41.物の怪






 犬か猫のような体躯。
 紅い瞳。
 白い毛並み。
 長い尻尾。

 物の怪のもっくんは、動物のような姿かたちをしている。

 犬と言うには小さくて、猫と言うには大きい。
 紅い瞳は夕焼けを閉じ込めたよう。
 長い尻尾はぱたぱた揺れて、ついつかまえてみたくなる。
 白い毛並みはとても温かそうだ。


「………………。」


 そういえば以前に、昌浩が物の怪で襟巻きをしていた。
 とても温かそうで、内心いいなあと思ったのは物の怪に内緒だ。


「どうした? 彰子」


 視線に気づいた物の怪が訊ねてくるのを、笑って誤魔化す。
 誤魔化して、


「うをっ?」


 ひょいと抱え上げて、首に巻いてみた。
 うん、やっぱりあったかい。


「なんだなんだ、どうしたんだ急に」
「もっくんてあったかいのね」
「いや彰子、答えになってないぞ」
「いいの」
「いいの、って俺は襟巻きと違うぞ」
「こんなにあったかいのに?」
「それは横に置いといてだな」


 文句をいいつつも、襟巻きになった状態から逃げようとしない。

 やっぱり物の怪は、あったかくて優しい。







「……何してるの?」

 声がして見ると、なにやら複雑そうな表情をした昌浩が立っていた。











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