冬桜


翡翠戯る川面に映る 類い稀なるその黒髪を  梳りつつ何を想ふ
静寂の森に水車回る 太占の老婆紡ぐ言霊 語り聞かすは遥か彼方

人の音せぬ暁に ほのかに夢に見えたまふ
忘れかねつるその姿 そらなることに涙流す

雪の ひそやかに 積もりゆく 君が事
便りもないままに 想いだけ聞こえ来る
花の音 かすかにも 降りゆく 涙さえ
面影一つとも 心から届くるに



翡翠戯る川辺に集う 娘たちは宵を迎えて ささやき交わす夕闇の唄
音色奏づるしなやかなる指 空見上げ冬桜舞い落つる 君が愛せし雪の花

遥か旅ゆくの人に 恋唄馳する黒き瞳
雪の降る夜は術もなく 寒くしあれば如何にしつつか

雪の音 ひそやかに 積もりゆく 君が事
祈るは違う神 馳せるは同じ願いこと
花の音 かすかにも 降りゆく 涙さえ
違う地に果つるとも 彼と共に在り続く



古の 想い人 刻の風 越え逢ふ
日差しは暖かく 眼差し見えつらむ

雪の音 ひそやかに 積もりゆく 君が事
便りもないままに 想いだけ聞こえ来る
花の音 かすかにも 降りゆく 涙さえ
違う地に果つるとも 彼と共に在り続く


 
  記念すべきlubieリクエスト第1号「類い稀なる」……おい(笑)
 lubie様曰く「それだけで頼んだのか……私……」そうですよ、覚えておくように。
 そも散文特有言語じゃないのか。
 
 太占:火を使う占いの一種。鹿などの骨を焼いて占う。
 翡翠戯る:掛詞「水の撥ねる」「カワセミが戯れる」(翡翠はカワセミの別称)。
 
 古語辞典好きだけで、よぅもやったものだ。
 lubie様「ところでカワセミって何(笑)?」