暗く、静かな空間だった。

 辺りには動く物の気配無く、ただ霧だけが大気を覆っていた。

 私は手にある金属製の物を握りしめる。

 持ち手がトネリコの木で出来た特注品だ。

 気配を感じる。

 私の正面を通る道筋だ。

 落ち着かない呼吸を深呼吸で落ち着かせる。

 気配と共に音が近づく。

 気付いていない。

 正面に気配の主がさしかかる。

 その瞬間、迷わず引き金を引いた。

 くぐもった音と共に吐き出される一発の殺意。

 それは相手の反応速度よりも早く、相手の頭部に命中した。

 一人、倒した。

 ホルスターから拳銃を一丁抜き、ライフルをその場に置いて、腰のトンファーを確認する。

 茂みから出て、気絶している人に近づく。

 覆面をしているのでそれをはいで顔を確認する。

 無線を手に取り、スイッチを入れる。

「栞から本部へ、北川さんの撃破を確認」

「了解。放送を流します」

 栞は、その場で北川を縛り上げ武装を奪う。

 何故、こんな事になったか、それは五時間前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チキチキバトル

the first

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「進藤さん久しぶりですね」

「うん、久しぶりしおりん。去年の暮れ以来だね」

「そうです………」

「もう、身体動かしても大丈夫なの?」

「そうですね………」

「それにしてもびっくりしちゃったよ、急に病気治ったって聞いて………あう゛っ!」

 突然、進藤の声が止まる。

「落ち着け」

 進藤の背後にいたのは、片瀬健二。

「もう、先輩! いきなり酷いですよ!!」

 悪びれることなくひょうひょうとしている。

「それにしても、雪希と栞が知り合いなのは見当がつくけど、まさか進藤まで知り合いだったとは…………」

 栞の横で、コーヒーを飲みながら相沢祐一が呟いた。

「でも、祐一さんと片瀬さんが知り合いだったのは知りませんでした」

「健二は俺の同士だからな」

 いわゆるえちぃ本つながりだが、そこは協定によって徹底的に秘匿されている。

「ま、そのおかげでこうしてバカ出来る友達が集まったって訳だ」

「あれ、かったるいから来ないんじゃなかったのか? 朝倉?」

「そう言うな、このメンツだったら十分に楽しめるじゃないか」

 入り口から入ってきたのは遊ぶためだけにわざわざ瀬戸内海から北海道にまで来た朝倉純一である。

「あ、純一さん………この方達は?」

 純一の影に一人の女性がいた。

「ああ、俺の遊び仲間だ、美咲」

「あ、初めまして、鷺澤美咲といいます」

 きわめて普通な挨拶をする鷺澤美咲。

「おっ、全員揃ったな」

 百花屋の奥の厨房から出てきたのは、キュリオ二号店の店長結城大介。

「いらっしゃいませー、百花屋へようこそ♪」

「いや、美里、ここ百花屋だから静かにしような………」

 ここに、ある意味でオールスターが揃った。

「では、皆さん集まりましたね」

 何時の間にかテーブルに座っている水瀬秋子を見る。

「皆さんには、ちょっとしたゲームをして貰います」

「ゲーム?」

 秋子は不適に立ち上がり、いつものポーズを取った。

「そう、サバゲーです」

 その瞬間、全員がズッコケた。

 

 

 


「サバゲー? 何故に?」

 秋子は答える。

「様々なところから投書が来てるのですよ」

 封筒を四通取り出して中身を取り出す。

「一枚目は祐一さん宛。『てめぇばかりモテてズリぃぞ!!』」

 祐一は頭を手で押さえ、後ろの席の人物を思い浮かべていた。

「二通目は片瀬さん宛。『何人侍らせりゃ気が済むんだこの野郎!!』」

 非常に痛いところを突かれた健二。

 そう、彼は七股である。その上で全員の了承済みである。

「三通目は朝倉さん宛。『面白そうだから。こうでもすれば参加せざるをえないだろう?』」

 純一は速攻で友人の抹殺を決定した。

「四通目は結城さん宛。『若い内は経験しておくのが良いですよ? 榊原より』」

 一体何を経験しろと言うのですか、バラさん………と大介は心から思う。

「これが作戦図です」

 一枚の地図が出てくる。

「ちょっと離れたところにある無人島です。ここにモテない人たちが集結しています。祐一さん達はこれを殲滅すれば勝ちです」

「なんの得があるんだ?」

 大介の発言に、秋子はチケットを取り出す。

「結城さん達には私が見繕ったアンティーク食器10セットを」

「やります」

 即答だった。

「朝倉さん達にはこちらの宿泊券を」

「あ………純一さん、あれ…………」

「ああ、参加する必要があるようだな」

 秋子の手にある宿泊券は卒業旅行の行き先を調べる為のパンフに載っていた温泉である。

 予約は一杯で諦める事にしていたものである。

「片瀬さんにはこれを」

 航空券をちらつかせる。行き先は沖縄。枚数は七枚。

「沖縄旅行、しかも全員で………」

「先輩、ぜひとも参加しましょう!!」

 進藤が最高なまでにテンションを高めている。

「祐一さんにはこちらを」

「○ディバの………アイスと、ウエディングドレス!??」

「これは………暗に結婚しろという事ですか?」

「素敵………ですね」

 栞は完全にうっとりしている。

「では、参加する方はこちらの誓約書にサインを」

 全員がサインしたのは言うまでもない。

 

 

 

続くかも

 

 


中編の予定です。

しかも不定期の。

勢いなので、出来る限り早く完結させる予定です。

………投石は、勘弁ね?