音楽の楽しみ方:歌詞をよくよく咀嚼


 野田洋次郎 

 溢るるほどの偏愛が注がれた作詞。好き好き大好き愛してる。いい具合に。

『閉じた光』(RADWIMPS)
 笑った友が「ちょっくら死んでくるわ」。僕はいつものように左手を「またね」。
 上手いこと出来てるなら、生きてるのは仕方ない。

『me me she』(RADWIMPS)
 「僕が例えば他の人と結ばれたとして 二人の間に命が宿ったとして
 その中にもきっと君の遺伝子もそっと まぎれこんでいるだろう」。
 最低。


 井上秋緒 

 現実味が、嫌なところをついてくる。
 忙殺される腹立たしさの表現は天下一品。

『OH! MY GIRL,OH MY GOD!』(T.M.Revolution)
 「愛に言葉はいらない」から黙れ。

『はじまる波』(the end of genesis T.M.R.evolution turbo type D)
 「愛や恋とは違うものに」「泣きたくなって、だから笑った」。
 可能な限りこすく死んでやろう。

『魔弾〜Der Freischutz〜』(T.M.Revolution)
 「やけに綺麗になってないで」……そりゃあショックだ。

『恋ニモマケズ』(T.M.Revolution)
 宮沢賢治の不朽の名作が、まさかこんなことに。


 一青窈 

 句読点の位置と、人に対する執着加減が、とてもよい具合に落ちている。あと死亡感とか。

『心変わり』(一青窈)
 「とにかく君だけ、に決めた今日かぎり」「心がわりできない」「さよなら、ばいばい」。
 好きな人だからね。困ったことだよ。

『江戸ポルカ』(一青窈)
 「笑う壷が私とは一緒」。大事にならなくても、執着する理由には十分な表現。

『空中ブランコ』(一青窈)
 「誰かを名乗って打ち明けないでね」。ほんとに。
 「一度だけなら死んでしまいたい」。ほんとに。


 ハルイチ(新藤晴一) 

 大変前向きに嫌味な作詞。明るく歌うことでヤバさに気づく巧妙な構造。
 イチャイチャしている歌では、彼氏のへなちょこ具合が良い。

『空想化学少年』(ポルノグラフィティ)
 「これでコンプレックスともお別れ!」……やったあ。

『ニセ彼女』(ポルノグラフィティ)
 「今まで見たこと無いような」傷ついた顔を見せる彼女に
 「このニセモノがぁっ!!」と逆ギレする最高な彼氏の歌。


 槙原敬之 

 素朴でやさしい言葉を使う歌詞、に勘違い。
 特別じゃなくとも、高内包性。やさしい人間は超絶辛辣。

『EACH OTHER』(槙原敬之)
 「君はまだそのことに気づかず 僕に手を振ったのだろうか」。
 「僕はもう君の為に出来ることは何ひとつない」。
 ホーム対岸で元彼と目があっただけで、そこまで言われないといけないのか。なんと恐ろしい。

『THE END OF THE WORLD』(槙原敬之)
 「きっと誰にも見守られない」「絶対誰にも聞こえないように」「幸せのようなもの」。
 どれだけ責める気だ、恐ろしい。

『ordinaly days』(槙原敬之)
 こんな人を好いて好かれるくらいなら、いっそ死ぬほど嫌い合った方が遥かに精神上安穏だろう。


 宇多田ヒカル 

 端的な単語の使い方が、挑戦的で、卓越。
 無視するものとしないもの判断基準が、一番面白い人。

『Can you keep a secret?』(宇多田ヒカル)
 「おしゃべりじゃないと証明してよ」。そんな難しい。

『A.S.A.P.』(宇多田ヒカル)
 私はこれを狼少年だと思ったので、約束するのがとても好き。
 「緊急時以外」「誓います」。……うそー。

『BLUE』(宇多田ヒカル)
 「原稿用紙5、6枚」。しまった。
 「あんたに何がわかるんだい?」「もう何年前の話だい?」。アウト。


 草野正宗 

 程よく焦らず平凡に……だとか。嘘を言わないで下さい。
 伝達意思を疑いたくなる歌詞。難解にラブラブ。

『ジュテーム?』(スピッツ)
 「そんなとこ」。ラブいんだけどなぁ。
 カレーの匂いも、君も大差ない。

『大宮サンセット』(スピッツ)
 「この街で俺以外 君のかわいさを知らない」。
 それで大宮って、ひでぇな。


 立川俊之 

 道徳観念が高い励まし応援歌……に見せかけて他人に厳しい歌。
 落ち込んでいるときに元気を出そうと聞くと余計にへこむ。

『花嫁は何故泣くの』(大事MANブラザーズバンド)
 まぁそう、責めるな。
 私が男だったら、女友達が嫁ぐ暁には「関白宣言」以上に贈りたい。
 残念ながら私は女だが。


 吉井和哉 

 御自身の声質の引き出し方を熟知した作詞。正しい利己主義の在り方に敬服。

『プライマル。』(THE YELLOW MONKEYS)
 「悪いからずっと」。罪悪感と他人の意図の汲み取り。
 「いけそうじゃん」。ものすごい自己嫌悪。


 DECO*27 

 一番好きなボカロP。TV露出なさったからいいよな。
 子宮感のある歌詞と、(笑)の使いどころが絶技。

『弱虫モンブラン』(GUMI)
 「本当だって良いと 思えないの」「モンブランは甘味」。
 絶対にこの人、子宮があると思う。