世にも不思議な話




 世の中には常識では考えられない不思議な事が起こるようです。昨夜我が家の犬ハッピー(柴犬15歳オス)が食後急に苦しそうな声でギャーウン、ギャーウンと鳴くので、今朝K動物病院に連れて行って診てもらったところ、何と釣り針が犬の胃に刺さっているではないか!!
 何で釣り針が入っているのか考えたが、庭の中で鎖につながれていて外に出たり、誰かがえさを投げ入れたりはできない場所なので、全くわからない。
ただ、昨夜我が家の夕食にスーパーで買ってきた魚のカレイを食べて、その残り骨などを犬にあげた。そうです、そのスーパーのカレイに釣り針が入っていたとしか考えられません。
 さて、これからが大変です。手術して胃を切り開き針を取らなければなりません。ただ犬が高齢なため全身麻酔の手術に耐えられるかとうか、・・。全身麻酔だけで死んでしまう犬もいるそうです。手術後の回復ができずに死んでしまう場合もあるとのこと。
 先生といろいろと相談した結果、胃カメラの内視鏡で見て先端のハンドで釣り針をつかんで抜き取るほうが老犬への負担が少ないからということで、内視鏡設備のある伊賀上野のM動物病院を紹介していただきました。ただ、針が刺さっていて抜けない場合はその場で即胃の切開手術だそうです。
 犬のことも心配ですが、恐る恐る3万円ぐらいかかりますか?と聞いたところ「全身麻酔の手術ですから、とてもそんな金額ではすみません」との事。10万持って明日伊賀上野に行ってきます。
 何で犬に釣り針が?
世にも不思議な話です。
       
 その後の経過ですが、翌日仕事を休んで伊賀上野のM動物病院に妻と一緒にいきました。そこで手術前の詳しい説明を聞かせれ、もしかしてもう二度とハッピーの声を聞くことができなくなるかもしれないと妻は涙ぐんでいました。
手術前に釣り針の位置の確認をするため、再度レントゲンを撮りました。しばらくして私達は手術室に呼ばれました。
覚悟をして先生の話をじっと待ちました。
先生は言いました「手術はもうしばらく待ちましょう」
よほど悪いのかな・・・そんな思いが頭に浮かびます。
すると先生は話を続けます「釣り針が移動しています」
「え?」私達は聞き返しました。
先生:「釣り針が胃から腸に移動しています」
「と言う事は?」
先生:「釣り針が胃から外れて、腸に移動したのです。このままうまくいけば自然に出るかもしれません」
「ウンチで出るということですか?」
先生:「その可能性があります。だから手術はしなくても良いかも知れません」
「よっかった!!!」
先生:「ただ、腸に釣り針が刺さるかもしれません。その場合はやはり手術になります。しかし出る可能性は大です」
「よかった・・・」
先生:「ただ、最後に難関があります」
「と言うと?」
先生:「一番狭い場所が難問です。肛門です。そこに刺さる心配があります・・・痛いです・・」
皆さん想像してみてください。抜けないように戻しの付いた鋭い釣り針が肛門の中に刺さったら・・・どんなに痛いか・・。
ジの経験のある私は背筋が凍るほどゾッとしました。しかし死ぬことは無さそうです。
妻と二人でほっとしました。そしてまた家にハッピーを連れて帰り、犬のウンチを注意深く見ている毎日です。
結果はまた報告します。




         その後
 毎朝、犬(ハッピー)のウンチを5mm角ぐらいに分解して釣針が出てこないか見ているのですが、1週間過ぎても見つかりません。
 背中を丸めて痛そうに「グーン」(クーンとギャンの合わさったような)と鳴くので、これはひょっとして、針が腸か肛門に引っかかったかと思い、またO病院に連れて行きました。
 そして透視してもらったところ先生は「針はありません」と言うではありませんか!
そんな馬鹿な、と思い後で調べたら実は、めったにしたことのないおじいちゃんが私の知らない間に犬のウンチを捨ててしまっていたのです。
小さな親切大きな迷惑?毎日毎日犬のウンチを細かく砕いて見ていた私の努力は何だったのでしょうか?

 でも、先生は言いました「前立腺がかなり腫れています」。
レントゲンを見ると普通親指大の犬の前立腺が子供のこぶし程に腫れています。
飼い主に似たのでしょうか?前立腺肥大です。それで痛がって鳴いていたのです。
 そしてまた先生が言いました「目を見てください。瞳が白くもやがかっているでしょ。白内障です」
そう言われて犬の目を覗くようによく見ると確かに白くなっています。言われるまで気が付きませんでした。
「そのうち目が見えなくなります。歩いていても何かにぶつかることがありますよ。進行を抑える薬を出しておきます」
我が家の愛犬ハッピーも15歳。人間で言えば70〜80才でしょうか。人間と同じ様に年寄りになりました。
 1年でも2年でも長く生きていてもらいたいと思って病院を後にしました。前立腺と白内障の高い(保険がない)お薬をいただいて。
家族だものしかたないよな。


         その後の事

我が家には二匹の犬がいました。
 一匹目は白い雑種のメス犬で、平成2年の息子たちが幼稚園の時、四日市の「桜祭り」の会場で、「誰かもらってください」と書かれた箱に入れられた生まれてまだ数ヶ月の真っ白な子犬をもらってきたのです。名前は「桜祭り」だから「さくら」と名付けました。とても賢い犬でした。
 「さくら」は大きくなると毎日世話をしている私より、長男が一番好きなようでした。しかし次男にはあまりなつきませんでした。次男が小さかったため、自分のほうが地位が上だと思っていたようです。



 その翌年、親戚の家の柴犬の子犬が生まれたので見に行ったのが運の尽き?で息子たちが「必ず僕たちが毎日世話をするから!!」と泣き叫び、必ず世話をするという約束で、我が家にオスの子犬を一匹連れて帰ったのですが、案の定3日と持ちませんでした。これが我が家の二匹目の「釣り針騒動」の犬です。名前は次男が「ハッピー」と名付けました。
 この犬は陽気で遊び好きな犬で、次男に良くなつきました。特に野球ボールやテニスボールが好きで、一度口にくわえると絶対に放しませんでした。そのくせ、ほっておくと、私の足元にくわえたボールを落として「また取りっこをしよう」とさそうのです。



 我が家では結局なんでも世話をするのは私の役目となりました。祭りの「金魚すくい」で取ってきた金魚は5〜6年生きて、焼き魚にしても食べれそうなくらい大きくなりました。鯉などは水槽に収まらないくらい大きくなりました。亀もそうですし、ハムスターなどは、すぐに子供を産んで増えすぎて困るので、ペットショップにただで引き取ってもらいました。

 やが15年ほどたって、子供たちも高校生や大学生になったころ、「さくら」がガンになりクリスマスイブの夜、息をひきとりました。私が仕事で帰れない時に、その「さくら」の最後を見取ったのが次男でした。その次男が「俺、獣医になるわ」といった時、優しい子だなと思いました。(しかし、結局は薬学部に入学しましたが)。「さくら」を焼きに行く時長男も大学から帰ってきてみんなで花を添えてお別れをしました。
 そしてその翌年の春、「さくら」の後を追うように「ハッピー」も他界しました。次男も大学生になっていましたがみんなそろってお別れをしました。

 「さくら」は長男、「ハッピー」は次男の成長を見守り、子供たちが家を出て行ってから、その役目?を終えて天国に行ってしまったような気がします。
この家に来て16年間、子供たちの守護神だったのかな?などと思ったりします。