22. あいまいな記憶 |
|||
「ねえ、聞いてるの?」 化粧のけばけばした女が、しつこく話し掛けてきている。 …えーと、…………誰だっけ? 「んもう、失礼ね。アタシは同じゼミのシェシィよ。忘れちゃったの?」 疑問が顔に出ていたらしい。 忘れたのかと責められても、覚えていないんだから仕方ない。 「ねえ、ガウリイも来ない? アナタ、いつもコンパに出ないでしょ。たまには出ない? ほら、アタシとかも出るし」 「あっ、何シェシィ、ガウリイ誘ってるの?」 また別の女が出てきた。 シェ……なんとかという女よりも化粧は酷くないが、それでも同類。 名前は………やっぱり覚えてない。 「ガウリイが来るなら、あたし今日行こっかなあ。来るんでしょ?」 「いや」 そう言うと、女二人はええ〜っと叫んだ。 「いいじゃないのよ、行きましょうよ。それとも別に約束でもあるの?」 「ああ」 「……誰と? あっ、アナタと仲のいい……ゼルディガス?さんとか?」 「いや、ゼルじゃなくて……」 「もしかして、彼女?」 頷くと、再び二人が叫んだ。 するとその叫び声につられてわらわらと他の女達が寄ってくる。 どこかで見たことがあるような気もするが……やっぱり覚えてない。 「うっそマジ!? いたんだ彼女!」 「あ、私知ってる! 高校の制服着てる子と一緒にいるの見たことある!」 「えええ、そうなの!?」 一気に騒がしくなった女集団から、オレは悟られないように遠ざかる。 最初のシェ……なんとかという女も、そこの金髪の女も、どうやってもオレの記憶に残らない。 残っても、見たことがある気がする、というあいまいなものばかりだ。 リナを想う。 初めて会ったときから、彼女は鮮明にオレの心に焼き付いている。 女集団から完全に遠ざかって、オレはリナに会うために歩き出した。 |
|||
ガウリイはリナのことだけは覚えているのです。 |