05.信頼




 信頼と信用は違う、と彼女は言う。

「あたし、あんたのことは信頼してるけど、信用してるかって言えばそーでもないのよね」

 ………………それは、どういう意味だろうか。
 あっけらかんとした彼女の言い草に、ガウリイは真意を掴み損ねて開きかけた口を閉じた。
 一言でも言い方を間違えれば、彼女の機嫌を損ねさせてしまう。それは避けたい。被害を受けるのは他の誰でもなく彼自身である。
 その顔があまりにも情けなく見えたのか、リナはぷっと吹き出した。

「やーね、なんて顔してんのよ。前に言ったでしょ、あたし人を見る眼は持ってるつもりだ、って。そーいうのとは違うの」

 ………………どういう意味だろう。
 ガウリイは更に首をかしげた。

「信頼は“信じて頼りにすること”だけど、信用は“確かだと信ずること”を言うのよ。
 例えば、あたしがあんたに買い物を頼むとするじゃない? あんたとしては言われたとおりに買おうとするんでしょうけど、あたしは絶対無理だと思うわね」
「………………」

 やはり何とも言えなくて、ガウリイはとりあえず黙っていることにした。




2006.3.9