毎日新聞 2004年8月17

  
新教育の森 

アドレス探し10
遊びが開く心の扉

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 <お父さんがごはんを作った。みそ汁はおすい物かなぁと思って「おいしくない」とは言えなかった。お母さんが帰ってきて「みそ汁、どうしたの? みそ入ってないわよ」と言った。どうりで味がないわけだ>
 埼玉県で小学校の先生をしている増田修治さん(46)は、ユーモアを交えた詩を子どもたちに書かせている。頭ごなしに「みんな仲良くしようね」なんていっても、ばかばかしいと相手にされない。でも面白い詩を互いに読めば、笑い合える。親近感もわくはずだ。
 <パパは土日に遊んでくれない。遊ばないでバイクをいじくっている。遊んでくれないと不良になっちゃうよ〜>
 家族への本音も出る。親にもユーモア詩を書いてもらえば、親子のコミュニケーションにも役立つ。先生には見えなかった心の内や家庭の様子が分かる。
 4年生の男の子はこんな詩を書いた。
 <友だちがいて ぼくがいる。ぼくはもっと友だちがほしい。でも、できない。もっと友だちがいるといいな>
 最初はクラスでも孤立していた。詩を書くことで少しずつ本音を出し始めた。一風変わった行動をしても、「おもしろいヤツ」として受け入れられ始めた。
 子どもの心を外側から開けるのは難しい。自然に自分で開くようにしてあげることが大事だ。伝え合うことで「人間って、いいなあ」と思ってもらえればいい。「大人にはいま、そんな努力が求められている」と増田さんは思う。
                   ■    ■
 午後になっても、三鷹の遊び場には子どもの歓声が響いていた。滑り台から水を流すホースが、落ちそうになる。「おれが持つよ」。見知らぬ子ども同士が、ホースを順番に回し始めた。

 「見て」。服の胸の辺りをつまんだ女の子が、うれしそうな顔をお母さんに向けた。赤いTシャツは、もうずぶぬれになっていた。車の騒音に混じって、遠くにセミ時雨が聞こえた。

           <文・北川仁士>=おわり