。
ふふふ〜
〜教経 Side〜
今日は楽しい一日丁稚の日だった。
星に一日付き合わされると思っていたら何故か風も一緒だった。
そして、星の機嫌が異常に悪かった。
風も、偶に風・・さん・・的存在を召還して俺に傅くことを強要してきた。
なんというか、女って怖い。
でもそれに逆らえない俺がもっと怖いです。
いつか、いつか大変な間違いを犯してしまいそうで。無論、性的な意味で。
稟が居たら、もっと酷くなってたんだろうなぁ……あの混沌とした状況かつ時刻表がない状態で1番線から稟が発射したらと想像しただけで、酷いめまいを感じる。
今日は本当に疲れた……8割気疲れだろこれ。
とにかく、そんな辛い思いではとっとと忘れて早く寝た方が良い。
寝よう。うん。寝よう。
新しい朝が来た。希望の朝だ。
おはよう御座います。希望の朝に絶望している教経です。
朝起きたらフローラル的な良い匂いがした。
金縛りにあって起きれないと思ったら、何故か風が俺に馬乗りになって寝てた。
俺の服の前がはだけてた。風はちゃんと服着てるけど。
けどなぁ、俺今多分すげぇ青い顔している自信有るわ。うん。
もしかして、俺お婿に行けない躰に?
この状態を誰かに、というか星と稟に見られたら問答無用的な何かが発生する気がするんだよ。うん。何か思い出しちゃいそうな感じだけど、何だろうね?
「主、起きていらっしゃいますかな?」
あ。
「……ほう」
いやぁ、星。今日も綺麗だよ。その美しい手には槍は似合わない。どうか俺の手を取っておくれ?
「はは、主。風と共に寝たのですかな?」
いやいや、星。その美しい手にはさ、槍はさ、似合わないとさ、思うんだよねぇ。
「ア ル ジ ?」
おお、星・・さん・・的存在が遂に覚醒したわけだね。こう連続するところを見ると、俺にはハンターブリーダー的な才能が豊かにあるみたいだねぇ。
俺は操作系だ。強化系とは相性が悪い。ここは一旦引かせて貰うぜ?
あ、風が上にいて逃げられないのか。
星・・さん・・的存在が一歩一歩、ゆっくりと近づいてくる。
怖いですねぇ〜恐ろしいですねぇ〜
それでは皆さん、さよなら、さよなら、……さよなら。
〜星 Side〜
主に夜這いをかけようかどうかと悩んでいるうちに朝になっていた。
物の本によると、『夜討ち』『朝駆け』といって、頭がはっきりしていないうちに奇襲をするのが常道なのだそうだ。うむ、役に立つなこの本は。
いざ、朝駆けへ。
そう思って主の部屋に入ると、何と主の上に風がまたがって寝ているではないか。
しかも主の服ははだけている。
……風に先を越されたか。
いや、まだ分からぬ。主に問いただしてみなければ、何があったのかは分かるまい。
普段の言動はアレだが、風は純情だ。
いきなりそういうことにはなっていないだろう。目の前の主の往生際の悪さから考えて。
ただ主、ごまかそうとするのは頂けませぬなぁ。
私が美しいのであって手が美しいわけではありますまい?
そうでしょう?
ア ル ジ ?