ある日の日曜。
正午過ぎ、する事もないので俺は部屋から出て階段を下りリビングへ入った。
すると、そこにはあゆと真琴と名雪。
そして、一冊のハードカバーの本を持った秋子さんがいた。
「何見てるんだ?」
そう訊ねると名雪は、その本を懐かしげに眺めながら答えた。
「アルバムだよ」
 
 
 
 
 
相互リンク記念SS
祐一とアルバム
Written by 神音月夜
 
 
 
 
 
「アルバム?」
「うん、アルバム」
ニコニコと答える名雪。
「部屋を掃除してたら出てきたんですよ」
秋子さんも名雪と同じく懐かしそうにアルバムを眺めていた。
あゆと真琴は、その二人の脇でアルバムを物珍しげに見ている。
「名雪ちっちゃーい!」
「ホントだ。名雪さんは、この頃三つ編みだったんだね」
「うん」
俺も、つられるように脇からアルバムを覗いた。
そこには七年前に会ったときよりも幼い名雪が写っている。
「秋子さん、これっていつ頃の写真ですか?」
「そうねぇ……確か祐一さんが来るより前だから……九年前かしら?」
俺は再びアルバムに眼を向ける。
この写真は名雪が8歳頃に撮ったのか。
自分の記憶に残る名雪より、更に幼い名雪を見る。
名雪は小さくても相変わらずな雰囲気を纏っていた。
……やっぱり名雪は眠そうだな。
俺は名雪が成長してないことを覚る。
「ん……これは」
ふと、一枚の写真を見る。
「あ……猫さん」
名雪も俺につられて写真を見る。
そこに写っていたのは名雪が涙と鼻水を垂らしながら嬉しそうに猫を抱えている姿だった。
「うわぁ……」
名雪が酷い惨状になりながら猫を抱える姿を見て真琴が思わず唸る。
「あらあら、これは……名雪が猫を家に連れ帰ってきた時の写真だわ」
「……あ、そういえば猫さん抱えて家に帰ってきて飼ってってお母さんに頼んだときのだ」
「名雪はアレルギーだから駄目だって言って、名雪が写真だけでもって言って撮ったのよね」
「懐かしいおー」
二人は微笑みながら言った。
秋子さんがアルバムのページをめくる。
名雪と並ぶ少年の写真が一枚。
「あれ……これって……」
俺は記憶を探りながら写真を見て呟いた。
「あ、これ……祐一と私だ」
そう、そこに写っているのは七年前の俺と名雪の写真だった。
「え、これ祐一?」
ニコニコと嬉しそうに微笑んでる名雪と少しふてくされ気味にしている俺の写真を指さしながら真琴は訊いてくる。
「そうよ、真琴……これは祐一さんが家に来たときの写真ね」
「祐一がこんなに小さい……」
そりゃあ、子供だからな。
「祐一が来たときかぁ……」
名雪は目を閉じて呟く。
俺が7年前にここに来たときのことでも思い出してるのだろうか。
「…………く〜」
「寝るのかよ!」
俺は名雪の頭に手刀を入れる。
ゴスッという音と共に名雪が頭を抱え込んだ。
「だお〜……痛いお〜……」
そんな名雪には眼をくれず秋子さんはアルバムのページを再びめくった。
もう名雪とのこんなやりとりは日常茶飯事だからなのだろう。
まぁ、それはともかく。
いつ撮ったのか憶えていない……いや、朧気だが撮ったような気もする写真。
「残ってたんだな……ここに来たときの写真」
薄い記憶を辿りながら、俺は此処に来たときのことを思い出す。
……やっぱり、よく憶えてないな。
「あ、これ……」
名雪が何かを見つけたらしく、写真を指さす。
そこに写っているのは俺と名雪と……小さな狐だった。
「これは……」
「影をして多狐を連れてきて、治療したときの写真だね。この狐、今どうしてるかなぁ……」
そう呟く名雪。
俺の視線は思い切り真琴に向けていた。
「あうー……祐一」
真琴は何だか困ったような声を上げる。
「ん?どうした、真琴」
「こんな小女狐、いつ連れこんだのよぅ!」
そして、突然怒りだしたように叫ぶ真琴。
……………………。
こいつ、本気で言ってるのか?
これはお前だ。
俺は思いっきり真琴の頭を殴った。
「あぅぅ」
「うぐぅ……あれ、痛そう」
横で見ていたあゆは頭を押さえながら呟いた。
そして、秋子さんは相変わらずニコニコと微笑んでいる。
「あれ、これは秋子さんと名雪さん?」
屈む秋子さんと三つ編みの名雪。
ん、そういえば秋子さんの写真は初めてみたな。
………………。
…………ん〜?
…………あれ?
…………秋子さん、全然変わってねぇ。
今も写真も同じだ。
写真の方が、ほんの少し若く見える気がするが。
俺はそう思いながら秋子さんの顔を見た。
「?どうかしましたか?祐一さん」
そういえば、此処に来たときも驚いたな。
………………。
一体どうやって……。
「企業秘密です」
「うわぁ!?」
唐突に秋子さんの声で現実に戻される。
微笑む秋子さん。
……って言うか何で考えてることが解るんですか。
そう思いつつ、俺はアルバムのページをめくる。
「んん?」
「ああっ!!」
めくられたページに飾られている一枚の写真。
それは、風呂場で裸になって写っている俺と名雪だった。
「わーわーわー、見ちゃ駄目ー!!」
はぁ?
「小さい頃の写真だろ……」
「だおー!でも恥ずかしいよー!!」
「何で……」
「とにかく見ちゃ駄目っ!!」
俺が、名雪に理由を訊ねようとした時、ガスッという音と共に意識が薄れる。
「ああ、あれはヒールソバット!?すごいよっ、名雪さん!」
あゆが嬉々とした声で叫ぶのが聞こえた。
意識が朦朧とした中、最後に見たのはこの状況でも微笑んで見守っている秋子さんの姿だった。
って言うか助けて下さい……。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
気がつくと、既に日が暮れかかっていた。
「いてててて……」
まだ痛む頭を押さえつつ、俺は横になっていた身体を起こした。
ふと、リビングの机の上に一枚の写真が残されていることに気がつく。
「これは……」
そこに写っていたのは俺と名雪、秋子さんと小さくちょこんと座る狐。
そして、真ん中には……。
「あゆ……」
そっか。
あゆも、ここに来たことがあったのか。
不思議だ。
この写真のように、皆がまた揃っている。
真琴は狐だが。
「祐一さん、気がつきましたか?」
「秋子さん」
呼びかけられ振り返る俺。
そして、俺の眼に入ってきたのはカメラを持った秋子さんの姿だった。
「?……どうしたんですか、そのカメラ」
「アルバムを見てたら写真を撮りたくなって。それに、真琴だけ仲間はずれじゃ可哀想でしょ?」
いや、ここに写っているけど……。
「どうかしら?」
「良いんじゃないですか?」
「じゃあ、早速撮りましょうか」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
水瀬家のアルバムに、七年越しにみんなで撮った写真が加えられた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
終わり
 
 
 
あとがき
 
どうも、神音月夜です。
「アルバム」楽しんでいただけたでしょうか?
こんなもんでいかかでしょうか?
……と言うか、何とも中途半端な出来で最後はシリアスにまとめてしまいました。
おかしいな……コメディ一色の筈だったのに。
下手さが滲み出てます……。
 
とりあえず相互リンク記念と言うことで贈らせていただくわけですが……。
も、申しわけないですっ!
大分遅れてしまいました……。
贈らせていただくと同時にリンクさせる予定だったので執筆の遅さが原因で遅くなってしまいました。
この場を借りて謝罪します。
本当にすみません……。
最後に、これからよろしくお願いします。
ではでは、また次の機会に。