戦略労務第319号(2019/12)

イントロダクション

 今年も残すところあとわずかとなり、冬至前の1年で一番日が短い時期になりました。そして朝晩の寒さも厳しくなって参りました。できればインフルエンザの流行前に予防接種をしておきたいですね。わが家庭菜園ではホウレンソウやタマネギの小さな苗が寒そうにしています。今年最後の「戦略労務」第319号をお送り致します。参考になれば幸いです。

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★事業承継に関して人事制度の重要性

 今回は「事業承継」シリーズの最終回として中小企業白書から離れ、事業承継を行う際の人事制度の重要性について考えてみたいと思います。

 日頃顧客企業に伺いますと、創業社長の圧倒的な影響力によってワンマン経営が行われてきた企業と多く出会います。このような企業においては、「彼はなぜその処遇なのか」「彼女はなぜそんなに評価されるのか」「なぜその賃金なのか」という不明瞭な状況、つまり創業社長の一存で、根拠に乏しいまま処遇や役職、賃金などが決まっているケースが散見されます。

 創業社長の在任中であれば、このような状況下においても社員からの不満は顕在化しにくいのですが、事業を承継する場合、後継者が創業社長の影響力を承継することは難しい(後継者が創業社長と同じ能力を持っているとは限らないし、また能力がすべてではない)ため、事業を承継した途端に社員から不満が噴出することも想定されます。

 そのため事業承継においては、影響力がある創業社長の在任中に人事制度の諸問題を解決するための取り組みを行い、不満となり得る要素を取り除いておく必要があります。 すなわち、創業社長の頭の中にある評価制度や賃金制度を、一つの人事制度という仕組みにしておくことが事業承継の肝であり、それによって後継者の負担が軽減でき、社員の納得感が高まるものと考えています。

 その過程の中で新たに制度を作成したり、見直したりという作業が必要になる場面が出てくると思いますが、その際のポイントとしては次のようなものが考えられます。

 ①不合理な処遇格差の是正
 ②不明瞭な賃金格差の是正
 ③誰から見ても明瞭な制度にすること
 ④資格等級制度があること
 ⑤上記④の元になる評価制度があること

 社員が10人以上であれば、早めに人事制度を明文化することが重要であり、後継者を選別して後継者教育を行うことにより、次世代への事業承継が容易になるものと考えます。

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