07.真夜中




 真夜中に、目が覚めた。

 ……パチッ

 小さく火が燃える音に、瞼をふるわせる。毛布の中から手を出して擦った。
 瞼を開き、そして身じろぐ。
 体と毛布の間の隙間に、冷たい空気が入り込んだ。


「……どうした、リナ」


 そっと、声を掛けられる。
 それこそ毎日聞いている、聞き慣れた相棒の声。
 やわらかな、声だ。

 声のした方に視線を向ける。
 リナの向かい、火の向こうに剣を側に座るガウリイが居る。


「まだ夜明けには遠いぞ」
「……ん」


 それは見れば分かる。ただ、目が覚めただけだ。


「オレは大丈夫だから。だから、リナは寝てていいぞ。……な?」


 優しい声。
 優しい言葉。
 火の向こう、火が照らす、優しく細められた蒼い瞳。

 なんとなく、なんとなくだけれど、気づいている。

 優しいだけじゃない、もっと別の、甘くて激しい、感情――含んだ視線。


「……ん、そうする」


 こくり肯いて、毛布を引き寄せる。目蓋を閉じた。

 なんとなく、なんとなくだけれど、気づいている。

 けれどまだ、今はまだ。
 あともう少し、知らないふり。




2005.5.9