寒暖差と高低差で、完熟の農産品作り



寒暖差と高低差で、完熟の農産品作り



私が、黒石に来て驚いたのは、食材の豊かさと、新鮮な完熟品の香りと味の良さです。


穫り立てのアスパラガスは、ゆでて、塩を振るだけでおいしい。収穫したて、精米したての米もおいしい。りんごは、鳥が突いてしまった「鳥食い」がおいしい。






特に驚いたのが完熟メロンとりんごの「おいらせ」のおいしさです。





昨年までは「完熟メロン」と「古くなって傷んだメロン」との違いがわかりませんでした。しかし、完熟品はずっしりと重たく、置いておくだけで、周辺に香りが立ちこめる。「古いメロン」は、香りがなく、すぐに傷む。





りんごの「おいらせ」は、自重で落ちやすく、日持ちも3日ぐらいで極端に短いけれど、もぎたての完熟品は圧倒的に見た目が立派で食感も最高。







津軽は、このような最高級品を作るのに適した自然環境です。


太平洋と日本海に囲まれ、寒暖差と高低差が大きい豪雪地帯の青森県は、実に多様な農林水産物に恵まれています。何でも獲れて、何でも作れてしまう。


メロンやトウモロコシ、ホタテやホッケなどが有名な北海道。サクランボやラフランス、樹氷などが有名な山形。青森は「北海道と山形の良いとこ取り」です。しかし、「二番なのでだめ」なんです。


「最北」は北海道、東京に「最も近い」日本海側の東北は山形。北海道がなければ、青森が「北の頂点」に立つことができたはず。沖縄に「最南端」の地位を奪われた鹿児島に似ています。


しかし、陸続きの本州の中では、青森県は最北端。そして、黒石は、津軽の中でも「八甲田山麓」という特殊な立地です。


農作物で「津軽」というのはとても強いブランド力があります。これを超えるのは「北海道」と「魚沼」ぐらいしかなく、「山形」や「愛媛」と並ぶぐらいでしょう。


八甲田山麓の沖揚平を持つ「黒石」は、「津軽」の中でも、その立地から別格の存在になる資格があります。


夏の太平洋高気圧から奥羽山脈を越えてきた暑い南東風、冬のシベリア高気圧から日本海を越えてきた豪雪の北西風の影響が、津軽の中でも極端に現れる。その寒暖差と高低差の大きさを生かした「適材適所」の農業ができる。


その一方で、寒暖差と高低差の大きさによる「適材適所」は、良くない面もあります。場所によって農作物の育ちがばらばらになるので、栽培にとても、手間がかかる。大規模化も難しい。


そのため、「津軽・黒石」というくくりにして、少量の最高級品を、売り出すしかないのでしょう。他の大産地の農産品と一緒にされたのでは、価格競争でかないません。それが低所得の原因です。


量ではなく、質で勝負するしかない。


しかし、黒石市は、大消費地の首都圏や関西圏から遠く離れている。「黒石市」も無名の存在。完熟の高級品に特化して、通販や直接取引での販路を確保するのが良いのでしょう。


黒石から大阪に送り出す「修学旅行生」に完熟品を手土産に持たせれば、黒石の農産物の力強い宣伝になるでしょう。完熟品は日持ちしないので、手渡しが最善です。


「店では売っていないもの」。これほど大阪人やお金持ちが喜ぶ土産品はありません。



大阪や京都などの関西圏は、だしの文化です。特に、大阪人は、見た目の良さよりも、味の良さを好む。そして、津軽衆のようなおしゃべりですから、「本当においしい」と感じたら、あちこちで宣伝してくれます。


ただ、少量多品種では、都会に出荷するのが難しい。


完熟の最高級品を通信販売などで売るためには、とても遠回りのやり方ですけれど、「急がば回れ瀬田の唐橋」「将を射んと欲すればまず馬を射よ」という感じで、地道に「津軽・黒石」ブランドを浸透させていくしかないのでしょう。


あとは、「農産品の出荷」とは逆で、「都会から観光客として来てもらう」のが必要です。観光客に、旬の食材を駆使した料理を振る舞う。


津軽三味線などの芸術の基盤もありますから、京都や金沢の料亭のようなことを、黒石ならばできます。


他所のまねをしなくても、郷土の良さを追究するだけで、十分です。「売れるもの」よりも「食べてもらいたいもの」を作っていれば、必ず、認められるでしょう。


ぶどうも、スチューベンは、巨峰やシャインマスカットに並ぶおいしさです。「値段が安い」から「安物」と勘違いされる悪循環に陥っているのが、とても悔しいです。






黒石に来る前に、「青森産りんご」の登録商標の出願をしておきました。


地域のために使える方法があれば、熊本県の「くまモン」のように無償公開したいと思います。