02. リセット












 ぶちんっ、という音がした。


「………………あ。」
「……っあ゛――――――――ッ!?」

 気がついたときには、時既に遅し。
 テレビの画面はブラックアウトしていて、見えるのは画面に映る部屋の景色のみ。

 慌ててコントローラーを操作してみるが、本元から駄目とくればどうしようもない。

「ちょっとガウリイっ! あんた一体ど――してくれんのよぉぉッッ!」

 仕方がないので、リナはコントローラーを放り出し、お楽しみの邪魔をしてくれた張本人に食って掛かった。
 対するとんでもないことをしでかしてくれた不届き者――ガウリイは、食って掛かってきたリナに動じる様子もなく、のほほんと――それでもやっぱり少しは罪悪感があるのか、困った表情で――頬をポリポリと掻いていた。

「え、あ―――……………すまん。」
「すまんじゃないでしょ――ッ!? どーしてくれんのよっ、もうすぐでクリアできたのにぃぃぃぃいっ!」

 勢いでガウリイの胸倉を掴んだりナは、そのまま力任せに前後に身体を揺さ振る。
 ………その細い腕の、どこにそんな力があるのかは、乙女の秘密というヤツである。



 六月の最初の日曜日。
 連日降り続く雨に、退屈が嫌いなリナは、雨の中ガウリイの家に押しかけた。

 お目当てのものは―――テレビゲーム。
 リナは朝早くから押しかけてきて、昼食などの休憩以外では、ずーっとゲームをしていたのだった。


「あ゛――もうっ、何てことすんのよー!? あんたあたしの今日一日の努力を無駄にする気ッ!?」
「だから、すまんって……」
「すまんで済んだら警察なんていらないのよッ!? 判るッ!? バカバカアホクラゲっ!」

 怒りに任せてぶんぶんと指差した先には、抜けたコンセント。
 抜けた原因は、言わずもがな、ガウリイで。
 せっかく来たのに、リナはゲームに夢中で、少しも相手をしてくれない。何の悪戯心がなかったとは、言い切れない……が。

「たっ、だから、わざとじゃないんだって」
「わざとだったら今頃部屋追い出してるわよッ!」
「って、ここはオレの部屋」
「どやかましいッ! なんとかしなさいよ――ッ!」


「…わかった。」
「へ?」

 不意に、すっとガウリイの身体が遠ざかった。
 ガウリイはそのまま壁に向かって歩いて、しゃがみ込み抜けていたコンセントを元にもどす。


「なんとかしてやるよ」













 画面の中で、ラスボスが倒れた。

 反対に、立っているのはプレイヤーの『リナ』。

「〜〜〜〜っ、ちょっとっ!」
「んー?」

 ふう、と一息ついて、ガウリイはコントローラーを床に置いた。
 隣には膝と手をついて身を乗り出し、画面を食い入るように見つめていたリナ。

「あんた、このゲームまだクリアしてなかったんじゃなかったの!?」
「あー。リナの見てたから、なんとなく倒し方が判ったんだ」
「はぁ!?」

 テレビのスピーカーからエンディングの陽気な音楽が流れ始め、スタッフの表示が流れていく。

「ほれ、なんとかしたぞ」
「……………」

 振り返ると、どこか満足そうなガウリイの顔。

「……………………なんっか違う」
「へ?」




 きょとんとした表情になったガウリイを尻目に、リナはゲームカセットの入った入れ物をがさごそと探り始める。


「ガウリイ、格闘ゲームで勝負よッ!」



―――かくて、終わりそうにない二人の勝負が始まった。













現代版なふたりそのに。
01の続き?
いったいどーいうゲームなんだろう…





プリーズ ブラウザバック。