朝日新聞朝刊 2004年6月10日(木)
西埼玉版
小さな詩(うた)、大きな力
増田修治著(柏艪舎、1260円)
子どもたちに「ユーモア詩」を書かせながら笑いのある学級づくりを進めている朝霞市立朝霞第二小学校教諭で埼玉大学非常勤講師の増田修治さん(46)が子育てに悩むお母さんを励ます「小さな詩(うた)、大きな力」(柏艪舎、246ページ)を出版した。子どもたちのみずみずしい感性で書いた多数の「ユーモア詩」を読み砕き、みんなで笑い合える空間づくりに向け今、保護者や大人たちは何をすべきかを問いかけている。
増田さんは、不登校やいじめの問題に取り組む中、子どもたちのストレスを取り除くとともに、親たちも自分や子どもをとらえ直すきっかけづくりが必要と痛感した。そこで思いついたのがお父さんやお母さんの癖や失敗談、家庭や学校の出来事などについて「ユーモア詩」を書かせることだった。
この本には、子どもたちがユーモアあふれる感覚で書いた「お母さんの必殺技」「ママはもててた?」「人形みたいな弟」「トイレそうじ」といった詩や、児童虐待事件を取り上げた詩なども掲載した。これらの詩を元に増田さんが子どもたちの心を分析。「子どもがお父さんに『遊んでよ』と要求するのは僕の知らない世界を教えてよというサインですよ」「(大人は)子どもたちが持つユーモアセンスを引き出す力量と本人を認めてあげる寛容さを持たねばならない」などといったコメントを付けている。
また、最近相次いでいる少年少女事件について増田さんは「今こそ、子どもたちに他人との共通点、相違点を見いだし一定の合意を作り出すコミュニケーション能力を高める時だ。この能力を伸ばすことで子どもたちは『強者の論理』から『合意の論理』を持てるようになれる。」「親や教師は『子どもはこうあって欲しい、こうあるべきだ』と、条件付きの愛を押しつけており、ストレスの原因となっている。ありのままの姿を認めて上げる姿勢を持ってほしい」などと話している。
「うちの人のおならは変だ。おじいちゃんのはわからないけど、パパは変なタマゴのにおい。ママのは魚をこがしたにおい。お兄ちゃんのはペンキのにおい。弟のは新しいくつのにおい。自分のは…ラベンダー」
埼玉県の公立小で教壇に立つ著者は長年、子供たちに「ユーモア詩」を書かせている。
冒頭の「おなら」は3年生の作品。家族や友達との日常に潜んだ喜怒哀楽をユーモアに包み込みながら、互いをいたわる気持ちが芽生えていく。笑いのコミュニケーションを通じた子育て論。
(柏艪舎)