阪神大震災、フランス核実験、オゾン層の破壊――自分たちの直面する社会問題を九つのテーマに分けて版画で描こうと、朝霞市立朝霞第七小学校の六年生九十五人が、縦二・七メートル、横五・四メートルの巨大版画の制作に取り組んでいる。九つのテーマのうち六つまでが、暗い将来に小さな胸を痛めた内容で、作品は大人たちへの警告にもなっている。
三組担任の増田修治教諭が、ピカソの「ゲルニカ」を見て思いついたという。「版画作りを通して、自分たちの社会をみつめてみよう」と指導した。
一月末に、各クラスの卒業制作実行委員が、テーマを話し合った。統一テーマは「未来での共生をめざして」に、すなんり決まった。しかし、委員から出された個別テーマは「核実験」「自然破壊」など暗いものばかり。
希望も込めて「太陽エネルギー」「動物と人間の共生」「緑の森」と、明るいテーマも加えた。
二月から班に分かれて、「卒論」にまとめた、その後班ごとに下絵のアイデアを出し合っていくなかで、一枚の絵にしていった。
版画は縦九〇センチ、横一・八メートルの板九枚を縦横三枚ずつ組み合わせた。右上から左下に大きな川が貫いて、統一性を持たせている。
核実験にの絵は、キノコ雲のような化け物が地球を抑えつけているような図柄になった。
「オゾン層の破壊」では、スプレー缶から飛び出した手が空を引き裂き、紫外線が人や植物を襲う様子。「水の汚染」でも、川にごみが浮かび、魚が苦しんでいる。
「動物と人間の共生」では、動物をとり尽くして滅ぶ人間と、森で動物と仲良く暮らす人間の、二つの未来を対比させている。
「大地震」は、ビルが倒れ、柱に下敷きになった人たち。「貧困」は、飢えた人たちが描かれている。
児童たちは「未来は木も草もなくなる」「人間は自分で自分の首をしめているのでは」と感じている。その一方で、「この作品が未来を変える一歩だと思いたい」との声もあった。
版画は三月中旬には完成し、二十二日の卒業式で、会場の体育館ステージに飾られる予定だ。
【写真説明】
彫刻刀を手に、版画を彫る児童たち=朝霞市立朝霞第七小学校で
卒業記念作品「未来での共生をめざして」の原画のコピー。上段左から「自然破壊」「オゾン層の破壊」「水の汚染」。中段は「核実験」「緑の森」「動物と人間の共生」。下段は「太陽エネルギー」「大震災」「貧困」
朝日新聞社