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フルート 1.ビブラートのかけ方
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フルートの神様と呼ばれていたマルセル・モイーズは、フルートを始める以前からオペラ劇場に足を運び、名歌手の演奏を何度も何度も見聴きしていましたから、自分自身がフルートを吹き始める頃には、自然にビブラートをつけて吹けるようになっていたのだそうです。私自身も、フルートを習う以前に、かなりの量の名フルーティストの演奏を聴きこんでいましたから、実際にフルートを手にして音を出す段階で、すでにビブラートをつけて吹くことができました。
ビブラートは、理屈でつけるものではなく、自然についていることが理想的です。吹奏楽では、先生からいきなり楽器を割り振られ、たまたま手にしたのがフルートだったということがよくあります。その場合、楽器を手にする以前に、前もって、本来、楽音としてのフルートの音がどんな音で響いていなくてはならないか、どんな表現が可能なのかを知らないままだと、ただ無味乾燥な音を出すことのみに終始してしまいます。
初めに大切なことは、できるだけ多くの名フルーティストや名歌手、名ヴァイオリニストなどの演奏に接し、音楽体験を充分に得ることから始めなければならないでしょう。それなしでは、絶対、音楽的なビブラートをかけることできないといっても過言ではないと思います。
また、フルーティストは、実際、体のどこでビブラートをかけているかという問題があります。昔は、フルートのビブラートは、横隔膜(おなか)でかけるものと思われていましたが、これは今では間違いであることがはっきりしています。1983年にヨッヘン・ゲルトナー氏による「フルート奏者のビブラート(シンフォニア刊)」という本が発刊されると、しだいにビブラートの方法が考えなおされるようになりました。この本では、実際にフルーティストにビブラートをつけて演奏してもらって、レントゲンや筋電計などを使って調べた結果が報告されています(被験者の中には、オーレル・ニコレのような大巨匠も含まれていました)。その結果、フルーティストは、喉か肋筋(胸の呼吸筋の一つ)でビブラートをかけていることがはっきりしたのです。横隔膜でビブラートをかけているフルーティストは誰一人としていませんでした。
横隔膜(おなか)でかけるビブラートの練習法(記憶違いでなければ、アンドレ・ジョネが初めに考えついた方法)は、犬が暑いときにハッハッと喘いでいるおなかの動きを応用したものです。あの犬の喘ぎのように、ハッハッとおなかを弾ませて呼吸すると、横隔膜を通じて規則正しい周期的な振動を息に与えることができます。そのお腹の振動を、初めはニ連符、その次は三連符、やがて四連符になるようにリズムをつけて振動させ、最終的にビブラートに発展させるようにという練習でした。
しかし、この練習の結果をそのまま信用してはいけません。この方法のみで得られるビブラートは、振動の波が深すぎるので、フルートのビブラートとしては全く実用的ではなくなってしまいます。楽音として、使い物にならないのです。加えて、おなかをはずませるには、腹筋が常に緩んでいなくてはならず、腹式呼吸ができなくなってしまいます。
では、この練習がまったく無駄かといったらそんなことはありません。実際、ゴールウェイは、このハッハッというお腹の弾みを応用させる練習を毎日欠かさずやっているというのです。しかし、彼は「自分が実際どこでビブラートをかけているのか、自分ではわからないんだ」といっています。
要するに、この練習は、あくまでも、ビブラートに一定の周期性のある波を持たせるためのヒントとして行なうものなのです。おなかのはずみで得られた周期的な振動の原型を、お腹から次第に「胸」や「喉」の方に移行させることで、きれいなビブラートに発展させなさいということなのです。けっして原型のまま用いてはいけません。
実際のところ、正しい腹式呼吸ができていれば、フルートのビブラートは、体のどこが振動していても良いのだと思います。もっとも正しくないビブラートとは、正しい腹式呼吸を使わないまま喉でビブラートをかける、響きの無い、いわゆる「ちりめんビブラート」や、おなかをゆっさゆっさゆらしたままの非楽音としてのビブラートです。
それから、ビブラートの方法や振動数など、あまり考えすぎないことも大切だと思います。有名な「ムカデのお話」があります。ムカデは、何百本もある足をうまくコントロールしてスムーズに歩いていますが、あるときムカデ自身が「自分はどのようにして、このたくさんの足を使って歩いているのだろう」ということを考え始めた途端に、歩くことが出来なくなってしまいました。
自分が、どこでビブラートをかけているのかを、あまり追及し過ぎてしまうと深刻なスランプに陥ってしまうこともあります。また、たとえばここの4分音符には、ビブラートを四ついれて演奏するんだ…などと考えてしまうと、まったく音楽的な、歌うような魂のある楽音になりません。
ですから、まず第一に、豊かな音楽体験を得るということが全てのはじまりだと思います。その上で、ビブラートに美しい周期性のある振動を与えるヒントとして、アンドレ・ジョネの方法を試みてみたら良いのではないでしょうか。
以上のお答えは、藤田信路氏からいただきました。
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ビブラートの練習方法を解説いたします。
★第1段階
@メトロノームを用意する
A4分音符=60 で メトロノームを動かす
B【mp】か、【p】でロングトーンをする
(この時、まだ音は揺らさないように!)
Cメトロノームに合わせて、4分音符の間隔で【fp】、もしくは
【sfz】を付ける(拍の頭が【f】で、そのあと直ぐに【p】になるように)
この時、【f】と【p】の音量の差は出来るだけ大きく!
D今度は8分音符の間隔で【fp】を入れる
E次は三連符で・・・・。
F次に16分音符で・・・・。
G以上に慣れてきたら、メトロノームのスピードを少しずつ上げ、B〜F工程を続ける。
ここまでが、ビブラートの土台作りです。この段階できちんと出来ていないと美しいビブラートになりません。時間をかけて確実に!
★第2段階
ここではビブラートの振幅をコントロール出来るようにしていきます。(振幅とは、波の高さのことです。)今まで【fp】にしていた音量の差を、【mf】と【p】、【mp】と【p】、【ff】と【p】、【ff】と【f】等のように、各バリエーションで第一段階のB〜Fの工程を練習していきます。ここまで出来るようになったら次からは実戦です!
★第3段階
@まずはロングトーン練習の時に用います。ソノリテについての第一章でもOK。音量は【pp】からスタート。クレッシェンドしながら、振幅は徐々に大きく、ビブラートの間隔は徐々細かくしていき、ロングトーン中盤で音量、ビブラートのテンションがマックスになるようにします。そこから先はディミヌエンドをしながら徐々にビブラートの間隔を広く、振幅を徐々に小さくしていきます。勿論、音量は最終的に【pp】になっていなければなりません。そして、当然ここまではひと息ですよ!
A次に、今自分の練習している曲の中に、積極的にビブラートを取り込んでいきます。でも、やたらと音を揺らせば良いというものではありません。曲想に合ったビブラートが必要になってきます。第2段階でやってきたことを活かして、どのビブラートがその曲を魅力的にするのか、自分で研究しなければなりません。(自分がその曲をどのように吹きたいか、表現したいのかを知ることが大事です。)
以下を参考にしてみて下さい
◆振幅が大きく、ビブラートの間隔が広い→雄大、壮大な感じ
◆振幅が小さく、ビブラートの間隔が広い→優しい、穏やかな感じ
◆振幅が大きく、ビブラートの間隔が狭い→攻撃的、派手、強い印象
◆振幅が小さく、ビブラートの間隔が狭い→非常に緊張感がある
ビブラートは、曲の魅力を何倍にもするものであり、更に我々奏者の表現力も何倍にもしてくれるものです。曲中では、更にダイナミクスレンジの指定があるので、曲に一層表情が表れます。
勘違いしてはいけないのは『音が揺れればビブラート』ではないということです。曲想に合った振幅、間隔でなければ、それはただの『音揺れ』であり、コントロールが出来なければ『ビブラートが出来る』とは言えません。ただの『音揺れ』で曲を吹くくらいなら、まっすぐな音で吹いた方がずっと美しいです。『音揺れ』から『ビブラート』になるまでには大変時間が掛かります。重要なのは、とにかく毎日地道にビブラートの訓練を欠かさずする事。初めはぎこちなくてストレスに感じるかもしれませんが、毎日つづけていれば必ず『ビブラート』になります。
そして、ノドでビブラートをかけるのか?、それともお腹で?についてですがどちらでもないというのが答えです。正確に言うと両方使う・・かな? お腹だけでビブラートをかけようとすると、振幅、間隔共に全くコントロール出来ません。ノドだけだと、まず、ノドが締まり、音色が悪くなりますよね。ビブラートもあまり振幅を広く取ることができません。自分でビブラートをかけていて、お腹なのか、ノドなのか、どちらでかけてるのか解らない!と、いう感覚になれれば、それが正しいビブラートです。実際のところ、大まかな部分をお腹で、微調整をノドでしています。初めのうちは、お腹の方を意識してかけた方が無難です。
最後に、最も重要なことは、いつでもビブラートを止めて音を伸ばせなければいけないと言うことです。よく『音を出すと、どうしてもビブラートがかかってしまう』と言う人がいますが、それはちゃんとしてビブラートが出来ていない(完全にコントロールされたビブラートが出来ていない)からです。曲中で、ビブラートが不必要な場面は沢山あります。全く揺れのない美しい音色でのロングトーンも、毎日必ず行ってくださいね。
以上のお答えは、TWWフルート奏者:満島貴子氏からいただきました。
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ビブラートのかけ方と練習方法について
<正しいビブラートとは?>
ビブラートは、喉でかけてはいけません。お腹からの息のコントロールでかけましょう。何故、喉でかけてはいけないかというと、ビブラートというのは、音に様々な表情をつけるもので、その揺れの速さも深さもじぶんの思い通りにコントロールできなければならないからです。喉でかけた事のある人なら解るでしょう。喉でかけると、徐々に揺れを速くしたり遅くしたり、また、深くしたり浅くしたりという操作ができないはずです。それに、喉でかけると、喉が締まってしまいますね。喉が締まると、太くて響きの豊かな音は出せません。自分の音量や音色を、より豊かに美しくする為にも正しいビブラートを修得する必要があります。
<ビブラートの練習方法>
M.モイーズ著「ソノリテについて」(写真1)を使って練習してみましょう。
持っていない人は、これを機に買うといいですね。少し高いけれど、音作りの基本には欠かせない練習が簡潔にまとめられていて、一生使えますよ! 1番を使って練習してみましょう。(写真2)
まず、楽譜には四分音符と付点二分音符で半音ずつ降下し、それぞれを2回ずつ繰り返すよう指示してあります。(3小節目から繰り返し記号が省かれていますが、同じように繰り返して下さい。)
1.メトロノーム4分音符=60で、譜例1のように吹きます。 音符は八分音符単位に分割されていますが、タイで繋がっていますので、1音ずつ息を止めたりせずに普通に伸ばして下さい。アクセントの部分はタンギングは一切しないで、お腹からの息の圧力で「tuーuーuーuーuー.......」と強くします。譜例は最初の一小節分しか書いてありませんが、勿論、2小節目以降も同じ様に続けて下さい。
2.1が出来るようになったら、譜例2のように三連符に分割し、1と同じようにタンギングを使わずアクセントを付けながら音を伸ばしてみましょう。アクセントのタイミングを完璧にコントロールするのは難しく強さも不揃いになりがちですが、細心の注意を払って速くなったり遅くなったりせずアクセントの強さを揃えましょう。
3.2ができるようになったら、譜例3,それができるようになったら譜例4という風に、分割をだんだん細かくしていきます。
お腹を使ってのアクセントはとても疲れますが、訓練すれば疲れることもなくなり、完璧にコントロールすることができるはずです。逆に、お腹を使うことによって疲れるというのは、今まで正しいお腹の支えが出来ていないで練習していたという事です。上の練習に慣れてきたら、今度はビブラートを徐々に速く(遅く)したり徐々に深く(浅く)したりと、自分の思い通りにビブラートを操ってみましょう。そして、上の練習だけにとどまらず、素晴らしいフルーティストや弦楽器奏者の演奏をCDや演奏会でたくさん聞き、美しくセンスの良いビブラートを真似しながら、自分の練習している曲の中に取り入れて実践していきましょう。決して単調で一本調子なビブラートを、無神経にかけないように、曲の表情に合わせた多様なビブラートを研究してみて下さい。
以上のお答えは、A.T氏からいただきました。
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