キーの近接国、サーカス。
桜花首都ノーザン防衛部隊〜通称、D.C.〜大将補佐、鷺澤美咲の邸宅。
その中庭にはベンチが置かれ、一組の男女がお茶をしていた。
猫が女性の上で静かに座っていた。
女性は手に持っていたカップを置き、ティーポットから紅茶を注いだ。猫をなでる。
???「頼子、あなたも飲む?」
頼子と呼ばれた猫は小さく首を振る。
???「ところで、今晩はカレーにしようと思うのですが・・・」
???「美咲さんのカレーはおいしいから大歓迎」
美咲「もう・・・おだてても何も出ませんよ?純一さん?」
純一と呼ばれた男性もカップを置く。
純一「ははは、おだてなんかじゃないよ。ただ純粋にほめているだけだよ」
美咲「もう・・・」
ドサッ!
二人の前方から急にそんな音が響く。
美咲「何でしょうか?」
純一「何なんだろうか?見てくるよ」
ベンチから立ち上がり軽く走り出す純一。後を美咲と頼子が走る。
こんな感じに物語は始まっていくのだった。
ベルムラント物語 〜2ページ目・彼女はいったい誰?〜
中庭の芝生には女の子が倒れていた。
近づいて見てみると、
???「すぅー・・・・・・」
寝ていた。
純一「かったる・・・」
美咲「とりあえず、音夢さんを呼んできます」
純一「分かった。俺はこの子を客間に運んでおく」
純一は女の子を担ぐと客間に向かって歩き出した。
美咲「どうでしょうか、音夢さん?」
聴診器やその他もろもろをかばんにしまいながら、
音夢「ただの過労ですね、体には異常はないですし」
と、答える音夢。
純一「いちおう、あいつの持ち物調べてみたぞ」
音夢「兄さん、人の持ち物を勝手に見るのはどうかと思いますが?」
やれやれ、といった感じでいきさつを説明した。
音夢「そうですか・・・で、収穫はありましたか?」
純一「そのことだが、D.C.の隊長クラス全員を集めてくれ。かったるいことになりそうだ」
美咲「分かりました。1時間以内には全員を集めます」
純一「頼みました、美咲さん!」
きっかり1時間後。
音夢「兄さん、何を話すのでしょうか?」
美春「先輩、バナナ食べますか?」
D.C.第1部隊隊長、朝倉音夢。隊長補佐、天枷美春。
第1部隊は主に救護、補給など後方支援部隊。音夢は医者として参加し、
美春は無類のバナナ好き。音夢のボディーガードをかねて、実家の天枷研究所提供の試作品を実験している。
萌「すぅー・・・・・・・・・」
眞子「ちょっと、お姉ちゃん。会議が始まるんだから寝ないでよ」
D.C.第2部隊隊長、水越萌。隊長補佐、水越眞子。
『D.C.の矛』とも呼ばれる第2部隊。実質の部隊運営は眞子が執っている。萌は占いが得意で、内外問わず信頼されている。
眞子は無類の格闘信望者で、そのため『キーの美坂・サーカスの眞子』とまで称される。
ことり「朝倉君てば、何を考えてるんでしょうか?」
とも「さあ・・・?あの人の考えた企画には私たちも振り回されてばかりだしね?みっくん?」
みく「うん、ともちゃん」
D.C.第3部隊隊長、白河ことり。隊長補佐、みっくん。同じく、ともちゃん。
『D.C.の壁』とも呼ばれる第3部隊。ことりは、その持ち前の明るさと、心が見えるような気の回し方で慕われている。
補佐のみっくん、ともちゃんは・・・ごめんなさい!作者が姓名を覚えていないのでそのまま『みくとも』で使わせていただきます。
気を取り直して・・・二人はことりの親友で、コンビプレイを得意としている。
杉並「朝倉・・・まさかあの計画を・・・?」
D.C.諜報部隊隊長、杉並啓。
純一の悪友にして諜報部隊長。本人曰く、『非公式新聞部』と名乗っているがその情報網は侮れない。
さくら「にゃぁー・・・急に呼び出しなんて・・・・・・」
暦「まったく、人使いの荒い・・・」
天枷研究所名誉研究員、芳野さくら。副所長、白河暦。
天枷研究所の研究員で、主に新しい技術開発にいそしむ。さくらは魔術師(ウォーロック)の称号を、
暦は狂科学者(マッドサイエンティスト・本人は凄く不満)の称号を持つ。
美咲「それでは、全員そろいましたね?」
D.C.大将補佐、鷺沢美咲。大将の補佐のため、強力な魔術を身に付けた魔法使い。
音夢「ちょっと待ってください、兄さんがいません」
眞子があたりを見回す。
眞子「あいつめ〜!人を呼び出しといてあたし達を待たせる気!」
眞子の後ろに人影が現れ、手に持ったハリセンで後頭部を叩く。
純一「一本!」
D.C.大将、朝倉純一。音夢の兄で召喚士(サモナー)の称号を持つ。
眞子「何が一本だぁ〜!」
振り向きざまに両手で純一の首を持ち上げる。いわゆる、ネックハンギングツリーである。
純一「うぐぇー!!じむ!じむぅ!ダッブ!!ダッブ!!(訳・うぐぇー!!死ぬ!死ぬ!タップ!!タップ!!)」
眞子の腕をたたくとあっさり開放した。
純一「死ぬかと思った・・・」
眞子「当然の報いよ」
萌「ところで、朝倉君?私たちを呼び出した理由はなんですか?」
眠たそうにあくびをしながら聞く。
ことり「それは気になりますね」
杉並「ついにミステリーサークルに興味を持ったか!俺はうれしいぞ!」
純一「雷の結晶、今ここに!スパーク!!」
杉並に向かって雷の玉が飛び、直撃する。何かヒクヒクしてるが気にしない。
純一「さて、本題に入ろうか」
純一が椅子に座る。
純一「今日、美咲さんと中庭でお茶してたら女の子が降ってきた」
杉並「ほう、それはミステリーだな」
純一「即座に駆け寄って美咲さんが調べてみたら、魔力の波動から空間移動をしてきたらしい」
ことり「でも、それだけじゃ全員を呼び出しませんよね?」
さくら「もしかして美咲さん、『次元間移動』の波動だったの?」
美咲「はい。ただの空間移動では感知できない波動がありました。でも、魔力容量はそんなになさそうなんです・・・」
暦「それはおかしいな・・・ただの空間移動でも美咲の容量の半分は使用するぞ?」
純一「それなんだが、これを見てくれ」
テーブルに一丁の銃とカードケースが置かれる。
美春「この銃は・・・天枷研究所の物ではありませんね」
さくら「うん、その上・・・ボクたちには作れない」
眞子「何で?」
暦「銃には弾丸が必要だ。しかし、この銃には弾倉がなく、代わりに・・・」
グリップの部分を引っ張る。
暦「カードが差し込めるようになっている」
さくら「そのうえ、カードの方から魔力を感じる・・・」
場の空気が重くなる。
急にドアが開き、純一の横を何かが通り過ぎる。テーブルの銃とカードデッキを引っつかみ、窓際まで走る。
窓にたどり着く前に美咲が進路をふさぐ。
純一「そこまでだ!」
???「やるしかないの・・・?」
純一「とりあえず、そのまま何もしなければ危害は加えない」
???「・・・うそ」
純一「へ?」
???「うそだ!」
ベルトにカードデッキを取り付け、カードを抜く。銃のグリップを引き、カードを入れて戻す。
“ソードベント”
合成音らしき音が響き、上から巨大な刀が落ちてくる。女の子はそれを片手でつかみ、構える。
眞子「とりあえず、その気があるなら、私が止めるわよ?」
純一「やりすぎるなよ」
眞子がグローブをはめ、女の子の懐にもぐりこむ。
???「っ!!」
咄嗟に刀を手放し、離れて銃を撃つ。
眞子「うわわ!」
瞬間的に二歩下がり、銃弾を回避する眞子。
女の子はカードを入れる。
“フライングベント”
女の子の背中にバックパックが現れ、ブーストで飛ぶ。空中でカードを入れる。
“スナイプベント”
肩に巨大な大砲が現れる。
眞子「ちょっ・・・まず!」
???「おちちゃえーーーーーーーー!!!」
引き金が引かれ、巨大なエネルギー弾が吐き出される。
美咲が間に割ってはいる。
美咲「盾よ、守れ!!グリット・シールド!!!」
光の盾がエネルギー弾をはじく。
美咲「もう・・・いきなり殴りかかったら誰でも勘違いします!」
眞子「うっ・・・ごめん」
美咲は女の子の方を向くと、
美咲「勝手に荷物を調べてごめんなさい。でも、私は危害を加えるつもりはありません」
女の子は黙って聞いている。
美咲「私は鷺澤美咲です。あなたのお名前は?」
???「・・・・・・・・・優(ゆう)、姫神優」
美咲「かわいい名前ですね」
姫神「ありがとう・・・」
姫神が降りてくる。
美咲「もし、良かったら、事情を説明してくれないかな?」
姫神「うん・・・」
一通り自己紹介を終えて、
姫神「まず、馬鹿げた話だけど聞いてほしいの」
部屋が静かになる。
姫神「私はこことは違う別の世界からきたの」
純一「それは大体検討を付けてある」
姫神「みんな意外と驚かないね」
音夢「まあ、結構この世界では驚かないとは思うけど・・・」
杉並「ところでだ、どうやってその魔力でこの世界まで来た?」
眞子「それそれ!あたしも知りたい!!」
姫神「知り合いの奴に『門』を作ってもらって、空間干渉して飛んできたの」
純一「『門』?これのことか?」
純一が軽く詠唱し、門と思しき物を出す。
姫神「純一さん、珍しいですね」
純一「召喚士ならいくらでもいるぞ?」
姫神「そうじゃなくて、創術を使える人ってこと」
さくら「あにゃ?お兄ちゃんの属性って、空属性じゃないの?」
姫神「違うと思う。確実に創属性だね」
萌「じゃあ、創属性って何ですか?」
姫神「文字通り、『物を作り出す』術よ。私は使えないけど。あとは命属性かな、これは命をつかさどる属性」
暦「じゃあ・・・13属性?」
姫神「そういうことです。多分、使える人がいなくて忘れられたんでしょうね・・・」
息をつく姫神。
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・
姫神「あっ・・・」
姫神は顔を真っ赤にしている。
美春「バナナ、食べます?」
姫神「あっ・・・はい・・・・・・」
美春「はい、どうぞ」
鞄の中のバナナを取り出し、渡す。
姫神(つねにバナナを持ち歩いているのでしょうか?)
美咲「それでは晩御飯にしましょうか?」
音夢「そうですね」
美咲の作ったカレーを食べ、一息つく。
ことり「ところで、優ちゃんはなんで来たの?」
姫神「尋ね人ですね」
とも「その人とはどんな関係?」
みく「私もそれ、知りたいです」
少し考え込み、
姫神「宿敵ですね」
とか答えた。
ことり「あはは・・・」
とも「えっと・・・」
みく「名前はなんていうんですか?」
姫神「森部翼哉、もしくは霧崎秋一って名乗ってると思います」
全員の顔が険しくなる。
姫神「どうしたんですか?」
純一「そいつはこの世界の人間か?」
姫神「いえ、違います。この世界は今まで未開拓でしたから」
純一「そうか・・・ならいっか」
顔が元に戻る。
姫神「それに彼もバカではありません。霧崎と名乗ってるのでしょう」
一息ついて、あくびをする姫神。
美咲「それじゃあ、今日の会議はここまでにしましょう。明日、またここで」
純一「姫神は?」
美咲「私の家に泊めます。いいですよね?」
姫神「お世話になります」
頭を下げる姫神。
純一「じゃあ、美咲。良い夢を・・・」
美咲「純一さんこそ」
姫神(ラブラブですな・・・)
純一の姿を見送る美咲。
美咲「さて、さっきまで寝ていた客間に布団を敷かなくちゃ」
姫神「なんか、こういうのっていいなあ・・・」
美咲の後を追って部屋をあとにした・・・
続く。
ドウモ、森部です。
眠いです。
泣きまくりです。
クラナドが良すぎて泣きまくりです。
多分、クラナドもクロスするかも知れません。