中学校で学習した球の表面積の公式の求め方について考察することで、定積分に興味をもち、
単元の有用性を感じることが、この教材のねらいである。
球の表面積の公式の求め方について考察する前段階として、球の体積の公式の求め方を
考察しておこう。下の図1において、球の中心から距離 x の点で切った断面である円の半径は
√(r2-x2) であるから、円の面積は、S(x)=π(r2-x2) となる。
よって、球の体積Vは、円の面積を x 方向に積分すると、V=2∫0r π(r2-x2) dx より、
V=2π[r2x-(x3/3)]0r=(4/3)πr3 を導くことができる。
次に、球の表面積の公式の求め方について考察する。
まずは体積のときと同様にすると、図1において、
球の中心から距離 x の点で切った断面である円の
円周の長さは、L(x)=2π√(r2-x2) となる。
よって、球の表面積Sは、円周を x 方向に積分すると、
S=2∫0r 2π√(r2-x2) dx より、
x=rsinθ と置換すると、S=4π∫0(π/2) √(r2-r2sin2θ)rcosθ dθ
=4πr2∫0(π/2) cos2θ dθ=4πr2∫0(π/2)(1+cos2θ)/2 dθ
=2πr2[θ+(sin2θ/2)]0(π/2)=π2r2 となり、
球の表面積の公式、S=4πr2 とは違ってしまう。
これは、円周の長さを x 方向に積分するときに、xを微小増加させたときの表面積の変化量が
x=0 付近と x=r 付近で異なり、x=r 付近の方が表面積の増加量が大きいためと考えられる。
そこで、積分方向を変えてみることにする。
表面積の変化量が一定になるように、積分方向を
変えて、球の表面に沿って積分するように計算して
みることにする。
図2において円周を球の表面に沿った l 方向に積分
すると、S=2∫0(πr/2) 2π√(r2-x2) dl より、
l=rθ なので、x=rsinθ と置換すると、
S=4π∫0(π/2) √(r2-r2sin2θ)r dθ
=4πr2∫0(π/2) cosθ dθ=4πr2[sinθ]0(π/2)=4πr2
となり、球の表面積の公式を導くことができる。