いつもいつも、僕は一人ぼっちだった
いつもいつも、僕は積み木をしていた
でき上がった城を前にしゃがみこんでいた
これは捨てられなかった悪い夢?
告白して思い出そうとしている過去?
僕は幸せを掴み取ろうとする度に寄り道をしたのかもしれない
冬の日 白い息 青空に浮かんだ
ムキになって咳き込むくらいガラスを曇らせていたね・・・
冬の日 北風に笑われて 悴んだ冷たい手が優しかった
僕がまだ人だった頃・・・
どうあがいても年末だ
カレンダーは今年の残り時間が残り僅かである事を教えてくれる
寝起きのまどろみの中いつも通りのコーヒーと煙草
ドラマか何かならきっと格好良い男なんだろうな。生憎どうしようもない駄目な男だ
低血圧に加え変な夢のせいで面白いくらいに機嫌が悪い
何で今更あんな夢を見たんだろう・・・
「あぁ、雨か・・・道理で・・・」
誰に言うでもない独白
そして今日もコーヒーと煙草だけの不健康極まりない食事を済ませて仕事に向かう
「なぁ、今の俺は笑えるんだぜ」
フユノヒ
今考えるとガキだった。何も考えていなかったのかもしれない
でも、当時の俺はきっと精一杯考えていたのだろう
人の往来は時間と共に増えて行く。既にこうして何時間も眺めている
誰かを待っているわけではない、何かをするわけでもなくただベンチに座って人を眺めている
何本目かわからない缶コーヒーを飲みながら何十本目かわからない煙草を吸いながら
ずっと駅前の様子を眺めている。酷く退屈で酷くつまらない
「何やってんだろうな・・・」
何度目かわからない同じ台詞。本当に何がしたくてこうしているのだろう
今日は世間で言うクリスマスイヴ。意味もわからず浮かれた恋人同士が愛し合い、それを妬む同姓同士が馬鹿騒ぎをする日
無駄に外に出てみたは良いが、そんな雰囲気についていけず気づけば何時間も人間観察をしている
「雪が降れば良いのに……」
耳に入ってきた言葉に思わず苦笑いをしてしまう。勘弁してくれこれ以上寒くしてどうするんだ
このまま雪が降れば俺に積もって少しは絵になるのか?いや、明日の新聞の3面記事だな
雪が降って喜ぶのは恋人同士でも主に女性側の意見だろうなきっと。しかも夢見てる都会の女と
そもそもこの大都会で雪が降っても困る。汚いし。雨が凍ったものだぞ雪は
・・・でも雨よりは良いか
日付が変わりそろそろ今日の終電が到着する
「ホテルが揺れてるぜ・・・」
我ながら頭の悪い発言だと思いながらも立ちあがる。いい加減に飽きたし帰ろうと思った
固まった身体を伸ばしていると声をかけられた
「…ぁ……」
声から察するに酔っ払いではないようだ。というか女か
この何時間もの間何度も声をかけられた、酔っ払い、逆ナン、何かの勧誘、職質…
あぁまたか。残念ながら俺は帰って温かい風呂に入りたいんだよ
「佐野君…だよね…?」
まさか知り合いにこんな姿を見られるなんて・・・どう見ても彼女が来なかった痛い子だろ俺
マズイ、非常にマズイ。だが、誤解を解こうにも何となく座ってただけだし。その方が可哀想な子だ
「ぁ…やっぱり佐野君だ……。」
「・・・と、中村・・・先輩・・・?」
2年振りに会った先輩は何も変わっていなかった
6年前意味もなく座っていたベンチにふと目が行く。今朝見た夢のせいだろう
当時の俺が本当に精一杯考えていたのかが疑わしくなる
「何考えればここに何時間も座ってられんだか・・・」
雑踏の中立ち止まりそんな言葉が出る
ただ、あの再開が俺の人生変えたのかもしれない、そして朋美の人生を変えたのかもしれない
2年振りに入った部屋は先輩同様何も変わっていなかった
あの時と同じ部屋で同じ笑顔の先輩
だけど、だけど俺はあの時と同じなんだろうか
そんな事を考えていると先輩が口を開いた
「なんであそこにずっと居たか、聞いて良い?」
「別に。気づいたらあそこに居た。それにもう聞いてるから」
「……何時間も居たんでしょ?誰か待ってたんじゃないの?」
そう言うと立ちあがってキッチンへと向かってしまった。反論は受けつけないのだろうか
「はい。コーヒーばっかりじゃ身体に悪いよ。煙草も少し控えてね」
そう言って差し出されたのはホットココアと灰皿
「何時間も居たのは事実だけど、何となく居ただけで。誰か待ってたわけじゃない」
そう言ってマグカップへ手を伸ばして気づく
・・・俺のコップだ。灰皿も俺が買ったやつだ。何も、何も変わってない
猫舌だから少し温めのホットココア。先輩の、朋美の作る甘過ぎるホットココア
何一つ変わっていない。あの日この家を飛び出したあの日から何一つ変わっていない
「佐野君…、大丈夫?」
「え・・・」
顔を上げた俺の目からは涙が流れていた
嬉しさ、優しさが胸に刺さり、懺悔と悔しさが胸を締め付けていた
「・・・朋美・・・ごめん。・・・俺朋美が好きだ」
電車に揺られながら外の景色を見ている。いきなり風景が変わる事はなくいつもと同じ風景だ
車内に目をやると見慣れた制服が目に付く
指定のコート、種類増えたんだ・・・
5年前までは同じ制服を着ていた。5年前、1番幸せだったのかもしれない
もう5年か、年とるわけだな、俺もお前もな・・・
全てが止まっていた
目をそらして「冗談だ」って笑いたかった
だけど、気づいてしまったから。あの時出せなかった答えを出さなきゃいけないと思ったから
俺の中で2年前の続きが今になって始まったのかもしれない
いや、わからなかった答えがわかっただけなのかもしれない
お前がありったけの勇気で言った「好き」は偽りばかりの世界でたった一つの真実だった事に
「2年前さ、お前に好きだって言われて。何て言って良いのかわかんなくて、どうして良いのかわかんなくて。逃げたんだと思う。ごめん」
言葉が自分に圧し掛かり静寂を支配する
「ここ最近正直忘れてた。さっき駅前で会って懐かしいと思った。家に来て色々思い出した。変わってないのを見て、知って気がついた。俺は朋美が好きだって事に」
自分の心臓の音が聞こえる。いつもよりも格段に早い
今世界ではこの音しか鳴っていないのかと考えさせられる程に
「………。」
何か言おうとしているが言葉になって出てきていないのがわかる
違う、困らせたいんじゃない。こんな顔して欲しくない、俺が見たいのは・・・
「同情でも何でもねぇよ。俺もよくわかんねぇ部分が多いよ。でも、でも俺はお前に惚れたんだよ」
「朋美、好きだ。俺と付合ってくれ」
もうどうにでもなれと思った。ただ、どうしても言いたい事を思った事を全部言いたかった
「……ぅん。……ありがとう。」
涙で濡れた笑顔を俺は心底可愛いと思った・・・
「おはようございます」
「あ、佐野さんおはようございます」
店に入るといつもと変わらない朝の光景だ
「あぁー」
挨拶すらまともに出来ないのは口が悪いって次元の話じゃないな。まぁ朝はしょうがない、俺低血圧だし
いつにもましてどうでもよい事を考えていながら少し口元がにやけてしまう
告白まで口悪かったな・・・
「毎朝の事ですけど、もうちょっとやる気だしてください。雨の日は特にですけど」
「店長、毎朝言わないでください」
やっぱり言われた。今日はいつにもましてだりぃんだから勘弁して欲しい
「そんな事より今日チーフ指名の予約が既に10人入ってますから頑張ってください」
だりぃ・・・厄日か?
始めて会ったのは俺が中1の時、12歳
つい1ヶ月前迄はランドセル背負って小学校通っていた
部活のOGとして来ていた朋美は高2、17歳
5歳の年の差は頑張っても4歳差にしかならない。しかも数日間だけ
最後に会ったのは14歳。自分でも小説より奇妙な人生だとは思っていたがまさか中学時代に大学生に告白されるとは思わなかった。
からかわれてると思った。それだけ年の差が大きいと思っていた
そして16歳の今。朋美は21・・・あぁ、もうハタチ過ぎたんだな。本来なら今の方が年齢差を実感すべきなのかもしれない
でも俺はまだ17年も生きていないのに「良かった…。」と泣く君の笑顔をを心底護りたいと思った
何も欲しく無いと思った、君と夢だけがあれば。他の何もいらないと思った
朝から忙しいのは好きじゃない。だから店が開いて30分は予約は入っていない
店長に怒られるが朝一はどうにも苦手だ。だからって仕事しないなんて俺も随分我侭だ
でも、そんな我侭を言える立場になっているのも事実だ
この年で店のナンバー2・・・ただ、我武者羅に頑張った。ただ、色々なものを犠牲にしてきた
力が欲しい。護る力が欲しい。だけど、俺は護れなかった
だせぇ話だ。あいつを護りたかったのに傷つけて、捨てたんだからな
「チーフ、予約の方みえましたが」
「ん、通して待たしといて」
そう言うと煙草を咥え火をつける
間違えたのかもしれない。でも後悔はしない、後悔をしてもどうしようもないのだから
だったら反省するだけだ。反省してもう2度と同じ事をしない、それだけだ
18歳の俺はほとんど家に帰ってなかった。働き出して毎日毎日練習してほぼ毎日店に泊り込んでいた
一方朋美も大学院へ進学を決め毎日研究とやらであまり家に帰っていないようだった
そう、何日も何日も顔をあわせていなかった。休みもあわないので本当に最後に会ったのが何時だかもわからないほどに
ガキだった。まだまだ俺はガキだった
早く一人前になって認めてもらいたかった。護りたかった
だけど、それは俺の勝手な都合で。あいつの気持ちなんて考えてもいなかったのかもしれない
いや、大丈夫だろう。わかってくれるだろうと勝手に思いこんでいたのかもしれない
そんなある冬の日、久しぶりに顔をあわせた俺達は互いに無言だった
「言葉は大切な事を伝えられる」そう言っていたお前が何も言わない事は珍しい
それだけ追い詰められていたのだろう
どちからとなく始まった喧嘩はもうどうしようもなかったのかもしれない
最後は俺が出ていった。4年前と同じ部屋から俺は又出ていった
外に出て一歩を踏み出せないでいた。振り返りはしなかったけど追い駆けて来て欲しかった。また勝手な都合だ
家に帰るまで楽しかった事しか思い出せなくて涙が出た
あぁ忙しい。腹立たしいほどに忙しい。流石は師走だ
結局朝から動きっぱなしだ。煙草吸いてぇ
タイマーを見ると2分程時間があったのでバックルームに入った
「あ、お先です」
俺より年上のアシスタントが飯を食っていたが気にせず煙草を咥え火をつける。いつもの事だ
黙って煙草を吸いつづける
駄目だな今日は・・・色々思い出しすぎてる。集中しないと
タイマーが鳴り、まだ長い煙草を灰皿へ押しつける
いつも着けたままの腕時計が揺れる。これは、2年前か・・・
1人で暮らす事は困難の連続だった。だけど、家なんて帰ることも少なかったし寝るだけだった
護るものが無くなった俺はそれでも頑張った。それでも達成して認めて欲しかったから
早く一人前になって、謝りたかった。それだけで頑張れた
挫けそうになった夜君が何気なく言ってくれた言葉、思い出せば進む勇気取り戻せたから
その甲斐があったのかは知らないが、ハタチの冬にこの年では異例のチーフになった
ただ、犠牲が多過ぎた、大き過ぎた。1番大切なものを失い、1番護りたいものを護れなかった
それでも自分の中でケジメをつけたかった。何年経っても自分の勝手でしか動いてないな
久しぶりに訪ねた家は生憎の留守。管理人に鍵借りて中に入ってようかとも考えたが、そんな気にならなかった
玄関の前で待っていると階段を昇って来る足音でわかった
こんな些細な事までわかるのに、気づいてやれなかったんだな。そんな気持ちが胸を締め付ける
髪が伸びても見た目の幼さは変わらなかった。むしろ背が縮んだ気がする
「身長縮んだ?」
思わず聞いてしまった
「……洸君がまた伸びただけだよ…。」
なにも変わっていなかった
ソファーに腰掛ける俺にコーヒーと灰皿が出された。何処かで同じような事があったな
そして俺は少しずつ話し出した。会話は嫌いだし得意じゃないけど、どうしても伝えなきゃいけなかったから
放し終わると静寂が訪れる。どうもこの沈黙が好きじゃない
「……2年毎冬に何かあるって知ってた?」
質問の意味がわからず答えられない俺に朋美は言葉を続ける
「最初は今から6年前の冬。私が洸君を好きになって告白した。そして4年前の冬、洸君が私に告白した」
そこまで言われて気がついた
「2年前喧嘩して俺がまたこの部屋を出てって。・・・今年は」
今年は何だ?俺の懺悔?言葉に詰まっていると朋美が口を開いた
「だから今年はまた私が告白する番。洸君……ずっとずっと好きだよ」
夕方になり雨脚は弱まってきた。窓の外に目をやり客とそんな会話をする
「佐野さんは雨に敏感なんですね」
「雨が嫌いなんで」
天気の話は客との会話で1番無難で話しやすい。昔教わった事だ
「雪が振れば良いのに」
「寒いし、交通機関止まっちゃうから駄目ですよ」
「現実的ですね。女性は憧れるんですよ。」
なんだろう。このデジャヴ的会話の流れは
「ありがとう。でも、俺は朋美の気持ちに応えられない」
残酷だと思ったし、嘘だった。俺が朋美を好きな気持ちに変わりはない
そっと見上げた君の顔は切ないくらいに愛し過ぎて
「ほら、俺いい加減だし。口も性格もわるいしさ。自分勝手で我侭で・・・何よりお前に酷い事をした」
そう言うと立ちあがる。これ以上はもちそうにない、溢れ出してきそうな涙見られたくないから
「じゃな」
歩き出した俺の後ろから追いかけてくる声と足音
「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。何で……私は何があっても洸君が好きなの。もう6年もずっと片思いし続けて……。」
「前だって洸君は私の事見てなかった。守ってもらうだけの負担にはなりたくないの……。だから……。」
何て愚かなんだろう俺は。好きな女何回泣かせりゃ気が済むんだろう
でも、抱きしめようとする身体を必死で抑える
「ロンドン行くんだわ俺。だから・・・また2年後の冬にな」
片付けも掃除も終わり、俺は最後の客の仕上げをしている
今日も終わりは俺待ちか・・・待たせる事は嫌いだけど俺の人生待たせてばっかりだな
「お疲れ様でした。」
「お疲れ」
「っした」
今日も仕事は終わり帰るだけ。仕事が終わる瞬間は疲れがでる
「佐野さん。今日練習見てもらえますか?」
「ごめん。こんな冬の日はちょっと帰りたいんだ」
雨は止んでいた。寒さが支配するなか家路へと急ぐ
駅に着き今朝と同様にベンチの前で立ち止まる。濡れていないのを確認すると腰掛けて煙草を取り出す
「あー今日も飯食ってねぇや」
雑踏に言葉は掻き消され俺は煙草に火をつける
見送りは数人の友人だけ。沢山の人じゃなかったが俺の最高の仲間達
ただ、息を吸いこんで瞳閉じてみても思い浮かぶのはひとりの女だけ
後姿でも足音だけでもきっとわかる。夢の中じゃ出演回数一番で
搭乗時間が迫る、嘘で散らかった人込みの中かけがえの無いものを無くしてしまわないように
「んじゃまぁ向こうで暴れてくっからよ」
ありきたりで、俺らしい言葉しか出ない
「取りあえずそこの金属探知機で捕まるんだから早く行け」
「帰ってくんな」
「社会平和の為飛行機が墜落する事を望むよ」
「それでも死なないほうに100万賭けるぜ」
「さっさと行けよ」
「本場のS.D.R.楽しんで来いよ」
まったく最高の仲間達だ
「あぁ、じゃまたな」
歩き出し目を閉じる。あぁやっぱりどうしようもない
心に浮かぶのはお前の名前だけ
情けねぇ。素直に待ってて欲しいって言えば、素直に好きだって言えば
ふと、目を開き周りを見る。違う、三流ドラマじゃないけど居る。確かに近くに居る。気のせいの筈が無い
俺があいつの気配や空気に気がつかない筈が無い、間違える筈が無い
やっぱり居た。搭乗ゲートの横で俺だけを見て立っていた
「行ってらっしゃい。」
その言葉は酷く懐かしかった
「湿気た面してんなよ。ちょっと行ってくるだけなんだからよ」
お前には笑ってて欲しいんだよ。表情多いけど笑顔が1番なんだよ
「これ。ちょっと早いけどクリスマスプレゼント。」
そう言って手渡されたのは銀のブレスレット。包みも何も無い剥き出しで
箱のまま放置する俺の性格をわかってるからだろう
「サンキュ、帰ったら何か返す」
「だから笑って待ってろ。俺は俺らしく暴れてくっから、お前らしく笑って待ってろ。Just the way you are,be yourself!」
「……うん。」
やっと笑顔が見れたな
ブレスレットが実は時計だったのは到着直前に気がついた
確実に時間を刻む時刻は親切に既に現地時間になっている
俺はそれをあえて日本時間へと変えた。これであいつが生活してる時間がわかるのだから
毎日が曇り、霧がかかり天気が悪く頭が痛い。でも、さっさと帰らないとな
出発の日の事は重い瞼でわかっている。煙草に火をつけ深く吸い込んだら今日も
窓の隙間の光に煙を吹きかけて、浮かぶお前の笑顔を指でたどって
いつもそうだ、今日もこれから。わかってる何をすべきかなんて
Time fries like an arrow...もう待たせてられねぇよな
朋美とは今年の春に何度目かの再開をした。更に髪が伸びていたが背は変わっていなかった
そして気がつけばまたあの家に俺は居る
ただ、自分で言った2年後の冬になった今俺は迷っていた
何も迷う必要なんて無い筈なのに
「今27だろ・・・更に2年だと29か・・・三十路だろそれ」
思わず笑ってしまう。早いもので出会って10年経つわけだ、そりゃ年もとる
煙草を消すと立ちあがり歩き出す。最愛の人が待つ家へと
「ここに何時間も座ってるなんて。やっぱ何も考えてねぇな、昔の俺は」
溜息混じりに呟くが答えは無い
「ただいま」
その言葉に反応して奥から走ってくる。あ、こけた
「うぅ……。おかえり。」
変わらねぇな何も。だったらもう2度と離したくないなこの日常を
「なぁ今、幸せか?」
「うん。幸せだよ。」
2度とこの笑顔が曇らないように、やっぱり俺は一生お前を護るよ
「朋美」
呼ばれて振り帰るその顔はやっぱりいつも通りで
「結婚しよう」
泣かせるのはこれが最後
錆びた引き出しに深く閉じこめたいろんな色した優しさでした
目まぐるしく変わる日々をいつか見下ろした時に
冬の屋上で少し泣いた僕は正しいと思うよ
冬の日 霜柱 足跡を残した
ザクザクと音を立てながら影踏みした帰り道
冬の日 道端の霞に 心はしゃいだ
真赤な日が顔を照らした
僕がまだ人だった頃・・・