沖縄タイムス 2002年8月8日 朝刊
大弦小弦
昨年八月に本欄で取り上げた埼玉県朝霞第二小学校の増田修治教諭(44)のクラスの模様が先月、NHKテレビで紹介された。
増田さんは「ユーモア詩」の指導に取り組んでいる。子どもたちに詩の面白さを味わってほしい。詩を通して親や友達、自分のことなどを考えてもらいたい。そんなきっかけからだ。番組は詩を書くことで自分を見つめ直す子どもの姿を映し出した。
詩になじむために、増田さんがまず呼びかけるのは身の回りのささやかな出来事から書くということ。子どもたちの楽しい詩のなかに心の内が表れてくる。自分の思いを知ってほしいという気持ちがあるからだという。
自分を大切にする。それが他人を大切にすることになる。そういう意識を子どもたちに持たせる教育に力を入れている。人が生まれるのには親のほか、さらに何世代前の人の歴史が続いている。一人を殺すと、その人の後に続く歴史を消すことになる。「だから自分も他人も大切にしなくちゃ」と。
脳死移植を子どもたちと話し合った。増田さんは、生と死の意味を真剣に議論する子どもたちを「生きることを前向きに考える存在」と位置付けている。(「子供力!詩を書くキッズ」弓立社)。
この夏、殺伐とした事件が相次ぐ。人を思いやる気持ちをなくした犯行だ。増田さんの試みが少しでも広がってほしい。そう思わざるを得ない。(銘苅達夫)