「ただいま」

「おかえり祐一君〜♪」

「甘い!!」



 祐一が帰ってきたことに気付いたあゆがいつものように祐一に飛びついてくる。

 だがやはり祐一もいつものようにあゆの突進を華麗にかわす。

 そして…



(ドカァ!!)



 あゆは見事に玄関のドアに激突した。



「う、うぐぅ…祐一君がまた避けたぁ!!」

「それはお前が攻撃してくるのが悪い」

「攻撃じゃないよ!! ただ抱きつこうとしただけ…って祐一君、その子…誰?」

「ん? ああ、そうだった。 あゆに構ってる場合じゃなかったんだ」

「あらあら、可愛い子ですね」

「あ、秋子さん、いつのまに…」

「真琴が家に来たときと同じですね。

 大きなおでん種ですね、と言った方がよかったかしら?」

「…秋子さん、勘弁してくださいよ」

「とにかく、そのままでは風邪を引いてしまいますから、すぐに着替えを用意しますね」

「すいません、秋子さん」

「祐一祐一祐一ぃ〜…ってなによそいつ!!」

「はぁ、また五月蝿いのが…」

「真琴、この子を真琴の部屋で休ませてあげたいんだけど、いいかしら?」

「え? う、うん…」

「それじゃあ真琴、あゆちゃん、お布団を敷いておいてもらえる?」

「わかったよ、秋子さん。それじゃ、行こ、真琴」

「う、うん…」

「はぁ、まったく…」















紅き魔本を持つ少女


第二話 重なり合う二人の心













「それでは祐一さん、事情を説明して頂けますか?」

「はぁ、それが、俺にもよくわからないんですよ。

 俺はただこいつがずぶ濡れで倒れてたから連れてきただけですから」

「…そうですか。でも、どうしてあんな怪我をしていたのでしょうか」

「怪我してるんですか?」

「ええ、しかも、ただの怪我ではないようなのです。

 まるでなにかの爆発に巻きこまれたような…」

「…はぁ…あ、そういえば彼女の身元がわかるようなものは…」

「それが、何も持っていなかったんです」

「…そうですか」

「ところで祐一さん、その本は?」

「あ、これですか? 彼女が持ってたんですけど…」

「ちょっと見せてもらえますか?」

「はい、どうぞ」

「…見たことのない文字が書かれてますね」

「ねえねえ秋子さん、真琴にも見せて」

「あ、ボクも」

「…なにこれ? 落書き?」

「うぐぅ、読めない」

「やっぱ読めないですよね。

 ただ、そこの色が変わってる部分だけ何故か読めるんですけど」



 本に書かれた黒い文字の一部が赤に変わっていて、そこだけが読めるようになっている。

 でも、日本語で書かれているわけじゃないのに…なんでここだけ読めるんだ?



「え? 色が変わってるって、どこですか?」

「ほら、ここです」

「何言ってるの祐一、色なんか変わってないじゃない」

「うん、ボクにも色が変わってるようには見えないけど…」

「何言ってんだ? ほら、ここだよ。え〜と、サ…イ…」

「読んじゃ駄目ぇ!!」

「うわっ!? な、なんだ?」

「あらあら、目が覚めたみたいね」



 いつのまにか女の子が目を覚ましていた。

 まあ、これだけ騒いでたら当然か…。



「ねえ、あなた…その本が読めるの?」

「ん? ああ、この色が変わってる部分だけなら読めるが…」

「…そう」

「この本がどうかしたのか?」

「…別に…なんでもないわ。それより、助けてくれてありがとう。

 すぐに出ていくから本を返して」

「そんな体で無茶しては駄目よ。少し休んでからにしたほうがいいわ。

 お家の方には私が連絡してあげるから」

「駄目なの! とにかく本を返して!!」

「お、おい、だからそんな体で…」

「私がここにいるとあなたたちが危ないの!!

 だから早く本を返して!!」

「危ないって…どういうことだ?」

「それは…」


「ただいま〜!! お母さん大変なの〜!!」


「あらあら、今度は何かしら?」

「お母さん、どこ〜?」

「ここよ、名雪!!」




(どたどた…バタン)



 名雪が酷く慌てて部屋へ掛けこんでくる。

 名雪の腕には白い猫が抱かれていて…って猫!?



「お、おい名雪、お前猫なんか抱いてたらまたアレルギーが…」

「あ、あのね祐一。この子抱いててもアレルギーが出ないの!!」





「…はい?」





「だから、アレルギーが出ないんだよ!!」

「…そんなバカな…」

「…あなた…魔物!?



(ダン!!)



 女の子がいきなり名雪…いや、白い猫に掴みかかる。

 猫はそれをひらりとかわすと家の外へと逃げていく。

 そして女の子も猫を追って外に出ていった。



「ね、ねこさん!?」

「ま、待て名雪!!」



 我に返った名雪が慌てて一人と一匹を追いかける。

 そして俺たちも慌てて外へ飛び出した。
























「このぉ!!」

「フギャー!!」



 外に出てみると、女の子と猫が争っていた。

 女の子が猫に掴みかかろうとして、それを猫がかわし、女の子を引っかこうとする。



「ねえ、どうしてそんなことするの? その子が何かしたの?

 お願いだからねこさん苛めないで!!」



 名雪が必死で止めようとするが、女の子と猫は争いをやめようとはしない。



「魔物は…みんな敵。私は…私は一人でも戦える!!

 …戦えるんだからぁ!!」



 女の子の悲痛な叫びが辺りに響き渡る。

 …いったいどういうことなんだ?

 それに…魔物って…



『オル・ヴィオガ』



(ズガァン!!)



「きゃああああああああああ!?」

「フギャ!? 」

「うわっ!? な、なんだ!?」



 いきなり何かが爆発して、爆発に巻き込まれた女の子と猫が吹き飛ばされる。

 そして、舞い上がった煙が晴れると、そこに…赤い本を手にした男と、金髪の少年が立っていた。



「ククク…やっと見つけたぞ、セルフィ。今度こそお前の魔本を燃やしてやるぜ」

「…ウィッツ……」

「鬼ごっこはお終いだ。ウィッツ、今度こそ仕留めるぞ」

「おう!!」



『オル・ヴィ…』

「待って!! 本は渡すから、だからこの人たちに手を出さないで!!」

「ふん、知ったことか。そいつらもまとめて吹き飛ばしてやる」

「そうだな。いくぞ、ウィッツ!!」

「やめて…やめてええええぇぇぇぇぇ!!



























『ガンズ・ヴィオス!!』



























 無数の光球が私たちに降り注ぐ。

 私はせめて少しでもこの人たちを庇えるように前に立ち、両手を広げる。

 私のせいで…私を助けてくれた人まで巻き込んでしまった。

 私のせいで…こんなくだらない戦いなんかに……

 せめて私に…私に力があれば……

 この人たちを守れる、力があれば!!





























『セウシル!!』





























 私の中の何かが膨れ上がる。

 私は無意識に腕を突き出し、その力を解放する。



(ドガガガガガガァァァァン)



 無数の光球が見えない壁のようなものにぶつかり、破裂する。

 爆発により煙が舞い上がり、視界が覆われる。

 そして視界が晴れたとき、最初に私に見えたものは、

 驚愕の表情をしているウィッツと彼の誓約者。

 …そして、紅き魔本を手にして私の傍に立つ、男の子の姿だった…。














涼>今回、祐一がとんでもなく無茶なことをやってくれました。
美汐>そうですね。でも、どうして相沢さんはいきなり術を使えたのですか?
涼>いや、それが無茶なことなんだけど…それについては次回にわかるよ。ただ…
美汐>ただ?
涼>いや、それはまた次回の後書きで話す。
美汐>そうですか。それよりウィッツの使ってる術ってオリジナルですよね。
涼>うん、そうだけど…
美汐>術の説明はしなくていいんですか?
涼>…設定は現在作成中。それでは次回予告です。








 〜次回予告〜

 これって、夢じゃ、ないんだよね。
 一体何が起こってるのか、よく分からない。
 分からないけど…祐一が戦ってる。
 私たちを守るために…戦ってる。
 だったら、私も…私に出来ることをしないとね。
 ほら、白い本が光ってる。
 祐一が持ってる本と同じように…光ってる。
 祐一、私も…私も戦うよ。


 次回、紅と白の共闘

 見てくれないと、紅生姜のフルコースだよ♪