17. 予定調和 |
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どうも最近、この男の元気がない。 2週間ほど前からだろうか。ため息をつく回数が多くなった。 携帯電話の画面を力なく見つめる姿が多くなった。 はっきり言おう。 鬱陶しい。 聞いているだけでこちらの気分が下がるため息を向かいに聞いて、ゼルガディスもため息をついた。 「…ガウリイ」 「……ん〜、なんだ、ゼル」 「鬱陶しい。ため息をつくなら余所でつけ」 読んでいた本のページに栞をはさんで閉じ、向かいに座る親友を睨む。 大体この男は何故ここにいるのだ。 活字など睡眠薬にしかならないこの男にとって、図書館はベッドそのものだろう。 いるならいるで、眠っていてくれればとりあえず邪魔にはならないのだから、わざわざ起きて鬱陶しいため息を聞かせてくる必要もない。 「……暇なんだよ」 「だったらリナといればいいだろう。暇だからといって野朗のところに来るな鬱陶しい」 「……冷たい」 「何とでも言え。大体リナはどうした。最近会っていないのか」 おそらく会っていないのだろう。 どうやらそれは当たっていたらしい。 ガウリイは頬杖をついて窓の外を見やり、再びため息をついた。 「……最近、どーも予定が合わないんだ、リナと」 ああそうかい。 そんなふうに呟きたくなるのを堪えて、ゼルガディスは無言で続きを促す。 「それで2週間くらい、ずっとリナと会ってないんだよ〜」 項垂れた犬の耳や尻尾が幻に見えそうな風情で、テーブルに突っ伏す。 ああ鬱陶しい。 「電話とかは出来るんだけどな、やっぱり直に会いたくて」 「……ああそうかい」 ついに呟きを声に出して、ゼルガディスはため息をついた。 どうにかしてくれ、この男を。 この男の恋人である少女を思い浮かべて、眉をしかめる。 トラブルメイカーな彼女に救いを求める感情を持ったのは、これが初めてだ。 ふいに、恋人の名前を沈鬱に呟いていたガウリイの表情が変わった。 慌ててそばにあった鞄をひっつかみ、手を入れる。 メールが着たらしい。携帯電話を取り出す。 携帯電話の画面を見つめていた表情が一気に浮上し、慌てて出口に向かっていく親友をやれやれと見送って、ゼルガディスは本のページを開いた。 |
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ゼルガディス視点。 |