■■<IPM(埋込磁石型モータ)の出現>■■S-023
ホーム設計製図資料 2009-7-18記述
■長い間、最も制御性が良く、体積当たりの出力が高いモータは、ACサーボモータだと信じてきた。それは、自分自身の体験では、松下の展示会で、新製品であるminasシリーズを見たとき以来の思い込みだった。その時期は正確には記憶がないが、たぶん1990年代の初めだったと思う。最近のカタログを参照すると超小型ACサーボモータとして、パナソニックからMINAS-Eシリーズが販売されている。ほぼ同じの90Wタイプの標準的単相AC誘導モータ(オリエンタル)と寸法を比較してみる。体積で約1/8である。価格を考えれば、当然という意見もあろうが、これを実現した技術はすごい。ACサーボモータは、一般的には永久磁石をロータ表面に貼った表面磁石型モータ(Surface Permanent Magnet Synchronous Motor : SPMSM)である。永久磁石が、サマリウム・コバルトからさらにネオジウム磁石と強力なものへと進化していったのが、技術革新の第一のポイント、それと、多極のステータへの高密度巻線など、数々の工夫が詰め込まれているのである。
 
ACサーボモータ 単相ACインダクションモータ
型名:MKDET1110P
定格出力:100W
定格トルク:0.32N-m 
型名:5IK90A-AW2J
定格出力:90W
定格トルク:0.7N-m (50Hz)

■ところが、初代のプリウスが発売されたときに、そのモータ出力が50馬力と知って驚愕した。ACサーボの出現のインパクトよりはるかに衝撃的ではないか。50馬力とは、750WのAC誘導モータ50ケ分以上であるからだ。なんと、プリウスのボンネットの中にはエンジンの他に750Wの誘導モータが50以上詰め込まれているのか。そのときは、単にすごいと感じただけだったが、今にして考えるととてつもない技術革新が起きていることに気がつくべきだった。それが、IPM(埋込磁石型モータ)の出現だった。遅きに失したが、「機械設計2008-1月号」に「PMモータの選定と応用の実際」特集が掲載され、最近の開発動向が分かった。
 今回、WEBで、新しいプリウスとインサイトのモータについて調べてみた。Autocone(オートックワン)というサイトに「ハイブリッド車のモータ」というコラムがあって、新型プリウスのハイブリッド・システムの写真が掲載されている。同記事等によれば、プリウスはIPMであるが、ホンダのインサイトでは扁平なブラシレスDCモータを採用しているとのこと。
新プリウス(ZVW30型) 新インサイト(ZE2型)
構造 出力 構造 出力
エンジン 1.8L DOHC
アトキンソン・サイクル
73kW 1.3L SOHC 65kW
モータ IPM 60kW DCブラシレス 10kW
電池 ニッケル水素 6.5Ah ニッケル水素 5.75Ah

■小型で大出力を得られるIPMとは、どのようなモータなのであろうか。ブラシレスDCモータやACサーボモータで一般に使われている表面の永久磁石を貼り付けたSPMに対して、直線状の磁石をロータの内部に埋め込んだのがIPMである。これによって、SPMでは、磁石トルクだけが回転力になるものが、IPMではさらにリラクタンス・トルクも加わって、大出力を得ることができる。磁石トルクとは、ロータ磁石とステータコイルの吸着力や反発力によって発生するトルクである。
 IPMモータでは磁石がロータ内部に埋め込まれているが、矩形配置であるため、ステータ巻線から見たインダクタンスがロータ位置によって変化する。磁気抵抗の大きな表層の磁石が磁路を妨げたり、逆に磁石が奥まっているときには磁路をさえぎらなかったりするインダクタンスの変化によって発生するのがリラクタンス・トルクである。またSPM モータは,高速回転時に磁石が遠心力で飛散しないようにステンレスの管をかぶせており、この部分による鉄損が効率を低下させていが、IPMではその必要がないので効率も上がった。

■残念ながら、このIPMタイプのモータは、ハイブリッドカーや、エアコンなど製品組込み専用のもので、汎用部品としては市販されていない。だから、まだ一般の装置設計ではまだ使うことはできない。






Copyright MechatroIdea 2007