クリスマスとクリスマスイブ、どっちを祝うのかと聞かれれば、勿論どっちともと答えるだろう。
そういう訳で、俺と相沢はクリスマスイブ当日、街に繰り出して遊んだ。これでもかというくらい、遊んだ。
途中警察に補導されかけて慌てて逃げたときには既に深夜の三時、世の中はもうクリスマスとなっていた。
今日は相沢はいない。
流石に二日連続で野郎と遊ぶ気は無いらしく、今頃は自分の彼女とデートにでも出かけているのだろう。
それがいい。むしろ今日も俺と遊ぶ気だったのなら、俺は相沢の鳩尾付近を全力で蹴り飛ばしていたところだ。
そういう訳で、彼女持ちではない俺は一人寂しく、自分の部屋で酒を飲んでいる。まだ高校生だとかそういう事は気にしちゃいけない。
微妙にやさぐれた気持ちで自分のコップに御代わりを注ぐ。注いだけど飲まずに、しばらくボケーッと呆けてみる。
―――何やってんだかね、俺。
もしかしたら、俺には別の未来があったのかもしれない。
こんな狭いマンション(そりゃアパートじゃないだけマシだが)の一室で孤独に酒なんか飲んでないで、もっと流行の服に着飾って街に繰り出し、一年に一回しかないイベントに大いに躍動する。そして隣には――――――
「……止めた」
ごろん、と仰向けに転がる。そんな可能性の話を考えていてもしょうがない。人生は一度きり、なる様にしてなってしまった現在に殉じるだけだ。あれ、準じるだったか。准じるだったかも。
そんな取りとめもないことを考え、半分寝た状態で仮死状態ごっこを続けてると、突然、
ピンポーン。
家のチャイムが鳴った。
何だろう、ここ最近は通販を利用した覚えは無い。来客の予定もないし、隣の若い奥さんが夕飯の御裾分けに来てくれるなんてもっての外だ。
身を起こし、ドアに向かう。その途中、もう一度チャイムが鳴った。何なんだ、一体。斉藤辺りが一人寂しい俺をからかいに来たか? お、ありうる。
なんて馬鹿な事を考えつつドアの鍵をあけて扉を開くと、
「こんばんは、潤さん!」
「……栞ちゃん?」
とても意外な人物が笑顔で立っていた。
Let it be
部屋に招き入れると、栞ちゃんはずかずかと勝手知ったる我が家と言わんばかりに上がり込み、いきなり布団の下を荒らし始めた。
「……なにしやがってんのかな、栞ちゃんは」
「いえ、男の人はこういう所にイケナイ本を隠すのだと、昨日のドラマでやってました」
どんなドラマだ。
とりあえずスカートの中が見えそうなくらい屈んで布団漁りを続ける栞ちゃんの襟首を摘んで、部屋の真ん中に鎮座してあるテーブル近くに下ろす。
そして反対側に回って座ると、切り出した。
「それで、今日は何の用だい?」
「うわ、潤さんって結構力持ちなんですね」
「いきなり話を脱線しないように」
軽く睨んでやると、栞ちゃんは笑顔で御免なさいと謝罪した。本当に謝ってるのかね? 誠意の気持ちが一片たりとも感じられないが、まぁこっちも本気で怒ってるわけじゃないし、とりあえず肩を竦めるだけで収める。
栞ちゃんはそんな俺の様子を見ると、幾分相好を崩して話を切り出した。
「潤さんは折角のクリスマスの日に、一人っきりなんですね」
「帰れ」
「うわ、酷いですよ、いきなり」
「突然現れて家捜しを始めたと思ったら、次の発言がそれか?」
「まぁまぁ、今はこんな美少女が一緒にいるんだからいいじゃないですか」
「………美少女………ねぇ…………」
「何ですか、その間は!?」
「いや、貧相だな、と。どことは言わんが。胸とか」
「言ってるじゃないですか!」
ぷぅ、と膨れる栞ちゃん。そういうところが余計に子供っぽさを際立てていることに気付いているのかどうか。
そんな感じでぷんぷん怒る栞ちゃんに戸棚からポテチを取り出して与えると、美味しそうにバリバリ食べだした。もう機嫌直ったのか。早ぇ。
「……で、結局何がしたいんだ、栞ちゃんは」
「えと、つまりですね、彼女もいなくて寂しい潤さんに慈愛の手を差し伸べようと」
「……は?」
「要するに、私も暇なんで今夜は付き合ってください」
今夜は、付き合ってください。
言葉だけだと十八歳未満置いてきぼりな夜のシーンを想像してしまうが、まぁ、つまりは暇だから一緒に飯でも食おうぜってことだ。
別に俺は構わないけど、でもそれって、
「空しくない?」
「それは言ってはいけないお約束です」
あおーん。
遠くから聞こえる犬の遠吠えがやけに響いた。
既に時刻は十時を回っている。
互いに酒を飲みながら(栞ちゃんはうわばみでガバガバ飲んでいる。似合わねー)、最近の近況を話し合った。学校の成績、最近やってるテレビ番組、バイトの経験、期末テストの結果、俺の卒業後の進路。
栞ちゃんはよくしゃべった。顔を赤くして腕をブンブン振り回しながら、身振り手振りその時の状況を再現している。そのまんま酔っ払いの典型だが、かく言う俺も同じくらい顔を真っ赤にして騒いでいるので、人の事は言えないのかもしれない。
「……と、いう訳なんですよ。……って、ちょっと聞いてます?」
「あ〜、聞いてる、聞いてるよ」
そうこうしてるうちに、いつの間にか酔いが回ってフラフラして来た。視点の焦点がぼやけて眠気が俺を襲う。少し飲みすぎたか。気付いたら十時を回ったばかりだと思った時刻は既に十一時、床には酒のビンやら缶やらが縦横無尽に転がっている。
栞ちゃんはまだまだ元気そうだった。どんな体力だ。小柄で貧相なくせに。酒に強いにも程があるぞこんちくしょー。
「栞ちゃん、もう十一時だぞ。家に帰らなくていいのか?」
「お母さんには友達の家に泊まってくるって言ってあります」
「おいおい、泊まる気か? 若い男の家に泊まるなんて、どーなっても知らんぞ」
「襲われそうになった時には近所に聞こえるくらい大声を上げますよ」
甘いぞ栞ちゃん、ここの壁は防音使用さ。なーんて嘘。そんな壁のマンションなんて高くて借りれねぇよ。あ〜いかん、酔いが酷くなってきた。
室内に溜まった酒気を抜くために、おぼつかない足取りで窓へ向かう。力強く開くと、涼しい風が飛び込んできた。OK、換気完了。
「気持ち良いですね」
「ちょっと寒いけどな」
いつの間にか、栞ちゃんも俺の横に立って風を浴びていた。しばらくその体勢のまま動かない。そよそよと頬を撫でる風を感じていると、栞ちゃんがじっと俺のほうを向いている事に気が付いた。
「どうした?」
「いえ。潤さんて、思ってたよりも身長あるんですね」
「そりゃ男だからな」
「でも、昔はお姉ちゃんの方が大きかったですよね」
「おいおい、どれだけ昔だよ」
苦笑する。
あれは小学生の頃だったか、俺の家は美坂家の隣にあった。田舎は都会と違って近所付き合いは深く、必然的に俺と美坂姉妹は仲良くなって一緒に遊んでいた。幼馴染、そう呼ばれる関係だ。
当時、俺は同年代の男子と比べて背が低く、美坂―――その頃は香里ちゃんと呼んでいたが―――は同年代の女子と比べて背が高かった。何だか、幼心にそれが非常に悔しかった想い出がある。
「何だか懐かしいな。あの頃の美坂ってすぐに手が出る乱暴者でさ、ガキ大将って言葉がピッタリだったな」
「うわ、それお姉ちゃんが聞いたら怒りますよ?」
「構わないさ。どーせ美坂は今頃相沢と――――――」
言葉が、途切れる。
栞ちゃんの顔が見れない。目を閉じ、深く息を吐く。
「……ごめん」
「……いえ。……潤さんこそ」
「…………」
「…………」
「…………………戻ろうか」
いつの間にか吐く息は白く、手足も少しかじかんできた。
何とも言えない雰囲気のまま、窓を閉めて部屋に戻る。何もしゃべらない。静寂を乱すのは、脇に置いてあるストーブのブォンブォンという騒音のみ。
そのまま、五分ほど経過した。栞ちゃんがポツリと呟く。
「……潤さんは、お姉ちゃんが好きだったんですよね?」
「……そういう栞ちゃんこそ、相沢が好きだったんだろ?」
「…………」
「…………」
―――小学を卒業する頃、俺の両親が仕事の都合で都会に転勤となった。
都会での生活も楽しかったが、俺はあの雪の街と幼馴染の少女達が忘れられず、進路をこの街の高校にして、単身戻ってきた。
数年ぶりに見る景色は以前と比べて所々変わっていたが、それでも俺の生まれ育った土地だということに変わりは無く、俺を知る何人もの住人に「お帰り」と言われた時は胸が一杯になってしまった程だ。
美坂姉妹とも再会した。昔と比べて、美坂は美しく、栞ちゃんは可愛らしく成長していた。そして俺は、美しく成長した方の娘に恋をした。
この年になって名前を呼び合うのも気恥ずかしく、「香里ちゃん、潤くん」という呼び方は「美坂、北川くん」という他人行儀なものに変わってしまったが、俺たちの関係に変わりは無かった。
……栞ちゃんの誕生日を境に、美坂は栞ちゃんを『いないもの』だとして振舞いだした。当時栞ちゃんはとても重度の病気にかかっており、来年の誕生日まで生きられないと申告されていた。俺は事情を知っていたし、美坂の気持ちも理解出来たが、結局何もしてやれなかった。
栞ちゃんの誕生日が近づいてきた頃、相沢が転校してきた。不思議な奴だった。考えが突飛で破天荒な、とても面白い奴だった。席が近かったこともあり、すぐ仲良くなった。休み時間になる度に馬鹿なことを言い合って、美坂や水瀬に呆れられたりもした。
数日後、栞ちゃんが学校の中庭に来ていた。とても吃驚した。家で安静にしていなければならないはずだったからだ。
何をしてるのだと問いただそうとして―――思いついた、一計。ちらりと相沢の顔を見る。よし、美形。
相沢は変な奴だったが、不思議な魅力があった。こいつなら何事もこなせてしまう、とこちらに思わせてしまうような才能の片鱗のようなものを感じられた。
こいつなら、美坂を助けられるかもしれない。
そう思った俺は、栞ちゃんのことを相沢に教えた。俺が知り合いだということは伏せた。変な先入観や情報を与えるより、真っ白な何も知らない状況の方が相沢にとっても、美坂にとっても良いことだと思った。
―――相沢は奇跡を起こした。美坂姉妹の仲を修復しただけではなく、栞ちゃんの病気まで治してしまった。本当に相沢が治したのかは知らないが、栞ちゃんはそう言っていた。
俺は嬉しかった。全てが順調に進んだ、そう確信した。…………でも。
「………でも、誤算があった」
「…………お姉ちゃんが、祐一さんを好きになったんですね」
「……ああ。そして、栞ちゃんと付き合っていた相沢も、美坂を好きになっていった」
「…………」
「…………」
夏頃から、二人は付き合いだした。
周りの視線を気にしない熱愛ぶりで、俺はそんな二人に呆れる振りをしながら、内心胸の痛みを抑えていた。
………それは俺の役だ。
言えなかった。言えるはずが無かった。全ては遅かった。祭りは終わっていた。俺が臆病だったばかりに、告白出来ずにいた。
美坂はとても幸せそうだった。相沢はすごくいい奴だった。だから、美坂がそれでいいならと、諦めてしまった。
………違うっ!!!
本当は諦めてなんかいなかった。好きでい続けた。昔から好きだったんだ。気付いたんだ。でも美坂は相沢を愛していた。今日のクリスマスだって、美坂は相沢とデートに出かけた。俺とじゃない。俺なんてもう目に入っていない。
悔しかった。悔しいと思うと同時に、もうどうでもいいという怠惰感が湧き上がってきた。人生にやり直しは効かない。人生は一度きり、なる様にしてなってしまった現在に殉じるだけだ。
「……それで良かったんですか?」
「良くはない。良いはずがない。一度は奪おうと考えた。でも無理だった。相沢も美坂もいい奴だから、その関係が壊れるのが嫌だった。結局、俺が臆病だった。それだけだ」
「…………」
「俺はずっと美坂を想い続けるだろう。永遠に叶わない初恋。……栞ちゃんの好きな、テレビドラマみたいだろ?」
「……そんなこと、ありません」
最後に俺がおどけて言うと、栞ちゃんは顔を伏せたまま否定した。どんな表情かは分からない。
「……私だって祐一さんが好きでした。恋なんてしたことありませんでしたから、恋人が出来るって、こんなに幸せなことなんだと思いませんでした。私は長く生きられない体だったから、最後に幸せな記憶が出来て嬉しかった。お姉ちゃんとも仲直り出来たし………でも、最後だって考えると、もっと生きたいって思うようになりました。もっと祐一さんと過ごしたい。もっと祐一さんと一緒にいたい。隣に祐一さんがいないなんて嫌だって」
「…………」
「私の病気は治りました。私、とても喜んだんですよ。『ああ、これでまた祐一さんと一緒にいられるんだ』って。…………でもっ!!!」
「っ!?」
突然、栞ちゃんが俺に飛び掛ってきた。不意を突かれた俺はいとも簡単に押し倒される。身体を床に強打、肺が潰れて一瞬呼吸が出来なくなる。
栞ちゃんは俺の胸倉を掴むと、鬼気迫る表情で俺を睨み付けた。俺は動けない。息苦しさで窒息しそうな錯覚を覚える。
「でも、祐一さんは私じゃなくてお姉ちゃんは選んだ! 祐一さんは私を『妹』としか見てくれていなかった! 私は祐一さんを愛していたのに、祐一さんは私のことは『好き』で終わってしまっていた! どうしてですかっ! 私、何の為に生きてるんですか!? 祐一さんは隣にいない、祐一さんは私を見ていない、祐一さんは私を愛することなんてもう絶対に無いっ!!!」
「ぐっ……し、栞ちゃ……」
「私、今日デートに出かけるお姉ちゃんに言ったんですよ。お姉ちゃんは私を忘れるだけでは飽き足らずに私のものまで奪うんだって。お姉ちゃん泣いちゃいました。祐一さんが私と別れて自分と付き合うことになった時に私に謝った時と同じくらい泣いてました。でも、返してくれませんでした。絶対に渡さないって言ってました。その時、私は昔の、祐一さんが隣にいた時のことを思い出してました。あの頃の自分も、同じ様な状況だったらお姉ちゃんと同じ答えを出すのかなと考えたら、急に気力が無くなって、どうでもよくなりました。お姉ちゃんを送り出して―――ああ、結局謝ってませんね―――しばらくボーッとしてたんです。そうしたら、私と同じ状況の潤さんのこと思い出したんです」
そこまで言い切ると、栞ちゃんが俺の上からどく。
俺は上体を上げて息を整え、軽く首を振った。もう酔いは完全に醒めた。時計はいつの間にか十一時四十五分、もうすぐクリスマスも終わる。
「潤さん、私と一緒に死んでみません?」
「……また、えらく物騒だな」
「永遠に叶わない恋を引きずるなんて、私には耐えられません。……祐一さんとお姉ちゃんへの、ささやかな復讐ですよ」
「全然ささやかじゃないよ、それ。……俺はパス。死ぬ気はない」
「どうしてですか?」
「俺、これでも美坂や相沢の友人―――いや、親友だって自負はあるから。俺が死んだら、あいつら悲しんでくれると思う。俺、美坂や相沢が悲しむ姿なんてもう見たくない。だから、死ねない」
「…………」
「栞ちゃんだって同じだ。死んだら美坂や相沢が悲しむ。だから、死ぬな」
「…………」
「…………」
「……潤さんはどこまでも優しくて……どこまでも臆病なんですね」
「まぁ、ね」
苦笑する。栞ちゃんも笑顔になる。どうやら、死ぬ気はないみたいだ。ちぇっ、冗談だったのか? もしかしたら冗談じゃなかったのかもしれないけど、まぁいいや、生きてるんだし。
俺はこれからも、ずっとこうして損な役回りで生きて行くのだろう。それも人生、これも運命。しょうがないので金持ちや世界の英雄とかじゃなかった自分の両親を恨むことにしよう、うむ。
「もうすぐ、クリスマスも終わりますね」
「そうだな。……あ〜、悪ぃ、クリスマスプレゼントが無いや」
「いえ、私が押しかけたんですから、構いませんよ」
「でも」
「というか、本当は私が何かしなくちゃいけないんですよね。……そうですね、今出来る事で何かやりましょうか?」
「ん〜、じゃあ昔みたいにお兄ちゃんって呼んでくれ」
「却下です」
「うわ、ひでぇ」
「そんなこと言う人嫌いです」
クスクスと笑い合う。俺は他に何をしてもらおうか考える。
「……そうだな。クリスマスが終わるまで、俺の恋人になってくれないか?」
「……クリスマス、後十分で終わりますよ?」
「別にいいよ、それで。シンデレラの魔法は十二時には解けてしまいます、と。ただ恋人と過ごさずに終わるクリスマスって勿体無いじゃないか?」
「勿体無いというか、空しいですね」
「まぁ、そんな感じ」
栞ちゃんは顔を伏せて考え込む―――と思ったら、すぐに顔を上げた。
「……潤さん、私のお願いも聞いてもらっていいですか?」
「何だい?」
「クリスマスが終わっても、私の恋人でいてください」
「―――っ」
「もしかしたら、ただの傷の舐めあいになるかもしれません。でも、私達も祐一さんやお姉ちゃんみたいに幸せになってもいいと思うんです」
「……シンデレラの魔法は十二時には解けるんだぜ」
「私、シンデレラじゃありませんから」
栞ちゃんがそっと目を閉じる。俺は少し躊躇して――――――顔を近づけた。唇が重なる。これが俺のファーストキスだということを考えると急に気恥ずかしくなり、数秒で唇を離してしまった。その直後、机の上に置いてあった腕時計がピピッと音を立てる。十二時、魔法が解ける時間。
瞬間、いきなり栞ちゃんが顔を近づけてきた。唇が奪われる。抵抗しようとして、止める。舌と舌が絡み合うディープキス。長い時間ずっとそのままで、ようやく顔を離すと唾液が糸を引いていた。ぐはっ、エロス。
「ほら……私、シンデレラじゃありませんでした」
「……そうなると、俺も王子様じゃ無いってことか」
「いいんですよ、平民で。普通の生活と普通の幸福。他に何がいりますか?」
「……いらないな、そりゃ」
俺達の先に待っているのは、幸福か不幸か。俺の恋はまだ終わりを告げてなんかいない。栞ちゃんも同様だ。
でも、俺達は二人で生きてみようと思う。幸せなんてどこに転がってるのか分からないし、まぁ今までなるようになってきたんだ。これからもなるようになるんじゃないか? そしてその未来に殉じるだけさ。
クリスマスを過ぎた世界の中で、俺達はもう一度口付けを交わした。