それは、おもいで。









39.思い出










「あ、これ懐かしいなぁ」

 黙々と溜まっていた写真をアルバムに整理していた昌浩の声に、円卓の向こうにいた紅蓮は彼を振り返った。
 見れば、昌浩は新しいアルバムの整理そっちのけで、昔のアルバムをいつの間にか取り出して見入っている。

「…手が止まってるぞ」
「あ、ごめん。でもついさ、懐かしくて」

 おお、これは成兄と昌兄だ若いなー、今も若いけど、あ、俺と彰子だいつのだろう?
 紅蓮の金の瞳が思わず半眼になったが、昌浩は気にした風もない。
 紅蓮は仕方なく洗濯物をたたむ手を止めて、円卓に頬杖をついてアルバムを覗き込んだ。

 安倍家のアルバム。
 写真に写っているのは主に子供達で、最近になると昌浩が多い。

 ふと、昌浩は首を傾げた。

「そういえばさ、十二神将って写るの?」
「写真にか? …さぁ、写るんじゃないのか」
「そうなんだ?」
「人型をとっていれば完全に写るだろうな。そうでなけりゃ……まぁ、見鬼があれば写っているのが見えるんじゃないのか」
「ふうん……そっか」

 呟いて、アルバムのページをめくる。
 そういえば、数ある写真の中に十二神将達は写っていない。写っているとすれば、人型を取っているときのみのものばかりだ。
 人型をとっていれば何の不自然もないのだが、人型をとる神将は少ないので、それは仕方のない事なのかもしれない。
 でも神将達だって家族なのに、と眉をしかめた昌浩の頭を、紅蓮はぽんぽんと撫でた。本当に、何を考えているのかが良く顔に出る奴である。

「…あ、これ、俺? と……」

 アルバムのページをめくっていた昌浩の手が止まる。
 赤ん坊の頃の昌浩だ。日当たりの良い縁側で気持ち良さそうに寝入っている。
 ――そしてそのかたわらに、片膝を立てて座る異形の青年。人型をとることの少なかった頃の、紅蓮の姿。
 眠る嬰児みどりごを、優しく、見守るように。

「……写るんだね、十二神将」
「……だな。ていうか、誰だこれ撮ったの。…晴明か?」
「……じい様なんじゃないかなぁ」

 なんとなく温かい気持ちで、昌浩はアルバムのページをめくった。














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