免震ハウス株式会社

参考プラン

 ■設計上の注意点

  従来の耐震で設計できる建物なら、免震でも設計できます。
  ただし、プランの善し悪しによって、コストが変わってきます。
  シンプルでスッキリしたプランだと免震装置の数も、太い梁の数も少なく合理的な設計ができます。 
  しかし、壁が雁行していたり、斜めになっていたりすると、余分なコストが掛かることになります。
  設計上で配慮するポイントを以下に挙げます。
  ●間取りは910×910mmのメッシュに沿って配置する。または1000×1000mmのメッシュでも良い。
  ●壁および柱はできるだけ一直線上に配置し、雁行を避ける。
  ●二階建ての場合は、一階と二階の壁・柱のラインをできるだけ一致させる。
 
   二階建てで一階に広いLDKを設けた場合、二階の壁や柱を受ける柱が一階に無いとぃった間取りをしばしば見かけます。
 そのようなプランでも確認申請を取って建築することはできます。しかし、地震が来たら必ず大きな被害を受けます。
 「大丈夫です。建築できます」という建築業者の人がいますが、それは”確認申請が取れる”と言う意味で”地震が来ても大丈夫”ということではありません。
 建築関係の人でも、構造に関してしっかりと勉強していて的確なアドバイスができる人は少ないようです。
 従来の耐震工法では、二階建てまで構造計算が不要です。このため構造の安全が十分に確認されないまま建設されてしまいます。
 免震構法では、構造計算を行って設計します。さらに、確認申請時に構造計算適合性判定を受けなければならないので、二重三重の安全性が確保されます。
 
 
 ■平屋建てのプラン 
  平屋は免震建物の理想的なプランです。
  免震にすると地震時の安全性は
格段に向上します。しかし、暴風で動いてしまう恐れがあります。
  平屋では、暴風時の風圧を受け難いので理想的といえます。
  平屋の場合は、、柱軸力が小さいので、どの様なプランでも免震装置の数は大きく変わらないので、合理的な設計ができます。

■平屋プランNo.01  −終の棲家−   平面図
 

  建築面積 55.7m(16.9坪)
        幅4.5間×奥行き3.75間

 最初のプランは、必要最小限の機能を追求しました。
 参考にしたのは、建築家、吉村順三氏の初期の作品です。
 床面積で55mですが、LDKは12.5畳です。吉村氏は、リビングは正方形で12.5畳が最も”気持ちがいい”広さと言っています。
 台所は4畳弱で面積的には十分だと思いますが、出入り口の関係で食器棚が狭くなっています。
 寝室は8畳に2畳のクロゼットがついているので、まずまずの広さだと思います。
 各部屋は狭くないスペースが確保されていて、必要にして十分だと考えます。
 収納スペースが少ない問題は、小屋裏収納を設けることで解決できます。
 子供たちが独立して夫婦2人で暮らすことを想定していますので、”終の棲家”としました。
吉村順三氏の原案
 (床面積53.46m2)
    南面の室内パース 
 
 南面には大きな窓を設けたいですが、地震に弱くなるので難しいところです。特に二階建てでは南面の壁量の確保に苦労します。
 平屋では、耐震壁が少なくても大丈夫なので、大きな窓を設けることも可能です。

 
東面の室内パース
 
    北面の室内パース

 免震のため玄関まわりの高低差の設計は十分注意する必要があります。
 標準図等に表すと問題ないように見えますが、実際の敷地に合わせるに苦労します。

※吉村順三氏の原案では、寝室が縦長の9畳になっていて使い易そうです。しかし、トイレが洗面所と一緒では使いにくいので、独立させました。
吉村氏の原案に近いプラン
 
  吉村順三氏の原案ではリビングに暖炉が付いています。氏が設計した住宅の多くに暖炉が設けられていて、それもまた魅力ですが、ここでは省略しました。薪が手軽に入手できる環境なら暖炉や薪ストーブを設けるのが良いですね。石油ストーブよりエコロジーですから。
 原案は、1966年に「分譲地に建つ小住宅」として設計されたものです。風呂場や台所、洗面所などの設備機器のスペースが現在ではやや狭いと考えます。上記では、原案より奥行きを27cm広く取っています。
 また、原案では、台所とリビングが一体になっています。今年(2010年)は記録的な猛暑でしたが、今後も夏場はクーラーが欠かせなくなりそうです。ところで、台所は夏でも火を使いますので、台所とリビングが一体になっていると極めて冷房効果が悪くなります。また、台所の油煙がどうしてもリビングに流れてしまいます。
 このため台所は独立して設けるのが良いと考えます。また、台所は玄関とリビングの両方に出入り口を設けると動線が良くなりますが、冷蔵庫と食器棚を置くスペースが無くなってしまいます。
 これらの問題を解決するためには、もう少し広いスペースが必要かも知れません。
 
【参考資料】
 吉村順三のデイテール −住宅を矩計で考える 、吉村順三・宮脇 檀著、彰国社刊
■2階建てのプラン 
  敷地が狭い場合には、2階建てにして土地を有効に利用することになります。
  2階建ての場合は、最初に述べたように耐震性に十分配慮する必要があります。
  これは免震場合でも同じで、構造的に十分配慮した計画を行うことがコストダウンに繋がります。
 ■2階建てプランNo.02  −片流れの屋根−

 外観のパース

 No.01は、夫婦2人の必要最小限の家でしたが、これに2人の子供の部屋を2階に設けたプランです。
 2階建ての場合、外観のデザインがポイントになります。 ここでは、片流れの屋根にしました。参考にしたのは、例によって吉村順三氏の軽井沢の山荘です。
 デザイン的には悪くはないと思いますが、2階の部屋の南面に窓が取れないことが難点です。1階の屋根部分をベランダにすることも考えられます。

参考プラン 

    平面図
 

  建築面積59.6m(19坪)
        幅4.5間×奥行き4.25間

   1階   59.6m2
   2階   33.3m2
   合計   92.8m2

 平面プランの基本形は、No.01の平屋のプランです。No.01は必要最小限の機能を追求したので、階段を設けるためには奥行きを少し広げる必要がありました。
 キッチンは少し広くなり、玄関とリビングの両方に出入り口があり、動線が良くなりました。寝室は少し狭くなりました。トイレを階段したに設けましたが、天井が低いのが難点です。


























 2階は、5畳と7畳の洋室を子供用に設けました。それぞれに1.5畳のクロゼットが付いているので、まずまずの広さだと思います。
 さらに、物入れを1.5畳設けていますが、物入れの奥に小屋裏収納を付け加えることも可能です。
 トイレを階段の上に設けましたが、このため階段の天井がやや低いかも知れません。
 2階のトイレは、有れば便利ですが、掃除も大変だし、夫婦の寝室が1階なので無くても良いかもしれません。





 

内部の鳥瞰図

 部屋のスペースは、家具等を入れてみないと分かりません。
 最近の建築用CADは良くできています。建設後のイメージを大変分かり易く表現してくれます。
 ■2階建てのプラン(その2) 
  試設計例として示したプランのバリエーションです。
  免震ARMORでは、構造的に建物の全周に縁側のような"跳ね出し"が必要になります。
  そこで、南側を縁側として910mm跳ね出して、外壁で囲っています。
  跳ね出しの上には耐震壁を設けることができません。その代わり、全面開口として大きな窓を設置できます。
  耐力壁は、縁側とリビングの境および縁側とダイニングの境に設置します。
  耐力壁は壁にして塞ぐ必要はないので、 筋交いを"あらわし"にすることが出ます。
  筋交いは、例えば柱と同じ太さで×に入れたり/に入れることができます。またはステンレスの丸棒を用いる
  こともできます。

 
   ■1階の鳥瞰図 
  
  左図は、試設計例のバリエーションの1階の鳥瞰平面図です。
  ・ 建築面積   67.1 m2 (20.3坪)
  ・ 1階床面積  65.4 m2
  ・ 2階床面積  59.6 m2
  ・ 延べ面積  125.0 m2 (37.8坪)
   ■南西から見たパース 
  
  左図は、南西方向からのパースです。南面いっぱいに窓を
  設けています。
  何面の跳ね出しを縁側として内部空間にしています。



  下図は、元のプランで跳ね出しを濡れ縁としています。


            元のプラン
   ■西側のパース 
  
  左図は、西面をやや下から見上げた図になります。
  東側の張り出しは、910mmになります。また、北側側は玄関で
  す。
  跳ね出しの上端は地盤から約75cm、下端は50cmになります。
 
 ■平屋のプラン(その2) 
  
  少しゆとりを持った平屋のプランです。玄関の土間にデーブルをおいて、隣人や友人との憩いの場に、
  と考えました。
  土間から、中庭に出ることができます。
  また、リビングと寝室から中庭に続く濡れ縁を跳ね出しを利用して大きくとりました。
  跳ね出しの仕上げは、石張りにしてみました。
 
 
   ■1階の鳥瞰図 
  
  左図は、試設計例のバリエーションの1階の鳥瞰平面図です。
 
         ■広い濡れ縁 
  
  「免震AEMOR」の特徴は、建物周囲に縁側のような跳ね出しが
  必要となることですが、その特徴を積極的に表に出した意匠に
  したいと考えます。
 
   ■中庭まわりのパース 
  
  和風住宅の特徴は、室内から廊下、縁側、庭へと続く空間構成
  が途切れなく連続していることだと云います、
  そのためには、建物だけではなく庭も含めた設計が必要です。
  この話は、長くなりますので、あらためていずれどかで・・・。