「はぁ、はぁ…」
どうして…
どうしてこんなことに…
友達だと…思ってたのに…
「…ククク…さあ…本を渡せ。もうこれ以上苦しむこともないだろう?」
どうして…
どうしてなの…?
「どうして…?」
私が一体何をしたっていうの?
「フン…お前、人間界に来る時一体何を聞いていた?
最後の一人になったものは魔界の王になれるんだぞ」
魔界の…王を決める戦い…
そんなことで…
そんなことで、友達と戦わなきゃならないなんて!!
「で、でも…私たち…友…達……」
「ハッ、友達? 笑わせるな!
この戦いはどれだけ仲間を蹴落とせるかなんだぜ!?
そう、どんな手を使ってもだ!!」
…酷い……
…酷いよ……
王なんかになれなくてもいい
だから……こんな、こんな戦いなんて……
「じゃあ、サヨナラだ、セルフィ」
『オル・ヴィオガ!!』
(キイイィィィィィ……)
ダメ…避けられない…
(ズカアアァァァァァン)
「きゃああぁぁぁっっっ」
(ザパアァァァン)
「ち、しまった…川に落ちたか…」
「…詰めが甘かったな…追うぞ、ウィッツ」
「くそっ、逃げられると思うなよ、セルフィ…」
「このクソ狐、いい加減観念しやがれ!!
今度こそ仕留めろよ、スィンク!!」
『アムルク!!』
スィンクの腕が剣となり、子狐に襲い掛かる。
(ザンッ)
「くそっ、ちょこまかと」
子狐はかろうじて剣をかわしているが、傷だらけでぼろぼろになっている。
必死でスィンクから逃げようとしているが、背中に結び付けられている本のため思うように動けないようだ。
さらに傷のために少しづつ動きが鈍っていく。
「くそっ、今度こそ…『アムルク!!』」
二度、三度と剣が振るわれる。
その一振りごとに子狐の毛が、血が飛び散ってゆく。
そしてついにその剣が子狐を捉えた。
(ザシュッ)
スィンクの振るう剣は子狐の腹を裂き、そこからドクドクと血が流れてゆく。
「はぁ、はぁ……これで…終わりだ」
本を持った男が子狐に止めを刺そうと容赦なく呪文を唱える。
『アムルク!!』
…だが、呪文の効果は発動しなかった。
「…しまった、エネルギー切れか!?」
「なんだと!? せっかくここまで追い詰めたんだぞ!!」
「うるさい!! お前がさっさと仕留めないからだろうが!!」
「ふざけんな!! お前が無駄に呪文を使いすぎたのが悪いんだろうが!!」
「なにぃ…っておい、狐はどこ行った!?」
「…ちくしょう、逃げられたか…」
深手を負った子狐は、その体を引きずるように逃げ去っていた…。
「…どうしたの? まい……」
『なんだか、胸騒ぎがするの。なにかよくないことが起こりそうな』
「…それは、あの紅い月となにか関係がある?」
『わからない。でも、なにか…嫌な感じがするの』
夜を駆け、魔物と戦い続けていた少女、舞。
彼女の手にはもはや剣はない。
剣を捨てた少女に残されたのは"意思をもつ力"『まい』という存在。
かつて舞が剣を手に取る原因となったその力は
世界に降り立つ厄災を感じ取り
再び舞を戦いへと赴かせることとなる……。
猫が、鳴いている。
紅く染まった月を見上げ、悲しそうに鳴いている。
今宵は満月。
紅く染まりし満月は魔界と繋がる扉を開く魔性の月。
白き本を背負いし白き猫は、月に願う。
願わくば、この悲しい戦いが一日でも早く終わりますようにと……。
人々は知らない。
今宵の紅く染まりし月のことを。
そしてその月がもたらす厄災のことを。
力を持たない者の目に、紅き月が浮かぶことはなかった……。
紅き月に導かれ、魔物たちの祭りが始まろうとしていた……。
涼>はじめましてorこんにちは、風波 涼です。
美汐>風波さんっていつもそればかり言ってますね。
涼>…ほっといてくれ。
美汐>それはともかく、また新連載ですね。ちゃんと完結できるのですか?
涼>…善処します。
美汐>はぁ…せめて途中で投げ出すような真似だけはしないでくださいね。
涼>泥舟に乗ったつもりで安心しておいてくれ。
美汐>それでは沈んでしまいます。
涼>気のせい気のせい♪ それでは次回予告スタート。
〜次回予告〜
『起きないから奇跡って言うのよ』
誰かにそんなことを言われたことがあるような気がする
だけど俺は諦めなかった
そうしたら、奇跡が、起きた
起きた…ような気がする
とにかく、今俺の周りには幸せで満ちている
そう、たったひとりの少女を除いて…
そして再び彼女は出会う
あの時と同じ、あの丘の上で…
次回、運命の出会い
次回もまた見てください