愛情からなされることは、いつも善悪の彼岸で起こる


この行為もまた善悪の彼岸で行われた事なのだろう。


愛情よりなされた事なのだから


永劫回帰…


それは同じ事の繰り返し。


幾度も繰り返される。


永久に続く安息


永久に続く幸福


それは…


幸福の地獄…










Catharsis

第三十一編 永劫回帰
(?月?日)










「祐一君!起きてよ」

頭の上で声がする。
うっすらと目をあけるとなにやら人が蠢いている。
うーん、何もんだ?

「宇宙人がついに侵略か…」

地球もついに終末を迎えるよう時期か…すげー時を目の当たりに出来たな…。

「うぐぅ…ボクは宇宙人じゃないよ…」
「うぐぅ…変わった鳴き声だな…。こんなんでコンタクトを取れるのか?」
「祐一君…起きてるでしょ?」
「分かっていたか」

面白くない。もう少しからかってから起きようと思ったんだが…。
まぁ、悪くない目覚めだな。
頭もそれなりにしっかりしてるし…。

「んじゃ、学校に行くか」
「うん」

家の外に出ると、白く染まった雪景色が広がっていた。
しかし…人が見当たらないな。
俺たち遅刻してるのか?

「なぁ、俺たちって遅刻?」
「どうして?」
「いや、人が見当たらないからな」
「大丈夫だよ」
「そうか」

あゆがそういうなら大丈夫なんだろう。

「ねぇ、祐一君」
「ん?」
「行こうよ」
「そうだな」

さっきまであった突っかかりは取れて、あゆと並んで歩き始めた。
さぁ、今日も楽しい授業だな。



「というわけでたい焼きは海で泳ぐと沈むんだよ」

何が、どういうわけか知らんが、海ではたい焼きが沈むらしい。
つーか、沈む前に解けないか?あの茶色い皮がはがれて中のあんこが…。

「…なんともヤな光景だな…」
「何が?」
「いや、たい焼きのあんこだけが海の底に沈んでいく光景…」
「祐一君…一体どんな事を想像しているの?」
「海を泳いだたい焼きの末路」
「うぐぅ…祐一君がたい焼きをいじめるぅー」
「いや、脳内補完だから問題なし」
「それでも駄目だよ」
「安心しろ、たい焼きはちゃんと迷わず成仏したぞ」
「うぐぅ」

すねるあゆの声。
どこまででもお子ちゃまだな、こいつは…。



放課後、商店街に寄る俺たち。
相変わらず、俺たち以外の人は見られない。
それでも問題ないだろう。

「なぁ、あゆ」
「ん?どうしたの?」

俺の先に歩いていたあゆが振り返る。
ダッフルコートのすそが広がり、こっちを向いたときには元の位置に戻っていた。

「いや、何でもねーよ」
「ねぇ、祐一君。たい焼き食べよっか」
「何!あれだけ食っても食い足りないと!」
「えー、祐一君は大丈夫なの?」
「…お前、病院に行け。たぶんたい焼き中毒って診断されるぞ」
「うぐぅ、そんな病気無いよ」
「いや、お前だけに発生する特殊症状だ。あゆ、かわいそうだな」

俺は心底、残念そうな顔であゆに哀れみの目を向けた。

「祐一君がいじめる…」
「いじめっこの祐ちゃんが俺のとおり名だったからな」

そんな馬鹿なことをして、俺たちの放課後は過ぎていく。



「じゃ!また明日な」
「うん!」

俺の家の前であゆと別れを告げる。
これで俺の一日が終わる。
家の扉を開ける。「ただいま」と誰もいない家に向かってそう言う。
返事は返ってこない。

「さーて」

冷蔵庫をあさり、冷たいお茶を見つける。
のどに流し込んで風呂に入りに向かう。
さぁ、これで今日も終わりだ。
俺は一人、布団にもぐりこむとそのまま意識が深みに嵌っていった。










それで良いのですか?










「祐一君!起きてよ」

頭の上で声がする。
うっすらと目をあけるとなにやら人が蠢いている。
うーん、何もんだ?

「宇宙人がついに侵略か…」

地球もついに終末を迎えるよう時期か…すげー時を目の当たりに出来たな…。

「うぐぅ…ボクは宇宙人じゃないよ…」
「うぐぅ…変わった鳴き声だな…。こんなんでコンタクトを取れるのか?」
「祐一君…起きてるでしょ?」
「分かっていたか」

面白くない。もう少しからかってから起きようと思ったんだが…。
まぁ、悪くない目覚めだな。


目を覚ましてください。


頭もそれなりにしっかりしてるし…。

「んじゃ、学校に行くか」
「うん」

家の外に出ると、白く染まった雪景色が広がっていた。
しかし…人が見当たらないな。
俺たち遅刻してるのか?

「なぁ、俺たちって遅刻?」
「どうして?」
「いや、人が見当たらないからな」
「大丈夫だよ」
「そうか」

あゆがそういうなら大丈夫なんだろう。

「ねぇ、祐一君」
「ん?」
「行こうよ」
「そうだな」

さっきまであった突っかかりは取れて、あゆと並んで歩き始めた。
さぁ、今日も楽しい授業だな。


いつまで夢を見るつもりですか?


「というわけでたい焼きは海で泳ぐと沈むんだよ」

何が、どういうわけか知らんが、海ではたい焼きが沈むらしい。
つーか、沈む前に解けないか?あの茶色い皮がはがれて中のあんこが…。

「…なんともヤな光景だな…」
「何が?」
「いや、たい焼きのあんこだけが海の底に沈んでいく光景…」
「祐一君…一体どんな事を想像しているの?」
「海を泳いだたい焼きの末路」
「うぐぅ…祐一君がたい焼きをいじめるぅー」
「いや、脳内補完だから問題なし」
「それでも駄目だよ」
「安心しろ、たい焼きはちゃんと迷わず成仏したぞ」
「うぐぅ」

すねるあゆの声。
どこまででもお子ちゃまだな、こいつは…。


何度、それを繰り返すつもりですか?


放課後、商店街に寄る俺たち。
相変わらず、俺たち以外の人は見られない。
それでも問題ないだろう。

「なぁ、あゆ」
「ん?どうしたの?」

俺の先に歩いていたあゆが振り返る。
ダッフルコートのすそが広がり、こっちを向いたときには元の位置に戻っていた。

「いや、何でもねーよ」
「ねぇ、祐一君。たい焼き食べよっか」
「何!あれだけ食っても食い足りないと!」
「えー、祐一君は大丈夫なの?」
「…お前、病院に行け。たぶんたい焼き中毒って診断されるぞ」
「うぐぅ、そんな病気無いよ」
「いや、お前だけに発生する特殊症状だ。あゆ、かわいそうだな」

俺は心底、残念そうな顔であゆに哀れみの目を向けた。

「祐一君がいじめる…」
「いじめっこの祐ちゃんが俺のとおり名だったからな」

そんな馬鹿なことをして、俺たちの放課後は過ぎていく。


このまま、あなたは壊れるつもりですか?


「じゃ!また明日な」
「うん!」

俺の家の前であゆと別れを告げる。
これで俺の一日が終わる。
家の扉を開ける。「ただいま」と誰もいない家に向かってそう言う。
返事は返ってこない。

「さーて」

冷蔵庫をあさり、冷たいお茶を見つける。
のどに流し込んで風呂に入りに向かう。
さぁ、これで今日も終わりだ。
俺は一人、布団にもぐりこむとそのまま意識が深みに嵌っていった。










それで良いのですか?相沢さん
あなたはそうやって逃げるつもりですか?
あなたはそうやって狂うつもりですか?











「祐一君!起きてよ」

頭の上で声がする。
うっすらと目をあけるとなにやら人が蠢いている。
うーん、何もんだ?

「宇宙人がついに侵略か…」

地球もついに終末を迎えるよう時期か…すげー時を目の当たりに出来たな…。

「うぐぅ…ボクは宇宙人じゃないよ…」


気が狂う…


「うぐぅ…変わった鳴き声だな…。こんなんでコンタクトを取れるのか?」
「祐一君…起きてるでしょ?」
「分かっていたか」

面白くない。もう少しからかってから起きようと思ったんだが…。
まぁ、悪くない目覚めだな。
頭もそれなりにしっかりしてるし…。

「んじゃ、学校に行くか」
「うん」

家の外に出ると、白く染まった雪景色が広がっていた。
しかし…人が見当たらないな。
俺たち遅刻してるのか?

「なぁ、俺たちって遅刻?」
「どうして?」
「いや、人が見当たらないからな」


誰か…助けてくれ…。


「大丈夫だよ」
「そうか」

あゆがそういうなら大丈夫なんだろう。

「ねぇ、祐一君」
「ん?」
「行こうよ」
「そうだな」

さっきまであった突っかかりは取れて、あゆと並んで歩き始めた。
さぁ、今日も楽しい授業だな。


何度、繰り返せば良い…。


「というわけでたい焼きは海で泳ぐと沈むんだよ」

何が、どういうわけか知らんが、海ではたい焼きが沈むらしい。
つーか、沈む前に解けないか?あの茶色い皮がはがれて中のあんこが…。

「…なんともヤな光景だな…」
「何が?」
「いや、たい焼きのあんこだけが海の底に沈んでいく光景…」
「祐一君…一体どんな事を想像しているの?」
「海を泳いだたい焼きの末路」
「うぐぅ…祐一君がたい焼きをいじめるぅー」
「いや、脳内補完だから問題なし」
「それでも駄目だよ」
「安心しろ、たい焼きはちゃんと迷わず成仏したぞ」
「うぐぅ」

すねるあゆの声。
どこまででもお子ちゃまだな、こいつは…。


いつまで俺はこの迷宮にいればいいんだ…。
助けてくれ、御速水…。



放課後、商店街に寄る俺たち。
相変わらず、俺たち以外の人は見られない。
それでも問題ないだろう。

「なぁ、あゆ」
「ん?どうしたの?」

俺の先に歩いていたあゆが振り返る。
ダッフルコートのすそが広がり、こっちを向いたときには元の位置に戻っていた。

「いや、何でもねーよ」
「本当に何も無いのですか?」
「えっ?」

俺とあゆ以外の声がした。
あゆが俺の肩越しに視線を止めていた。呆然とするわけを知るために俺は振り返る。
そこには…黒瞳黒髪の少女が立っていた。
少女…というには少し大人びている気がする…。

「どうして……」

あゆの声が震えている。ありえない現象に思考が追いついていないのか…。

「どうしてここにいるの?」
「いてはいけませんか?」
「…ボクの中に入ってこないで」
「こんな空気の悪いところには二度も入りたくありません」
「……出て行って…」
「相沢さんを帰していただければ出て行きますよ」
「祐一君はボクのものだよ」

俺を挟んであゆと見知らぬ少女は言い争いをしていた。
俺はこの少女をどこかで見た事があるはず…。

「なら、どうして私はここにいるんでしょうね」
「…!!」

あゆは驚いた顔で俺を見る。
俺が何かしたのか?思い当たる節なんて…


助けてくれ…


「祐一君…」

あゆの視線が強くなる。
俺が何かしたのか?俺は何も覚えは無いぞ


助けてくれ…


「祐一君が呼び寄せたんだね」

あゆの目が急に鋭くなる。あの幼さが残る顔ではない。
俺は知らないぞ…。この黒瞳黒髪の少女を。


助けてくれ…御速水…


「いつまで自分の殻に閉じこもるおつもりで?」
「な、何を言って…」
「私のことを忘れたのですか?」
「忘れたって俺はお前を知らないぞ」

はじめてみる。あゆ以外に俺は人なんて知らないぞ…。
えっ…あゆ以外を知らない?
どうしてだ?学校には同級生が……いた?

「…どうなってるんだ?」
「祐一君。何も怖がらなくていいよ。大丈夫だから」

あゆの声が怯える俺を優しく慰める。

「いい加減にしなさい。相沢祐一。あなたはその程度の人間なのですか?」

見知らぬ少女の声が俺をえぐる。


助けてくれ、御速水


「邪魔をしないでよ」
「その言葉、そっくりそのままお返しします」
「……ボクの中に勝手に入ってきて…」

あゆが怒ってる?
俺があゆを怒らせるようなことをしたのか?
いや、この見知らぬ少女があゆを怒らせたのか?


俺の声が聞こえているか?御速水…


「聞こえていますよ」

俺に対して話しかけてくる。俺は話しかけた覚えは無いぞ。

「だ、誰なんだよ…」
「私の名前を忘れたのですか?」
「祐一君」

あゆの声が俺の本能に絶対的指示を下す。話しかけるな。そう脅迫されている。


頼む…助けてくれ。御速水…
もう、俺は何万回も繰り返されるこの世界では生きていけない。
気が狂う…。



「そうでしょうね。普通の人間がこの世界に耐えられるとは思っていません」
「黙って」
「私は別にあなたに話しかけているのでは無いのですから、指示される言われはありません」

なら、誰に話しかけているんだ?
あゆが俺をかばうように立ちはだかる。
なぜか、あゆが大きく見える。


頼む!


「いいでしょう。その願い、その思いでこの場を凌ぎましょう」

何だ?何が始まるんだ?
“ピシッ”

「えっ」
「何をするつもり?」
「相沢さんを帰していただくだけです」

“ピシッ”

「ボクは許さないよ」
「私が許します」

“ピシッ”

音が大きくなっていく…。どうなるんだ?これから…。

「“御速水さん”…消えてくれる?」
「やっとタブーを発してくれましたね」

御速水…?そうだ…。覚えがある…。

「あっ…」

しまった、といった表情を浮かべるあゆに対して、表情に変化の無い御速水。

“ピシッ、ピシッ”

「……助けてくれ、御速水」
「ゆ、祐一君?」

あ、あれ?俺は…何を言って…

「やっと言えましたか。分かりました。私の全力を持って助けましょう」

そう宣言すると御速水は一歩も動かなかったその場所を蹴って俺の方へ向かってきた。
あゆが『何か』で対抗している。
しかし、御速水も負けじと『何か』を『何か』ではじき返す。
あゆの『何か』は御速水に対して効力を持たず、横を通り過ぎるとき、俺を掴んだ。
襟元を掴まれているせいで首が絞まる。
しかし、それも一瞬。
景色がとまると自分がどんな状況にあるのか把握しようと回りを見る。
隣には御速水。
そして、正面には後姿のあゆがいた。

「えっ?」

一瞬で?
驚いていると、さらに驚きの事が起きた。あゆの周りの空間が膨張を始めたのだ。

「な、何だ!」
「立って!」

強引に腕を引き上げられ立たされる。

「ボクの…」

ゆっくりと振り返る。
何とか立ち上がると俺をかばいように御速水が立った。

「祐一君を…」

さらに膨張を続ける。これ以上は危険だと俺の本能が察知する。

「間に合いませんね」
「な、何が間に合わないんだ!」
「これに便乗しましょう」
「お、おい!」

あゆの周りの空間の膨張が止まった。全てが一瞬、止まる。
時間さえもその流れを止められた。
いや、そもそもこの空間に時間なんてあったのか?

「返してええぇぇぇぇ!!!」

膨張…いや、空間が破裂した。
商店街の建物はまるでガラスが割れるように崩れていった。
ガラスの向こうは真っ白の空間だった。
と、黒い穴が口を開けて待っていた。ま、まさか…
俺と御速水は寸分の狂いも無くその穴に落ちていった。
全てが黒く。何も見えないそこで俺は…温もりに抱かれて意識を失った。










願わくは、もう永劫回帰の世界ではありませんように……。