Q&Aインデックスに戻る

サクソフォーン 7.バリトンのタンギングの仕方

サックスのなかでも、バリトンのタンギングは少し勝手が違ってきます。アルトやテナーでは目立たない「パンッ」という破裂音が出やすいのです。ジャズやポップスではそれを逆に利用してリズム楽器的なアプローチをしたりもしますが、まずは基本として、きれいで正確な発音が出来た方が良いでしょう。
方法を説明する前に、リードの堅さ、マウスピースの開きが適切なモノかどうか確認して下さい。リードが柔らかすぎたり堅すぎたりすると、速いテンポでのタンギングは不可能です。柔らかすぎれば、明快なタンギングにならず、音が潰れてきれいに切れません。堅すぎれば、必要以上に力んでしまうか音のアタマがかすれやすくなります。どちらかの「症状」が出ていれば、まずリードの番手を見直すべきでしょう。
リード、マウスピースともに適切なモノであれば次に進みます
まずくわえる深さは適切ですか? これはタンギングの際に、舌のどの部分を使っているかに関係します。舌の先端か、舌の表面か、です。これも実は人によって違います。一般的には、舌の先端を使います。ただし極端にタンギングを行うと「ツンツン」と突っつくような音になり、耳障りで貧弱な音になる場合があります。舌の表面を使っていると音が荒っぽく、雑になりがちです。
どちらのタンギングでも、舌でリードを押すようなタンギングだと破裂音になってしまったり、正確さに欠けてしまいがちです。ここでまず認識を変えてみましょう。
タンギングとは、リードを舌で押すのではなく、あくまで「ストッパー」を外す行為なのだと思って下さい。何のストッパーか?もちろん息のストッパーです。従って、リードを舌で突っつくのではなく、リードに舌を当てて、息を送り込む瞬間に、すぅっとリードから離してやるというのが本来のタンギングです。
タンギング、ひいては音を切るという行為は、舌ではなく呼吸によって行うモノなのです。
と言うことであれば、まず舌のどの位置でタンギングしようが、呼吸のコントロールが出来ていなければ意味がありません。タンギングとは、あくまで補助的なモノであると言うことを理解して下さい。
では、順を追って練習方法を説明します。まずは適切な堅さのリードを用意して下さい。マウスピースをくわえるときは、自分の舌がどの位置に来るかをまず考えてみましょう。口の中は舌によってある程度のアーチが描かれドーム状の空間が出来ます。これがあまり狭くならないようにして下さい。具体的には、タンギングを舌の先端でやるか表面でやるかに関わってきます。先端でやることによって口の中で舌が必要以上に丸まってしまうようでしたら、舌の表面でタンギングしましょう。この相互関係によって自ずとくわえる深さも決まります。基準は「自分にとっていかに自然か」と言うことです。(ちなみに私は舌の表面でタンギングしています。舌が短く厚めなので口の中のスペースを確保するためでもありますが、表面でやるのが自分にとって自然だからというのが一番の理由です)
まずはいろいろ試して下さい。ただし一度決めたら、口廻りの筋肉を形成させる意味もあり、その位置から動かさないように。
次に呼吸をたっぷり取ります。メトロノームを60に設定し、それに合わせて4分音符を吹いてみましょう。舌は「すぅっ」と言った感じで素早くリードから離し、音は「お腹で支えて切る!」と言ったイメージで。喉で息を切るイメージは持たないように。(実は、身体の動きとしては喉の部分で息を切っているのですが、喉で切るイメージで吹くと身体はそれを強調して運動してしまい、必要以上に喉がこわばって息が細くなってしまうのです)
どうですか? 最初はうまく行かないかも知れませんが「トゥ」という発音をするよりもきれいな音がすると思います。(もしも、しばらく試してみて音がきれいに出ないようなら、リードの堅さを再び疑ってみて下さい)そして次に、同じテンポで音階を4分音符で吹いてみましょう。一音一音を区切ってみましょう。速いテンポでタンギング出来ないもう一つの理由がこれです。指と呼吸が連動していない場合、速いテンポでのタンギングは無理なのです。
ある程度安定してきたら、徐々にテンポを上げてみましょう。音符も4分から8分、三連、16分と上げてみて下さい。この反復練習によってだいぶ安定するはずです。
さて、いよいよバリトンならではの注意点に行きましょう。バリトンの場合、低音と高音で音に差が生じやすいです。使う息の量が極端に違うので当たり前ですが、まずは低音域を重点的にやってみて下さい。メトロノームを120にあわせて最低音のみで8分音符を吹いてみましょう。このとき、さっきの原則をあえて無視してみましょう。「トゥ」と発音して音を切ってみて下さい。ただし、息で音を切るという条件は守って下さい。これを出来る限り長い時間やってみましょう。もちろんブレスは入れますが、5分もやると、もうくたくたになるはずです。これを出来る限り毎日やってみて下さい。さて、なぜ原則を無視してもらったのか?
実はバリトンの場合、最低音からソの辺りまでの音に関しては、先ほどの原則が当てはまらないのです。バリトンの低音域は輪郭がぼやけがちになります。そのためあえて、がっちりと舌を突いて音を締まらせる助けにするのです。もちろんここでも基本は呼吸ですが。
そして中音域〜高音域ですが、こちらは先ほどの原則を忠実に守って下さい。ただ、演奏する曲調によっては原則をあえて無視する場合もあります。平行して「トゥ」の発音で、呼吸でしっかり切る練習もしてみて下さい。ただし低音と同じ勢いで「トゥ」と発音しないこと。少し手加減して「トゥ」と発音してみて下さい。呼吸がしっかりしていれば、それだけで十分音は発音でき、しっかり切れます。
タンギング練習は長時間やってみて下さい(むろん休みをしっかり取りながら)出来れば一日の練習の締めくくりにやると良いでしょう。でないとそれだけでへばってしまい、他の練習が出来なくなる可能性があります。
大げさなようですが、試しに「最低音をテンポ120で8分音符」を5分やってみて下さい。きっと最初はヘロヘロになりますよ。
そしてこれがクリヤーできたら、これも4分、8分、三連、16分、とパターンを変えてみて下さい。パーカッションの基礎打ちの要領です。
とにかく運動部の基礎トレーニングのような地味な練習ですが、確実に技術は向上します。また何かありましたら質問してきて下さい。

以上のお答えは、吉田隆一氏からいただきました。



音をロングトーンしている時の発音(口の中の状態)は「Ohh」と「Woo」の中間位でやってみてください。タンギングですが、これは微妙なんですよね。あえて言葉にするなら「TOH」とか「TAH」というイメージです。そしてこの時に注意してほしいのが、リードに舌が触れる面積が広すぎると、色々なノイズが発生したり、ベターっとした重いニュアンスの出だしになってしまいます。出来るだけ狭い(小さい)面積でタンギングすることをお薦めします。舌とリードが触れる部分は点と点というイメージです。そして速いテンポでのタンギングはこれもまた狭い(小さな)面積での発音がカギになります。そして大事なことは舌に力が入っていると速く動かなくなってしまいます。「点と点の意識と舌の力を抜く」これを意識してください。舌の動くストローク幅も大きくなりすぎないように。そしてもうひとつすごく大事なこと! 息の圧力を無視してはいけません。発音・タンギングは息と密接な関係が有ります。いい発音もタンギングも速さも、スムーズな息、圧力がちゃんとかかった息の流れがあって上手くいくのです。特にタンギングを考える時、舌にばかり気をとられ肝心な息への意識がおざなりになってしまいがちです。この息がしっかり出ていると、発音も速いタンギングもやりやすくなりますので、注意深く練習してください。いきなり速くやろうとせずゆっくりからコツコツと練習していってくださいね。

以上のお答えは、TWWサックス奏者:松原孝政氏からいただきました。

当サイトに掲載されている情報や素材の無断での転載、加工を禁止します。
Copyright(c)2000 Kids On!.All rights reserved.