戦略労務第277号(2016/6)

イントロダクション

 梅雨の只中ですが降雨量は少なく関東の水瓶にはあまり水が無いようです。何年ぶりかの取水制限となるのでしょうか。舛添都知事さんは辞職の意思を固めたようですね。何事も初期対応が肝心で、労働問題と何ら変わりが有りません。そこで今回は労働問題のうち、解雇について取り上げてみました。「戦略労務」第277号をお届けします。

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★就業規則が従業員に周知されていないと「解雇」には大きなリスクがあります

 民法によれば、期間の定めのない雇用契約について、使用者はいつでも労働者を解雇することができるとされ、雇用契約は解雇通知後2週間を経過すれば終了し、また、解雇に特別な理由は要求されていません。この意味で、使用者は解雇の自由を有しているといえます。

 しかしながら解雇が労働者に与える影響は大きく、生活の基盤を失うことになるため、解雇には合理的な理由が求められ、裁判例により「解雇権濫用法理」が確立されています。解雇権濫用法理とは、合理性、公正性、重大な理由あるいは相当性を欠く解雇を無効とするというものであり、合理的な理由には下記のものが考えられます。(労働基準法では30日前の解雇予告を義務付けています。)

①労働者の人物に由来する事由(労働者の心身について生来的又は後天的な欠陥があり、労働契約上求められている労務の提供を全部又は一部なし得ない場合です。能力不足、勤務成績の不良、職務不適格などが該当します。)
②労働者の行動に由来する事由(労務提供義務違反を主としますが、そのほかに服務規律違反や競業避止義務・秘密保持義務違反なども含まれ、具体的には、勤怠不良、協調性欠如、暴言、不正行為などが該当します。)
③使用者の経営上の必要に基づく場合(整理解雇など)
④ユニオンショップ協定に基づき解雇要求がなされた場合

 上記のような「合理的な理由」に基づき解雇する場合であっても、社会的に相当性を欠く場合には解雇権の濫用としてその解雇は無効になります。
 解雇理由は就業規則等に規定されていなければなりません。就業規則が無い場合、若しくはあっても労働者への周知がされていない場合でも、採用の際に交付する 「労働契約書」や「労働条件通知書」に解雇理由についての記載があればよいのですが、そこまでの記載をすることはまずありません。(労働契約書等の作成及び交付は労働基準法15条で、また、就業規則作成と届出は同法89条に規定されています。)

 そうすると解雇理由は、就業規則が無い場合やあっても周知されていない場合等では、使用者の判断(独断)ということになりかねず、場合によっては裁判沙汰になってしまいます。それを避けるためには、就業規則の届出義務のない、労働者が常時9人未満の事業所であっても、「合理的な解雇理由」を規定した就業規則の作成と労働者全員への周知が必要になるわけです。

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