02.疚しい気持ち |
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………別に、あたしはなんっっっにも、悪い事はしていない。 断じて、ないのである。 どんなにしつこくしつこくガウリイに怒られても、あたしは悪い事はしていないのだから、あたしは悪くない。 悪くない。うん、悪くない。 そーよ、悪くないわよ。 あたしが悪くないって言ったら、悪くないんだってば。 あたしが決めた。そう決めた。 ……だから、あたしは悪くないんだってば。 「…………………リナ。」 なのに、なんでガウリイに『いかにも心配してましたー』とか、『何度も言ってるのにー』とか、そんなフンイキで腕を組んで仁王立ちされていても、後ろめたく感じる必要性は全くないのにっ! ……どおして、こんなに気が咎めるっていうか、後ろめたいって言うか、逃げ出したくなるんだ、あたしはっっ! 「……きっ、きっぐうねぇ〜ガウリイ、どぉしたのよこんな夜中に」 「お前さんこそ、『こんな夜中に』どこに何をしに行ってたんだ?」 「やあね〜、そんなの乙女の秘密よ、ひ・み・つ!」 「………へぇ?」 ……うぅっ。 おにょれガウリイっ、普段のほほーんとクラゲしてるくせに、ことこの事になると何やら怖い……いやいやっ、いつもの雰囲気じゃなくなるんだから、困ったもんである。 この雰囲気が悪いのだ。 ……ああっ、はやく宿に戻って眠りたいっ。 夜更かしは美容の大敵なのよっっ! 「……だったら、最初っから盗賊いぢめになんぞ行かないで、さっさと寝てればいいのに……」 「うっさいわね、あたし別に盗賊いぢめに行ったなんて言ってないじゃないのっ!」 「じゃあそのマントの下のやたらでかいふくらみは何なんだ?」 「はっ」 し、しまったっ! そういえば今日襲撃した盗賊団は、大きな宝物を溜め込まない代わりに、レティディウスの金貨やら宝石なんやらを一杯溜め込んでいて、それらを持って帰ろうとしたらいつもより大きな荷物になってしまったのだ。 一応マントの下に隠しておいたのだが……この暗闇の中でも、視力のいいガウリイにはばっちり見えていたらしい。 ほぅ、とどこかで梟が鳴いた。 「………………あのなぁ、リナ」 「……なによ」 はあ、とガウリイがため息をつく。 あたしのガウリイに対する後ろめたさやらが増幅する。 ううううう、なんでだ、なんでだあたし、なんでこんな疚しい気持ちになるんだ、あたしーっ! これ以上ガウリイの姿を見ていられなくなって、あたしは明後日の方向に目をそらす。 ああ、リナ=インバースともあろうものが、たかがガウリイくらいに情けない。 情けない、けど、後ろめたさはなくならない。 ――あたしにどーしろっちゅうのだ。 ぽん、と大きな手が頭の上に置かれて、くしゃりと撫でた。 「……まぁ、何ともなかったんなら、いいさ」 「当たり前でしょ、あたしはリナ=インバースよ?」 目をそらしたまま胸をはってそう言うと、はあ、と肩を落としてため息をもう一つ。 「……ああ、そうだな」 大きな手の感触を頭に感じながら、どうしてあたしがこんな気持ちになるんだろうと、思った。 |
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2004.10.18 |