ベルムラント・・・それが俺たちの世界の名前。

いわゆる剣と魔法の世界。

女神のイメージがこの世界を形造ったとされている。

だったら何で魔物とか考えるんだ?

おかげで色々めんどいし・・・

まあ、なんだ・・・思うに、

創造と想像は限りなく近い性質を持つと俺は思う。From 相沢祐一。































魔法国家キー。

首都の魔法都市カノン、水瀬家の一室、祐一の部屋。

そんな一言を日記に書きとめ、俺はリビングに向かう。

祐一「おはようございます、秋子さん」

秋子「おはようございます、祐一さん」

この人が俺の叔母にあたる水瀬秋子さん。

世界最強の存在、水の魔法から時の魔法まで使いこなす護法魔術師(セイント・アーク)の称号を持つ。

親の都合でこの人の家に預けられている。

名雪「うにゅ・・・」

祐一「起きろ、名雪!」

テーブルにたれパンダ状態で寝ているのは秋子さんの娘の名雪。

いずれ護法魔術師の名を受け継ぐ存在。全属性魔法を使いこなすが特に地・水・火・風・時・空が秀でている。

名雪「・・・おはよう、祐一」

祐一「おはよう」

???「真琴ぱーんち!!」

とっさに体をひねり、わき腹目掛けてきたパンチをかわす。

勢いを殺しきれず、そのまま床とキスをする羽目なる俺と同じ居候の沢渡真琴。

因みにこの世界ではポピュラーな妖狐族である。火の魔法のスペシャリスト。

真琴「何でよけるのよぅ!」

祐一「戦士たるもの、気配で察知できないと困るからな」

魔物とかの気配を察知できないと色々困るし・・・

???「おはよう!祐一君!」

祐一「おはよう!あゆあゆ!」

あゆあゆ「うぐぅ・・・あゆあゆじゃないもん・・・」

祐一「すまんすまん、あゆ」

こいつが居候その3、月宮あゆ。

天使族の末裔で、光の魔法が得意。

秋子「ところで祐一さん?」

祐一「何ですか?秋子さん?」

秋子「今日の予定は?」

祐一「栞と町外れの森に薬草を取りに行く予定です」

栞というのは俺の彼女で、本名を美坂栞という。

若干16歳にして王宮研究室室長という肩書きを持つ薬学のスペシャリスト。

氷の魔法も多少こなし、薬師(ドクター)の称号を持つ。

秋子「祐一さんこそ、17で王宮近衛騎士団団長、剣聖(ソード・アーク)じゃないですか」

祐一「・・・また、声に出していましたか?」

秋子「ええ、はっきりと」

・・・この癖も改めないといけないな。

秋子「夕ごはんまでには帰ってきてください。それと、もし良かったら栞ちゃんも誘っておいてくださいね?」

祐一「はい、分かりました」

食べ終わった食器を下げる。





???「遅いです祐一さん!」

祐一「約束の時間まで30分はあるような・・・」

???「私は1時間前には来ていましたよ?」

彼女が美坂栞である。

栞「でも、祐一さんが来てくれるなんて嬉しいです」

祐一「折角の休日なんだけどな・・・」

栞「そんなこと言う人嫌いです」

祐一「まあ、そう言うな。忙しい中取れた休みだし、久しぶりのデートだしな?」

栞「そうですね、デートです」

祐一「じゃあ、森まで競争だ!」

栞「あっ!まってくださいよ!祐一さーん!」

城壁を抜け、カノンの外に出る。

思えばこれがきっかけだったのかも知れない・・・





祐一「で、なんで俺たちがウェアウルフの群れに囲まれているんだ?」

栞「えーっと・・・私たちが薬草を取っている最中に縄張りに入ってしまったのでしょう・・・
  それに、これはウェアウルフじゃなくてグランシェっていう魔狼に近い種族です」

祐一「へえ、詳しいな」

栞「これでも学者ですから」

祐一「弱点は?」

栞「表皮は色鮮やかな虹色で硬く、魔法の耐性もあり動きも俊敏。おまけにコールドビームまで使ってくるツワモノですね」

祐一「つまり・・・ヤバイ?」

栞「ええ、とんでもなくヤバイです」

祐一「絶体絶命?」

栞「いえす、です」





ベルムラント物語 〜1ページ目・あなたはいったいどこの人?〜





完全に殺気立っているグランシェの群れ。

祐一「くそっ!せめて『十六夜』か『ネメシス』を持ってきていたら・・・」

祐一が腰に下げている剣はミスリル銀製。硬さは申し分ないがグランシェを斬るには心もとない。

栞「私も『大地のベル』を持ってきていたら・・・ですね」

魔力音波の干渉でダメージを与える『ベル』。魔力が高ければ高いほどダメージを与えられるが、

材質である程度の限界があるため、鉄製の『ベル』では目くらましにもならないだろう。

グランシェの群れがいっせいに牙を向こうとした瞬間、

上から何かが落ちてきた。

その落ちてきた何かは着地の瞬間、手を地面につけた。その瞬間にたちまち地面が砂と化し、何かを受け止める。

???「くはぁ!何度やっても慣れるものじゃないな・・・っと!」

砂だまりから男が這い出てくる。

混乱する頭を必死に落ち着かせ、声をかける。

祐一「あの・・・だいじょぶか?」

栞もそれに続く。

栞「いったい何があったんですか?」

男はいたって冷静に、

???「ああ、すまん平気だ」

どこをどうすれば平気なのか分からないが大丈夫らしい。男は砂を払っていた。

そのとき、我に返ったグランシェの1頭が男に襲い掛かる。

祐一「危ない!後ろ!」

とっさに叫んだが間に合わない。

男は振り向きざまにどこからか取り出した3メートル近いエメラルドグリーンの大剣でグランシェの影を斬る。

とたんにグランシェの巨体が倒れる。

信じられない出来事だった。

???「さて、まだやりますか?」

男は大剣を放り投げる。すると大剣は虚空に消えた。

3体のグランシェが襲い掛かる。

背後から襲い掛かった1頭目は影に飲み込まれるように消え、

横から襲い掛かった2頭目は氷漬けになり、

正面から突っ込んできた3頭目は途中で動きを止めたかと思うと暴れだし、体が破裂した。

それを見たグランシェの群れは逃げ出した。




祐一「すげぇ・・・」

栞「えぅ・・・」

二人は固まっていた。

???「おーい」

祐一&栞「はい!何でしょう!」

???「そんなに硬くならないでいいよ」

栞「あの・・・ありがとうございました!」

???「礼には及ばん。火の粉を払った程度に過ぎん」

祐一「自己紹介がまだでしたね、俺は相沢祐一。こっちは・・・」

栞が1歩前に出る。

栞「美坂栞です」

森部「俺は森部翼哉だ」

2人の表情が変わる。

祐一「まさか・・・!森部の一族か!」

栞「まだ生き残っていたなんて・・・!」

2人が武器を構える。

森部「は?」

森部が首をひねる。

森部「すまんが、俺は『この世界』には初めて来たのだが・・・?」

沈黙。

祐一&栞「へ・・・?『この世界』?」

森部「あっ・・・しまった・・・・・・」

再び沈黙。





栞「なるほど、つまり」

森部の説明から察するに、

森部はここから違う世界からやってきた。

この世界での魔法は森部の世界にとって、『能力』と区別されるもの。

属性の区分はあり、森部の大まかな属性は『闇』だが、なぜか全属性の魔法が使える。

そして、この森部は『森部の一族』ではないということ。

栞「こういうことですね」

栞がどこからか取り出したボードで説明する。

森部「そういうことだな」

森部がうなずく。

栞「でも、空間魔法はとても難しいって聞いたことありますよ?」

祐一「それに全属性って・・・護法魔術師かお前は」

森部「まあ、気にすんな」

あっけらかんとばかりに笑い飛ばす。

森部「そういえば、聞いときたい事があるんだが?」

栞「私たちに答えれることならですが・・・」

急に森部の顔が真剣になる。

森部「この世界の魔法の属性は11属性で間違いないか?」

栞「ええ、間違いないです」

森部「おかしいな・・・・・・?」

栞「何がですか?」

栞が首をかしげる。

森部「本来ならもう2つあるはずなんだが・・・」

祐一&栞「え?」

栞の出したボードに書き込む森部。

森部「この世界に伝わってるのは、光・闇・火・水・雷・地・風・氷・木・時・空・無だろ?」

栞「ですね」

森部「実は根幹を成す属性は、命属性と創造属性なんだ」

三度沈黙。

祐一&栞「えぇーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

森部「信じられないか?」

祐一「ああ、とても信じられん」

栞「私もです」

森部「まあ、百聞は一見にしかず。見ていなさい」

森部が手をかざし、軽く呪文を唱える。

すると、森部の手にはエメラルドグリーンの大剣があった。

森部「とまあ、これが『創』術なのだが・・・因みにこれは『創』の秘術、創造の剣『暁の大太刀』だ」

軽く振り回す。

栞「空術ではないですし、嘘を言っているわけでもありませんね・・・」

祐一「ああ・・・」

持っている剣を放り投げると剣は虚空に消えた。

森部「信じてもらえたか?」

祐一「まだ正直信じられないがな・・・」

森部「ところで、このあたりに住み込みで働けるところはないか?この世界に来たばっかりで手持ちが心もとないんだ」

そういえばと二人は手をたたき、お互いに顔を見合わせてうなずく。

祐一「それじゃあ、俺の居候先に来ませんか?」

森部「いや、遠慮しておくよ・・・」

少し戸惑う森部。

祐一「秋子さんなら一秒で了承してくれるさ」

森部「うーん・・・じゃあ、お言葉に甘えようかな・・・」

祐一「それなら、偽名も考えないとな?」

栞&森部「へ?」

完全に虚を付かれる森部と栞。

祐一「だから、偽名」

ちょっとまて、とばかりに考え込む森部。

(森部と名乗っただけであのあわてっぷり・・・偽名・・・・・・)

霧崎「それだったら霧崎秋一(しゅういち)って名乗るよ」

祐一「物分りがいいな。俺のことは祐一って呼んでくれ」

栞「私も栞って呼んでくださいね?」

霧崎「分かった。これからよろしく頼む、祐一と栞?」

祐一「おうっ!」

栞「はいっ!」

やがて見えてきたのは立派な城壁だった。






祐一「ただいまー!」

栞&霧崎「お邪魔します」

家に着く。

秋子「お帰りなさい、祐一さん。いらっしゃい、栞ちゃんと・・・」

秋子さんが森部(以降霧崎)を見る。

祐一「この人は霧崎秋一って人です。森で行き倒れていたところを保護しました」

霧崎「はじめまして、霧崎といいます」

秋子さんの目が変わる。

秋子「水瀬秋子です。ところで霧崎さん・・・」

霧崎「はい、何でしょうか?」

秋子さんにたずねられるまま返事をする霧崎。

秋子「霧崎さん、あなた全属性の魔法が使えるのですね」

霧崎「っ!!なぜそれを・・・?」

秋子「魔力の流れを見ましたから・・・」

栞「すごいですね、秋子さん・・・あっさり見破ってしまいましたね・・・」

祐一「ああ・・・驚いた」

見破った秋子さんに驚く二人。

そんな二人をよそに霧崎は、ため息をついて秋子さんの方を向く。

霧崎「じゃあ、祐一の属性と根幹の属性についても?」

秋子「ええ、古文書と魔力の流れで・・・」

祐一「二人とも何の会話をしてるんですか?」

はっと我に返る二人。

秋子「いえ、すみません・・・とりあえず上がってください」

玄関からリビングに移動する。





リビングには真琴、あゆ、名雪、香里に舞、佐祐理さんがオールスターでそろっていた。

祐一「って、なんでカノン王国王宮近衛騎士団の部隊長と副部隊長がそろってるんですか!?」

秋子「私がお昼はみんなでとお誘いしました」

秋子さんが祐一の後ろから説明する。

(というか秋子さん、さっき確かに俺の前を歩いてたはずだが・・・?)

秋子「企業秘密です」

祐一「また言ってました?」

秋子「ええ」

霧崎が前に出る。

霧崎「霧崎秋一です。よろしくお願いします」

祐一「とりあえず、まずそこの眠そうなのが水瀬名雪。俺のいとこだ」

名雪「私のことはなゆちゃんって呼んでね?霧崎さん?」

霧崎「遠慮しときます」

名雪「かわいいのに・・・」

祐一「その右隣が殺村凶子」

真琴「誰が殺村凶子よぅ!私には真琴ってかわいい名前があるわよ!」

霧崎「・・・」

祐一「左隣が月宮あゆあゆ」

あゆ「うぐぅ!ボクあゆあゆじゃないもん・・・」

祐一「すまんすまん、本当は月宮あゆだ」

祐一「正面が川澄舞だ」

舞「よろしく・・・」

祐一「その右隣が倉田佐祐理さん」

佐祐理「よろしくお願いします。霧崎さん」

祐一「左隣が美坂香里、栞の姉で格闘王」

香里「紹介のされ方が気に食わないけどよろしくね、霧崎君?」

霧崎「皆さん、よろしくお願いします」






昼食と一通りの自己紹介を終え、まったりしているところで、

秋子「ところで霧崎さんは仕事とか何かしていらっしゃるのですか?」

霧崎は頭をかきながら、

霧崎「もっか、捜索中です」

と、答えた。

秋子「それだけの魔力センスと知識が有るのなら私の研究所の助手をやりませんか?」

霧崎「いいんですか?」

秋子「ええ、私の研究についてこれそうな人を探してましたから」

考える霧崎。

(条件としてここに住ませてもらうかな・・・?)

秋子「了承」

霧崎「うわぁ!・・・驚かさないで下さい・・・・・・・じゃあ、とりあえずここに住ませてもらった上で手伝わせていただきます」

後に、大陸最強コンビとして名を馳せる二人の出会いだった







続く。






何とか1ページ目にこぎつけました・・・森部です。

ナンカ何にも考えないで書いたらこんなんになってしまいました・・・

先にSnow・A・Snow書けっての・・・

次回はD.C.ですよーーー。

風邪治らないよ・・・