前書き


蒼竜「…猫は可愛いよね…」

美汐「…そうですね…」

蒼竜「…ネコ耳良いよね…」

美汐「…何が言いたいんですか?…」

蒼竜「…美汐にネコ耳似合いそうだよね…」

美汐「………」

蒼竜「ってわけで 天野家の秘密 中編がはじまりまーす」

美汐「…はぁ〜…貴方の相手は疲れます…」

蒼竜「ひっ…酷い!!!!」

美汐「…はぁ〜…」






天野家の秘密
中編






 現在、美汐が水瀬家に来てはじめての朝を迎えようとしていた…

「………!!?」

 美汐は起きて目の前にある顔に驚いていた

「なっなんで私が相沢さんと一緒に寝てるんですか!!!?」

「…あら?………もう少しで完成したのに…残念です…」

 驚いている美汐に謎の女の声が聞こえた

 その声に驚いて美汐が声のする方を見るとそこには………

「ななななななななんで美樹姉さんがいるんですか!!!!!!!?」

 天野 美汐の姉である天野 美樹がスケッチブックに何かを書いていた

「………細かい事は気にしたらいけません……」

 美樹がスケッチブックを直しながら答える

「そうそう、気にしたらだめだよ…美汐ちゃん…」

「そうだぞ」

 美樹に続くように何時の間にか起きた祐一とピロが話し掛ける

「……これは…どう言う事ですか?」

 美汐の疑問にピロが答える

「にゃはは〜、実は美汐ちゃんの今の状態を祐一さんが見た事がないと聞いたので美樹ちゃんと私が祐一さんのために協力したんです」

「……今の状態?…まっまさか!!」

 美汐は急いで自分の頭を触る

 するとそこにはネコ耳が現れていた

 パジャマのズボンのお尻の部分も膨らんでいる

「……昨日のご飯に朱理と私が作った特製の薬を混入しておきました…」

 朱理とはピロの本当の名前だ

 朱理は昔、天野家に拾われた猫である

 何故だか人間の言葉を話す事が出来た為、他の猫達に良く苛められていた

 そしてある日、美樹に拾われて天野家の一員になったのだ

 色々な分野の知識に詳しいので良く美樹と怪しげな研究をしている

ちなみに朱理と名付けたのは美樹である

「………効果はそれだけですか?」

 美汐が不安そうに聞く

「………それだけです………」

 美汐は安心したようだがすぐにある事に気付いた

「…相沢さんは何故私や家の事を知ってるんですか?
 ……いくら姉さんや朱理でも簡単には話さないはずです」

 この美汐の疑問は天野家の人ならごくあたりまえの疑問である

 祐一が答えようとするが先に朱理が答えた

「それは………」

 朱理が深刻そうな顔をしながら少し下を向いた

 その様子から美汐は息を飲む

「………祐一さんが私が普通の猫じゃないと気付いて、謎邪夢を使って脅して来たから仕方なく…」

 それを聞いて美汐の顔が引きつった笑顔を浮かべた





 そして時は巡り73世紀…
 ある場所で怪しげな研究が行われていた…
 その研究の果てに作り出された少女がこの話の主人公…
 さぁ、はじまる…
 少女の愛と根性の物語が……!!

 …ザシュッ…バタッ…

「な…何故…ガハッ…」

「……何を書いてるんですか?…(ニッコリ」

「…美汐…その笑みが恐いぞ…」

「…質問にさっさと答えて下さい…(ニッコリ」

「…もちろんSSだ」

「…違います…何でいきなり話が変わってるのか聞いているんです…(ニッコリ」

「そんな事か…
 そんなの…繋げる部分が困ったから書いたに決まってるだろう(エッヘン」

「…(フルフル)…なんで威張ってるんですか!!」

 ザシュッ

「痛いな〜
 右の脇の下をいきなり刀で切るなよ…
 右腕が一生動かなくなるじゃんか…
 それに下手すれば命も危ういし…
 …全く…
 この代償は体で払ってもらいましょうか…( ̄ー ̄ニヤソ」

「嫌です!!
 この体を好きにして良いのは祐一さんだけです!!」

「……そんな事言って恥ずかしくないんですか?…」

「……はぅ〜…(///▽///)」

「…はぁ〜…
 まぁ、それ程深くなかったから良かったけど…
 もう少し深く切ってたら俺の右腕が全く動かせなくなったかも知れないんだよ?
 今回は許すけどこれから気を付けてよ…」

「……すいません…」

「…はぁ〜…
 …じゃあ話に戻りますからさっさと戻って下さい………」

「…はっ…うまく話をそらしましたね…
 まぁ今回は帰ります…」

「ってな訳で『天野家の秘密』に戻ります
 水瀬家の美樹さ〜ん(笑」





 …なんですか?…

 …私に進行をやれと言うのですか?…

 …却下です…

 …朱理が言うなら喜んでやりますけど…(///▽///)

 ………

 現在、祐一と美汐と美樹と朱理がリビングでご飯を食べている

 ご飯を作ったのは美樹で美樹と朱理は一人分の特別メニューを一緒に食べている

 祐一と美汐はご飯と味噌汁と目玉焼きを…

 美樹と朱理は冷ましたご飯と冷ました目玉焼きと刺し身を食べている…?

「…天野…」

「…なんですか?…」

「…この二人は何時もこうなのか?…」

「…暫く離れていたせいか…何時もより激しいです…」

「…何時もより…って事は何時もこんな感じの事を何時もしてるのか?…」

「…何時もは私以外の人前でやる事はないんですけどね…」

「…天野も大変だな…」

「…ええ…久しぶりに見たので何時もより疲れます…」

「…頑張れ…」

「…相沢さんは強くあって下さいね…」

「…それは無理かも…」

「…頑張って下さい…」

 美汐と祐一は目の前で繰り広げられる光景に気力を根こそぎ奪われようとしていた

「…朱理…はい、あ〜ん…」

 美樹は左手のお箸でご飯を掴んで、その下に右手を添えて膝の上に座る朱理の口元にお箸を持っていく

 朱理はご飯が口元に持って来られると口を大きくあける

 すると美樹が朱理の喉にお箸が当らないように気を付けながら朱理の口の中にご飯を運ぶ

「…あ〜ん…(モグモグ・・・ゴクッ)…美味しいよ…」

 朱理が口を閉じて、美樹がお箸を朱理の口から抜きお箸を自分の口に含んみ幸せそうな笑みを浮かべた

「…朱理…」

 美樹が何かをねだるような目で朱理を見つめる

「わかってるよ…美樹…」

 朱理はにっこりと優しい笑顔を美樹に見せてからテーブルに前足を掛けて体を伸ばした

 さすがにお箸は使えないので刺し身を前足で器用に一枚近づけて先っぽを口に咥える

 そして、美樹の方に顔を向ける

 すると美樹が顔を近づけて朱理の口に咥えられている刺し身を咥えてそのまま食べる

 ………訂正です………食べるだけじゃなく、そのまま舌を朱理の口の中に入れて大人のキスをしている

 側から見ると人と猫なのでじゃれあってる様に見ない事もないが………二人の周りのピンク色をした空気がそれを許さない

 暫くして美樹は朱理の口から舌を抜き、満足そうな笑顔で顔を離した

「…美味しかったです…」

 そんな感じでご飯を1時間以上かけて食べ終わり、美樹と朱理は散歩に出かけた

 そして、祐一と美汐は………

「………」

「………」

 仲良くソファーで眠っていた…

 ソファーに二人並んで座り、美汐が祐一の肩に頭を預けた状態で…

 美樹と朱理の事で疲れたのだろう…

 二人はそのまま空が暗くなりるまで眠り続けた…

 …そして…

 二人の手はどれだけお互いを信頼しているのかをあらわすかのごとく…

 しっかりと…

 だが相手が痛くないように…

 強く強く握られていた…



 …ここは…?

 美汐は小高い丘の森の中に一人で立っていた…

 暫くたって美汐は此処が何処なのかに気がついた…

 ………

 美汐は気付いた途端に大粒の涙を流した…

 何故ならこの風景は美汐がかつて友達が出来なくて何時も一人で泣いていた場所であり…

 あの、初めての友達である妖孤と出会った場所でもあり…

 その妖孤と何時も遊んでいた場所でもあり…

 そして…

 その妖孤と最後の時をすごした場所でもあるのだ…

 ここにはその妖孤が死んでから一度も来ていなかった…

 その妖孤がいなくなった事を認めるのが恐かったから…

 また、一人になった事を認めたくなかったから…

 その時、風が美汐の頬を撫でた…

 その風に誘われる様に後ろを振り向くとそこには美汐にとってのはじめての友達が立っていた…

「…風夜…?」

『美汐、久しぶりだね』

 美汐は唖然としている

 そして風夜と呼ばれた少年は久しぶりの再会を喜ぶように満面の笑みを浮かべている

「どうして風夜が…貴方はあの時…」

 美汐はその時の事を思い出したのか少し目をふせた

『確かに僕はあの時に美汐の前で消えた…
 だけどね…
 僕達妖孤は人の目の前から消えても完全に死んだわけじゃないんだ…』

「…どう言う事ですか?」

『僕達はこの丘を守る為の生き物でもあるんだ…
 だから簡単には死なない…
 体が死んでも精神だけで生きているんだ…』

「…そうだったんですか………?
 …じゃあなんで今、私達が話せているんですか?」

『僕は妖孤だよ
 それぐらい簡単に出来る』

「………じゃあ…じゃあなんであの時すぐに来てくれなかったんですか!!!!?」

 また美汐の瞳からは涙が止めどなく流れはじめる

『…僕だってそうしたかったよ…
 だけど死んですぐはそれだけの事を行う力がなかったんだ…』

「それでも…もっと早く来てくれたら良かったじゃないですか…」

『僕だってそうしたかったさ…
 だけど美汐の心が完全に他人を拒絶していたからいくら話し掛けても美汐が気付かなかったんだ』

「………」

『…まぁ…
 僕にはあの時の美汐を今の美汐ぐらいまで立ち直らせる事は出来なかっただろうけどね』

「…そんな事は…」

『ないと言えるかい?
 …言えないだろ?
 …だって僕には美汐を一時的に立ち直らせる事は出来たかも知れないけど…
 …その後、側にいる事も出来ない…
 …それに…
 …相沢 祐一だったかな?
 …彼みたいに美汐の心を癒してやる事も出来ない…
 …ほんと…
 …僕は美汐に苦しみや悲しみばかりをあたえている…
 …もし…
 …美汐が僕に出会わなかったら…
 …美汐はもっと幸せだったかもね…』

「そんな事ありません!!
 確かに風夜が私の前から消えてから相沢さんに出会うまでずっと孤独を感じていました!!
 だけど!!
 風夜と出会わなかったら良かったなんて思った事は一度もありません!!!!
 例え、その後が辛かったとしても…
 風夜は大切な…
 大切な私の初めての友達です!!
 忘れる事なんて出来ません!!!
 風夜と一緒にすごした時間がなかった事になって欲しいなんて考えたくもありません!!」

『…ごめん…
 …あっ…美汐』

「…なんですか?」

『そろそろ時間切れらしい』

「…もう…話す事は出来ないんですか?」

『…ああ…
 …だけど僕はずっと美汐を見守ってるから…』

「…ありがとうございます」

『最後に一つ言って良いかな?』

「?…何ですか?」

『恥ずかしがらずにもっと積極的になった方が良いと思うよ』

「なっ!?
 何を言ってるんですか!!」

 美汐の顔はこれでもかというぐらい赤くなっている

『ははは
 絶対に幸せになりなよ』

 風夜の話が終わるのとほぼ同時に美汐の意識が何処かへと吸い寄せられるように離れて行った…



「………」

 美汐が目を空けると目の前に心配そうな祐一の顔が飛び込んで来た

「どうしたんだ?」

「えっ?」

 祐一が美汐の瞳から零れ続けるものを指で拭う

「なんで泣いてるんだ?」

 その時美汐はやっと気付いた…

 自分が泣いているという事に…

「…なんでもないです…
 …懐かしい人の夢を見ただけですから」

 そう言って美汐は涙を拭きながらにっこりと笑顔で笑う

「………」

 その美汐の笑顔は今まで祐一が見た事のある笑顔と何かが違っていた

 祐一はその笑顔に少し見とれていたが美樹の声で意識が戻った

「…ご飯食べますか?…」

 その声に反応して時計を見るともう既に9時になっていた

「…もうそんな時間だったんですか…」

 美汐がぽつりと呟く

「………」

 祐一は意識は戻ったがまだ反応出来ないようだ

「じゃあご飯を食べましょうか」

「………」

 祐一は反応しない

「祐一さん?」

 美汐が祐一の顔を覗きこみながら聞いた

「…あぁ…」

 祐一がボーとしたまま答える



 その後二人はご飯を食べてから順番に風呂に入って、美樹と一緒に酒を飲みはじめた

 どうやら美樹と朱理は先にご飯を食べていたらしい

 祐一と美汐に取っては嬉しい限りである

「祐一しゃ〜〜〜ん♪」

 どうやら美汐は酒を飲むと甘えん坊になるようだ…

 昨日の夜にこの状態になったのは秋子さんが置いておいてくれた料理に使われていた酒が原因のようだ…

 だが酔っ払っていても信頼してない人には甘えないらしい…

「…祐一さん…美汐を末永く宜しく御願いします…」

 どうやら美樹も少し酔ってるらしくネコ耳と尻尾が出たままになっている

「…いきなり頼まれても…」

 断るが祐一を見る限り嫌がってる訳ではないみたいだ

 その時、祐一に抱きついている美汐が突然話しだした

「祐一しゃんは美汐の事どう思ってるんですかぁ〜?」

「えっ?」

「美汐はずっと待ってるのに祐一しゃんは全く気付いてくれな・・・・・」

「…?…美汐?」

「…Zzzzz…Zzzzz…」

 どうやら美汐は寝たようだ

「…はぁ〜…」

 祐一は美汐をソファーに寝かして毛布をかけて、また美樹と飲みはじめた



 その時、風夜は………

『…なんであんな"嘘"を付いた?』

 寝転んでいる風夜の横に座っている着物を来た女性が聞く

『嘘?』

『美汐に言った事だ
 確かに我々妖弧は肉体が死んでも精神だけで生きる事が出来る…
 だけど精神だけの状態でそんなに長く生きていける訳でもない…
 今、存在を保っているのもおかしな事だ?
 こんなに長い間存在し続けれる力を持っても…
 もう限界のなんだろ…』

 風夜は目を瞑って深く息をすると目を開けて立ち上がり、遠くを見つめながら答えた

『…確かに…
 …俺はもう限界だ…
 …だが…
 それをわざわざ美汐に教えて悲しませる事はないだろ?』

 風夜が隣の女性を見る

『…確かに…
 …だが、分かってるのか?
 普通なら2年ぐらいで転生の輪に入って新たな人生を歩む…
 だが、もう9年以上も精神だけで存在した…
 これがどう言う事か?』

 風夜は辛そうにして答えた

『…わかってるさ…
 俺は恐らく転生をする事は出来ないだろうな…
 俺に待つのは完全なる消滅…』

 風夜が立ち上がり、再び目を瞑った

『…相変わらずだな…』

 そう言って女性は風夜の前に回って正面から風夜を優しく抱きしめた

 女性は背が高く、風夜の頭が丁度女性の胸に埋まっている

『………』

 風夜も無言で女性を抱きしめ返す

『…最後ぐらい素直になれ…馬鹿息子』

『…母さん…』

 風夜が瞳に涙を貯めて母親を見る

『………』

 風夜の母親の瞳にも涙が溜まっている

『…もし…
 …もし転生出来たなら…
 …もう一度…
 …母さんの子供として生まれたい…』

 風夜の瞳から涙が零れはじめる

『…馬鹿だろ…
 その頃には私も死んでる』

 風夜の母親は笑顔を作る

 だが、その笑顔は見るものを悲しくさせるような悲しそうな笑顔だった…

『…じゃあ…行ってきます』

 風夜がそう言って母親から離れる

『…行ってこい…』

 風夜の母親がそう言うのとほぼ同時に風夜がそこに何もなかったように消えた…

『………
 …絶対に私の子供として帰って来い…』

 そう呟くように言って風夜の母親は涙を流しながらその場所を後にした



 風夜が消えたのとほぼ同時に水瀬家で美汐は寝ながら一筋の涙を流した…












後書き

蒼竜「…長かった…」

美樹「…貴方は更新するのが遅すぎです…」

蒼竜「あれ?…美汐は?」

美樹「…寝てます…」

蒼竜「…そうですか…
   …今は静かに寝かしてあげましょう…」

美樹「…そうですね…」



蒼竜「言い忘れてた
   風夜は(ふうや)と読みます
   美樹は(みき)と読みます
   朱理は(しゅり)と読みます」