11.探索 |
神封じの結界内は、閉じた――今ではもう壊れているが――空間というか地域なだけあって、結界外よりも狭い。 けれど、それでも、広い。 そんなところで、たった一人の人間を探すということは――二人連れなので正確には二人だが、探しているのはそのうちの片方だ――どんなにか大変なことだろうかと嘆息したものだった。 人間は竜よりも圧倒的に数が多いから尚更だ。 それでも、 その人――彼女は、身体こそ人間であるものの、その裡に秘めている力は人間のそれではなく、だからその力を辿ればよかった。 実際彼女の居場所はすぐにわかった。 半島の北、 とある喫茶店でウェイトレスのアルバイトをしていた彼女は、はるばる結界外から訪ねてきたフィリアに、あっさりと、少しも深く考えずに「バイトがあるから駄目」とのたまった。 あまりの呆気なさにがっくりと項垂れるフィリアをさすがに気の毒に思ったのか思わなかったのかそれは良く判らなかったが、とにかく彼女は彼女に代わる人物を紹介してくれた。 彼女―― ただし現在は旅の空。結界内にいることだけは確かだが、しかしそれ以外はわからない。 相手が相手なだけに食い下がることも出来ず、結局フィリアは彼女の妹に当たることにした。 しかし、いかにスィーフィード・ナイトの妹といえど、しょせんは人間。体力や持つ力は竜に遠く及ばない。彼女が例外だったのだ。人間の身でありながら、 だが断られてしまっては、仕方ない。スィーフィード・ナイトの妹なら、それなりに力を持った人間なのだろう。 妹が世界を救える力を持っていないと判断できたその時は、改めて彼女に頼みに行こう。 フィリアは自分にそう言い聞かせ、さっそく彼女の妹――リナ=インバースの現在の居場所とリナに関する情報を集めた。 世界は広い。 結界内は世界にはかなわないが、それでも広い。 ところがどっこい――リナ=インバースの居場所はすぐに知れた。 おまけに、かなりの力を持った魔道士であるらしい――姉と比べてどうなのか、はともかく。 半島の南、沿岸諸国連合。 人混みでごった返す港町に、目的の二人組をようやっと見つけて、フィリアは安堵のため息をついた。 見つけたはいいが、これから彼女の力を試さなくてはならない。 さて、どうしたものか――。 とりあえず、フィリアは気づかれないよう二人の跡をつけることにした。 |
2006.03.28 |