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深  夜  俳  徊  集 '98年版


子どもより親が大事だ桜桃忌  [98/6/24]

五月闇 何度かけても留守電さ  [98/6/26]

六月を綺麗な風の吹くことよ  子規 [98/6/28]

紫陽花やきのふの誠けふの嘘  子規 [98/6/30]

ソーダ水言譯ばかりきかされぬ  楸邨 [98/7/2]

金亀子擲つ闇の深さかな  虚子 [98/7/10]

氷菓融けてこの時我ら男女なり  楸邨 [98/7/16]

死に絶えし金魚の水を流しけり  沈丁 [98/7/25]

顔出来て浴衣著て居る踊り前  虚子 [98/7/30]

夏草や つはものどもが夢の跡  芭蕉 [98/8/4]

夏草に汽罐車の車輪来て止る  誓子 [98/8/7]

秋立つや何に驚く陰陽師  蕪村 [98/8/9]

大文字今は消えゆくばかりかな  不彩 [98/8/16]

ぬけ殻に並びて死ぬる秋の蝉  丈草 [98/8/19]

恋果てて蝉の死骸を捨つる朝  [98/8/28]

クラス会夢は高きに登りけり  [98/9/1]

夢のはてみればコスモス爪を切る  [98/9/10]

恋愛と結婚は違う彼岸花  [98/9/15]

子規逝くや十七日の月明に  虚子[98/9/18]
9月19日は子規忌。十七日というのは日付にあらず、月齢なり。

彼岸花タイのカレーはなぜ白い  [98/9/20]

一つ家に遊女も寝たり萩と月  芭蕉[98/9/23]

蛤となりし雀の舌を切る  [98/9/25]

十月は黄昏の国だ まいったな  [98/10/1]

鰯雲人に告ぐべきことならず  楸邨[98/10/4]

家出した弟と乗る捕鯨船  [98/10/8]

みみず鳴く少年は下駄をはいている  [98/10/11]

去る友を敢へて追ふまじ二十日月  匙女[98/10/17]

泣きながら銀座に桔梗をさがす夜  [98/10/21]

逃げ出した年下の男捕鯨船  [98/10/23]

ふりかえる小学校の銀杏の木  [98/11/2]

警笛やひと月遅れの金木犀  [98/11/6]

冬よ立てごみとほこりのこの部屋に  [98/11/9]

肩ごしに子が嘔吐する夜長かな  [98/11/12]

インバネス寄り添う路上酒場にて  [98/11/19]

覚王山二重回しと笠の僧  [98/11/21]

冬枯の道二筋に別れけり  虚子[98/12/1]

火の気なき炬燵の上の置き手紙  岸田今日子[98/12/9]

ともかくもあなたまかせの年の暮れ  一茶[98/12/27]

去年今年貫く棒の如きもの  虚子[98/12/31]




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