唐突に話題にはいるが、切り組とはいわば和竿の設計図である。
 この竹をここに使ってこんな風に・・・・
 
 丸竹でフライロッドを作るに当たって一番の悩みは、この竹とこの竹を組み合わせていったい何番くらいのラインが乗るんだろうか?とか、長さがこのくらいで何番の何本継ぎの竿を作りたいのだが各セクションをどの程度の竹で作ればいいのか?とかいうことが皆目見当も付かないことである。
 かなりの本数を作った方なら、「この竹はこれこれこんな竿のこの部分に使えそう」とか「こんな竿作るためにはこの竹とこの竹で・・」とか解るのだろうが、そうでない私のような初心者には皆目見当も付かない。
 結局は、「なんとなく繋がりそうだな〜」と言う組み合わせで作ってみて、ラインを乗せてみたら何番だったというのが精一杯である。
 そしてそれを基に、次はもう少しバットを堅くとか、ティップを繊細にとか工夫して徐々に理想に近づけていくわけである。
 しかし、なにぶん和竿の作成には手間と時間が掛かる。しかも材料となる竹の採取や保管に限界がある素人にとって、何らかの指標のようなものがなければ、闇雲に竹を取ってはゴミと化すを繰り返すことになる。
 そこで、「もし切り組のテンプレートがあればより早く自分の好みの竿が作れるのではないか??」っという考えで、なけなしの経験と知識を振り絞ってちょっとしたツールを作ることにした。
 
題して、
「全長と継ぎ数とライン番手を入力したら切組寸法自動計算してくれるよ〜んVer.1」
 
 まず竿のテーパーをどう表現すればよいか?
 元来釣り竿というものは手元から穂先に掛けて徐々に細くなっていればどんなテーパーだろうと竿になる。テーパーのないただの棒でも竿として使えるしキャスティングもできる。とはいえ、そんな考えで竿を作ってもおもしろくない。  ・・・っということで、たぶんn次式で近似できるであろう。
 一次式ではストレートテーパーになるため現実的でないし面白くない。特にうんちく述べるので有れば小難しい方がいい。とにかく二次以上の高次式だ。でもあまり難しくなると計算するのが面倒だから、とりあえず二次式で考えよう。
 
 まず竿の断面をグラフにしてみよう。
 机の上に竿をティップを下にしてひっくり返して立てた状態で真横から眺めてみると、、、、倒れます。たぶん絶対に立ちません。コロンブスでも竿を倒立させることはできません。でも立てないと話が進まないのでとりあえず立ったところを想像してください。
 竿の中心線をY軸、机の表面をX軸と考えて、机からの高さ[y](ティップからバット方向に任意の長さy進んだ部分)におけるブランクの半径を[x]と考え、竿の断面の輪郭を二次式で近似すると式1のようになる。
 
 
 そしてティップ先端の半径は[y=0]の時の[x]の値、バット半径は[y=竿の全長]の時の[x]の値である。
 もう少し解りやすいよう、式1を式2の様に書き換えてみよう。
 
 
 式2から判るように、[y=0]の時[x=t]となる。すなわち[t]がティップ先端の半径である。
 よってティップからバット方向に[y]のところでの半径は式2を変形して[x]について解けばよいことになる。
 
 
 これで基本の計算式ができた。
 問題は、[a=基本的なテーパー係数]の推算とライン番手や素材の違いによってテーパーを補正する変数をどのようにしてこの式に組み込むかである。
 これはたくさんの竿を作って、データ収集しなければ皆目見当も付かない・・・。しかし冒頭に記したようにたくさん竿を作った経験をお持ちお方はこんなツールなんか無くっても切り組が決められるのである。
 では、経験の浅い者がどうやってこのテーパー補正を行えばいいのか????
 とりあえずこれまでに4本しか作ったことのない私が思いついた方法を以下に列挙する。
 
 基本的にはライン番手が上がれば式1の放物線が広がり、堅く反発の強い素材で有れば狭まる。
 また、制限条件として竹は種類によって先端の細さに限界がある。ホテイチクでは1mmよりも細いものがあるが、メダケやヤダケでは2mmを切る細さのものはなかなか見つからない。また、いくらホテイチクが細いものがあるとはいえ、フライロッドに使うとなるとその最小値は自ずと決まってくる。よってこの制限条件から
@素材をメダケとして[t]の最小値を1と決め、この時の適合ラインは#[L=0]と仮定する。
また、
A[a]に任意の値を与える。とりあえず気に入った穂先用の竹のテーパーが長さ約1mで最大径が5mm程度だったので[a=1000/5=200]としてみた。
Bライン番手によるテーパーの補正はライン番手[L]に任意の定数[K]を掛けて1を加えた数値を[x]に乗算することとする。
C素材の違いによるテーパーの補正[B]については竹の年齢とか生育環境を無視して「堅い竹は径が細くできる」と仮定し、竹の種類間の相対的な堅さの順序を「メダケ→ヤダケ→スズタケ→ホテイチク」と決めて、メダケを1として順次0.5づつ減算し、これを[x]に乗算することとする。
 
 式3と@〜Cから、#[L]番ロッドにおけるティップからバット方向に[y]の位置におけるブランクの半径[x]は式4として計算できることになる。(ほんまかいな?)
 
 
 以上をスプレッドシートのセルに入力し、既存データーと比較しながら定数[K]を調整した結果、[K]は0.07〜0、08の範囲で落ち着きそうだったため、とりあえず0.075とすることにした。
 
 ここから後は、セクション毎の継ぎ目の径が解るようにちょこっと手を加えてスプレッドシートの体裁を整えてほぼ完成!
 何本継ぎであろうと表を下へ延ばせば可能なのだが、とりあえず現実的なところで10本継ぎまでにとどめた。
 
 なお、作成には某世界的巨大企業の定番表計算ソフトを用いた。
 最近話題のオープンなオフィススィートでも正常に使用できることを確認している。
 
↓クリックすると起動します↓
 
 竿の全長を尺貫法で入力し、継数、ライン番手を入力することで、それぞれの素材毎にどの程度の径の竹を選べばよいかが解る仕組みである。
 しかし、検証できるデータが4件しかないためかなりいい加減であり、このテンプレートは現状では信頼性がかなり低いと言うことだけは自信を持って言える。
 しかも竿を延べ竿として計算しているため、この寸法で切り組むと印籠継にしかならない(もともとフィッシャーやスコットのブランクからの自作竿でフライフィッシングを始めた関係で、スピゴットフェルール(印籠継)に強い思い入れがある。当然ダイアモンドバックも大好物。ダイアモンドバックと言えば、竹を裂いて籠編みしてダイアモンドバックのような編竹竿が作れないかな〜。おっと話が違う次元に進んでしまいそうなのでこの辺でおわり。)。しかし、4本継ぎにしてティップにホテイチク、穂持にスズタケ、穂持下にヤダケ、手元にメダケという組み合わせでみると(計算結果を右上から左下に斜めに読んでみると)、なんとなく径に差があって、素材毎に与えている係数を見直せば並継にも対応できそうな????感じがしてきた???。
 
 今後データを蓄積し、より高次な方程式とすることでもっといいものになるのかな?とも思うが、でもとりあえずこれでいいやっという思いのほうが強い。
 根がめんどくさがり屋なもんで・・・。
 
 
 
20040915:up
 
 
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