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うそつき日記  完結篇


 

mはだんだんfを忘れていく

fもだんだんmを忘れていく

距離が遠くなればなるほど

こころも離れていく



mの住む埋立地には行ったことがない

さびしい運河に沿った道

駅の近くにある小さな公園

電話しながらmが歩いていく

暗い街路灯

東京湾の匂い

コンビニ、工場、倉庫群

運河は淀んでいて流れない

橋を渡り、部屋にもどるm



mの住む埋立地のことはよく知らない

いつかはそこへ行くこともあるだろう

そう思っていたのに

行かなかった



東京湾に沈む夕日を

自転車に乗って

子どもたちが追いかける

潮の匂いのする

そういう場所だと

思っていよう

うそかもしれないし

そうかもしれない

でも

そこにいるmはもう

fのmじゃない

mはf'のところへ帰る

fはm'に電話をかける



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