来年度から小中学校で本格実施される「総合的な学習の時間」を大学生に体験してもらおうと、埼玉大学教育学部が、小学校教諭を講師に迎えた講義を始めた。講師は、小学校での授業をそのまま大学生相手に再現。大学では教授陣、学生ともに実際の総合学習を体験していないだけに、学生らは「貴重な機会」と歓迎している。
4月末、同学部の「総合学習研究」の時間。担当の岡幸江・助教授が紹介したのは、埼玉県朝霞市立朝霞第2小学校の増田修治先生だ。
初日のテーマは脳死移植。2年前に小学6年のクラスで行った授業通り、まず約50人の学生をグループに分けて討議を始めた。あらかじめ聞いておいた両親の脳死移植への意見や自分の考えを発表。最後は、各自が意見を紙に書き、「賛成」「反対」「わからない」の3つに分けて黒板に張っっていった。
増田先生は「小学6年の授業では、『わからない』の意見が増えた」と説明。「課題に答えが出ない授業があってもいい。総合学習はそんな課題を考えるチャンス」と締めくくった。
この講義は、埼玉大側が現場教師に総合学習の授業をしてもらおうと、同大OBの増田先生に依頼し実現した。授業は2回あり、5月下旬には絵を共同作成する予定だ。
受講した教員の学生は、「現場の先生の非常に貴重な話だった。一緒に考える授業にするのが大切だとわかった」。岡助教授は「理論だけでは本当の理解ができない。体験を通じて、総合学習を体でわかってほしい」と話した。
【写真説明】
脳死移植への意見を黒板に張り、小学校と同じように展開された授業=さいたま市の埼玉大学で