06.湖



氷の矢フリーズ・アロー!」


 旅の途中立ち寄った湖のほとりで、半魚人の群れに出くわした。


「〜〜〜〜だからっ、水辺って嫌いなのよっっっ!」

 そこは彼らの縄張りだったらしく、襲い掛かってきた彼らを呪文で氷漬けにする合間に、リナが忌々しげに叫ぶ。
 しかし、とオレは思う。
 水辺が嫌いとは一度も聞いた事がない。
 そしてまたしかし、と思う。
 そんなこと言ったら一緒に氷漬けにされかねないので、そう思ったことは内緒にしよう、と。

「あああもう鬱陶しいっ」

 それには同感だ。
 オレは黙って襲い掛かる半魚人を薙ぎ払う。鱗のせいで上手く切れない。
 何匹目か忘れた半魚人を薙ぎ払うと、リナが叫んだ。

「ガウリイ!」

 呪文だ。それも広範囲。
 オレはすぐさまリナの背後に移動する。

氷窟蔦ヴァン・レイルっ!」

 地面に手をついたリナの手から氷の蔦が涼しい音と共に地面をつたい、半魚人の群れをまとめて氷漬けにした。
 かろうじて氷の蔦から逃れた半魚人達が逃げ帰っていくのを見て、オレは一息ついた。剣を鞘に戻す。

「あーもう、さぶさぶ。氷漬けにしないで焼いちゃえばよかったかも」

 立ち上がったリナが、魔法の氷の冷気に身を震わせる。
 秋で夕方で気温が下がっているのも相まって、寒がりのリナには辛いらしい。

「リナ、風邪引くぞ。ここを離れよう」
「待って。……ガウリイ、氷漬けの半魚人一匹だけ、斬れる?」
「まぁ、斬れんことはないが……どうするんだ?」
「食べんのよ」

 成る程納得。
 転んでもタダでは起きない、さすがリナだ。

「ああ、一匹じゃなくて二匹にしとく? せっかくだし」


 そして半魚人二匹が、その日のオレ達の晩御飯になった。




2005.1.3