17.血の続きっぽい感じ。 15.乾
彰子が眠りにつくのは結構遅い。 何故かと言えば、毎晩夜警に出かける昌浩を待っているからである。 夜更かしは美容の大敵――とは、昔からよく言うけれど。 ついでに、昌浩からも物の怪からも天一からも玄武や太陰からも、早く寝るように、と言われるのだけれど。 待っている間に眠気にたえきれず眠ってしまう、なんてことも良くあることだから、自分でもどうかとたまに思うのだけれど。 それでもやっぱり、京中を歩き回ってきた昌浩に「おかえりなさい」と言いたいから、彰子は彼を待つのをやめない。 その晩の昌浩は、珍しく早く帰ってきた。 土塀を乗り越え、軽やかに駆けよる昌浩に、彰子は微笑んだ。 「おかえりなさい、昌浩、もっくん」 「ただいま、彰子」 「おー」 夜闇に紛れるように選んだ暗い色彩の狩衣は、今夜は汚れたり切れたりしていない。 ほっと息をつく。 ついて、首をかしげた。眉根を寄せる。 「? どうした、彰子」 「うん……」 室内に入る昌浩を追って、彰子も入る。後ろ手に妻戸を閉める。 きょとん、とした顔を見上げて――いつのまにかこんなに身長差が出来てしまったのか――彰子は顔を曇らせた。 「昌浩、血が付いているわ」 ついと手を挙げて、その頬に寄せる。とたんに昌浩の顔が赤くなった。 「ええ? ……って、ああこれ、大丈夫だよもう乾いてるし……!」 「ほんとに?」 悪いと思いつつもそうっと、赤く走った筋に触って、はなす。 確かに血は付かない。 「……………気をつけてね?」 「……う、うん。わかった」 やばいオチがない……ッ!(爆)
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