あるルールでドッジボールをするとき、誰が一番有利かを考察することで、確率と無限等比級数
について深く理解して興味をもち、単元の有用性を感じるのが、この教材のねらいである。
A,B,Cの3人でドッジボールをする。まず抽選で最初に投げる人を決める。
投げる人は残っている人のどちらを狙ってもよいが、自分が勝つ確率の高い方を狙うとする。
当てられたら負けで、次に投げる人は他の一人に移る。
当てられなかった時は、次は今狙われた人が投げることができる。
Aが投げたときは必ず当て(確率1)、Bが当てる確率は(4/5) ,Cが当てる確率は(1/2)である。
このとき、誰が一番最後まで残って勝つ確率が高いだろうか?
この問題は意外な結果になる。
①抽選でAから投げ始める場合(確率1/3)、Aは必ず当てることができるので、
次に当てる確率が高いBを狙った方が得である。Bは必ず当てられ、その後CがAに投げる
ので、Cが勝つ確率は、(1/3)×(1/2)=(1/6)、
CがはずすとAは必ず当てるので、Aが勝つ確率も(1/6)
②抽選でBから投げ始める場合(確率1/3)、最初にAを狙わないと負けるため、Aを狙う
ことになる。Aに当たった場合は、BとCの対戦になり、次にCが投げるので、
Cが勝つ確率は、(1/5)×(1/2)=(1/10)から、
{1+(1/10)+(1/10)2+(1/10)3+…}×(1/2)=(5/9)となり、Bが勝つ確率は(4/9)、
Aに当たらなかった場合は、次はAが投げるため、①のパターンに進む。
よって、Aが勝つ確率は、(1/3)×(1/5)×(1/2)=(1/30)、
Bが勝つ確率は、(1/3)×(4/5)×(4/9)=(16/135)、
Cが勝つ確率は、(1/3)×(4/5)×(5/9)+(1/3)×(1/5)×(1/2)=(49/270)、
③抽選でCから投げ始める場合(確率1/3)、最初にAを狙わないと負けるため、Aを狙う
ことになる。Aに当たった場合は、BとCの対戦になり、次にBが投げるので、
Bが勝つ確率は、(1/5)×(1/2)=(1/10)から、
{1+(1/10)+(1/10)2+(1/10)3+…}×(4/5)=(8/9)となり、Cが勝つ確率は(1/9)、
Aに当たらなかった場合は、次はAが投げるため、①のパターンに進む。
よって、Aが勝つ確率は、(1/3)×(1/2)×(1/2)=(1/12)、
Bが勝つ確率は、(1/3)×(1/2)×(8/9)=(4/27)、
Cが勝つ確率は、(1/3)×(1/2)×(1/9)+(1/3)×(1/3)×(1/2)=(11/108)、
よって合計すると勝つ確率は、Aが(1/6)+(1/30)+(1/12)=(17/60) 、
Bが(16/135)+(4/27)=(16/60)=(4/5) 、Cが(1/6)+(49/270)+(11/108)=(27/60)=(9/20)
となり、一番当てる確率が低いCが一番勝つ確率が高いという結果がでる。
ルールを決めるときによく考えないと、逆転現象が起こる例である。