『Fate×Tales of the abyss』ものですぞ〜











英雄か偽者か
プロローグ












正義の味方と英雄はどう違うのだろうか?

切継が死んだ後に何度か考えたことがあった・・・と言っても今でもたまに考えるが。

仮に正義の味方と英雄の違いについてと聞かれたら、人はどう答えるのだろうか?

同じだと答える人がいるだろう、全く違うと答える人もいるだろう。

何故? と聞かれてそれを明確に答えられる人は恐らくいない。

何故ならその疑問を抱くものも、それを答えるものも人間だからだ。

だが、最近になって気づいたことがある・・・正義の味方は悪がいなければ存在理由がない。

正義と名乗るならば、それに相反する悪がいなければいけない。

矛盾を嫌うこの世界は表裏一体で出来ていなければならないのだ。

では悪とは? マキリ臓硯のような人間を指すのだろうか?

恐らくほとんどの人はYESと答えるだろう・・・しかし、元は臓硯も正義を目指した人間だったのだ。

正義を目指すために永遠を望み、その想いが何時しか歪んだ形へと変えていってしまった。

人間の心は鉄の如く強く硬くもあり、ガラスの如くか弱く脆いものでもある。

少なくともそんなことを思い知らされた事が突然起こったのだった。



「ここは・・・?」



目覚めてみると、そこは暗い土蔵の天井なんかではなく、やけに明るく見なれない天井だった。

周りを見渡してみると、間違いなく自分の家ではないことに気づく。

おかしい、普通に考えておかしい・・・昨日は土蔵で寝たはずだ。

それなのに何故ここで寝ている? ただ、この空間にいることに違和感と言うものはなく

自分がここにいて当然というように思えてしまう。そして自分の身に着けている服を見てみると

これもまた見なれない・・・というかこんな腹だし系のは持ってないはず。

何かがおかしい、そう思って鏡を見てみると・・・誰ですかこの人?

右手を上げてみる、鏡に移った人も右手をあげ、左手を上げてみると、やっぱり左手を上げた。

ひょっとしてというか、ひょっとしなくても俺ですか、この赤ロン毛は?

身長とか体格とかは、俺と大して変わらないけど、髪は真っ赤でしかも腰ほどある長さ。

頭がほんの少し後ろに持っていかれそうな感じだった。



「どうしたんだ、ルーク。さっきから百面相なんかして」



どこからか声が聞こえた。振り向いてみると窓には金髪の男が立っていた。

ルークというのはこの身体の主の名前なのだろうが、百面相なんてしただろうか?

しかし・・・なんだ・・・なんであんなパッツンパッツンのズボン穿いているんだろう?

しかも首輪・・・ひょっとしてアレな人なのかな?



「いや、なんでもないよガイ」



気づけば、そう言い返していたが、すんなりと彼の名前が出たことに驚いた。

少なくとも衛宮士郎は、ガイ・セシルという人間を知らないし、出会ったこともなかった。

だが、この体・・・キムラスカ国のファブレ公爵家の一人息子である

ルーク・フォン・ファブレの記憶に刻み込まれている。

だが、そもそも何故俺の魂がこの身体に入っているのか、ルークの魂が何処に行ったのかが気になった。



「そうか? まぁ、お前がそう言うならいいが・・・そう言えば先ほどヴァン謡将がお見えになられたそうだ」



師匠せんせいが? 本当か?」



またも意思に関係なくそう返したが、どうやらヴァンという男はルークの剣の師匠らしい。

とりあえず、ルークが知っているそれ以外の知識としては、本名はヴァン・グランツであること。

ローレライ教団の神託の盾騎士団の主席総長であること、それぐらいか?

というのも、どうやらルークという人間は、7年前にマルクトと呼ばれる敵国に拉致されたためのショックで

それ以前の記憶が全くないそうで、再び拉致されることを恐れた両親がルークを屋敷に軟禁したそうだ。

そのために、面倒くさがりで世間知らずなところもあり、しかも我侭なのだそうだ。

何しろ買い物のかの字も知らないのだ・・・これ、結構駄目人間みたいだ。



「ルークさま、よろしいでしょうか」



「っと、ここにいるのは秘密なんだ。見つかる前に失礼させてもらうよ、じゃあなっ」



ドアから女性の声が聞こえると、ガイは慌てて窓から外へと飛び出していった。

一応、ガイは使用人なのだ。いくらルークとは仲がいいとはいえ、なんの理由もなしに

公爵の息子の部屋に入り込むことはよくないらしい。



「ルーク様?」



「あぁ、ごめん。入ってくれ」



とりあえず、待たせるわけにもいかないので、入れさせることにした。

入ってきた声の主は、メイドさんだった・・・さすが、公爵家といったところか。

しかし、何故かメイドさんは少し戸惑った感じだった。



「し、失礼します。旦那様がお呼びです、応接室へお願い致します」



「父上が? わかったよ、今すぐ行く」



俺がそう言うと、メイドさんは失礼しましたと言って出て行ったが

部屋から出た瞬間に、「ルーク様にごめんって言われちゃった!」と言ってキャーキャー言っていた。

・・・そういうのは本人に聞こえないようにするもんじゃないのか?

というか、ルークと言う人間はごめんの一言も言わない男なのか・・・

別に本人じゃないのに妙な気分になってしまったが、とりあえずお呼びのようなので

部屋から出ることにしたが、応接室ってどこさ?











続く














あとがき

『二人の王』を期待してた方、ごめんなさい。

ぶっちゃけ続かなかったんです・・・とまぁ、言い訳は後にして、何でこんなSSを書いたのかというと

結構接点(らしきもの)があるんですよ、FateとAbyssって。まぁ、それが何なのかをいうと

ネタバレになっちゃうんで、Abyssやってない人は各自で勝手にやってください(何

とりあえず、一話ごとの長さはものすごく(たぶん4kb)ぐらいなんですが

これぐらいじゃないと、長続きしそうにないんですよ、今の状況では。