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ひぐらしのなく頃に 〜身代り編〜 Vol.4
下から声が聞こえてきた。
「ごめんね〜忘れ物しちゃったみたい。ちょっと待ってね?取ってくるから」
レナの声だ!!
「やばい!!」
圭一は慌てて紐を元通りにしようとする。
「とんとんとんと・・・だんだんだんっ!!」
上に上がってくるたびにその足音は大きくなっていった。
そして
「ばっ!!!」
ドアが強い勢いで開いた。
「圭一くん・・・・おとなしくしてたかな・・・・かな?」
レナは凄みのある目で圭一を睨むように見た。
そして・・・・圭一を一通り見ると
「だんっ!!」
強くドアを閉めた。
だんだんだん・・・・・とんとんとんとん・・・・・
一階に下りる足音が聞こえた。
「ごめんね〜レナの勘違いだった。忘れ物して無かったみたい」
「何だ何だ〜レナにしちゃ珍しいな〜はははは・・・・」
下から聞き覚えのある声・・・間違いなく自分の声だ!!・・・・
「どうなってんだ・・・・一体?」
話し声が遠くなるのを確認すると、圭一は両手、両足の紐を解いた。
「ふっ・・・レナめ・・・・部活と同じで詰めが甘いな!!」
紐を解き、部屋を出る。静かに階段を下の階へ降りる。幸い、レナの父親は出かけている様子
だった。
裏口からそっと外の様子を伺う。辺りには誰もいない。
「よし・・・・・」
レナの家を離れ、人影を避けるように歩いた。
「今・・・・・何時だ?」
11時半を知らせるサイレンが鳴った。
「あとちょっとで昼か・・・・・とりあえず自分の家に行くか・・・・あ、でも・・・・・・
さっき俺の声が聞こえたって事は・・・・」
圭一には自分の体から血の気が引く音が聞こえた。
「俺の帰る所は・・・・無いのか・・・・」
改めて自分の置かれている状況を確かめる・・・・
「とりあえず裏山に行って・・・・どうしようか考えてみようか・・?」
圭一はその足で裏山に向かった。
・・・裏山・・・・・・・・・・
あの攻防戦から9ヶ月・・・・・・・・・
3月とはいえ雪深い雛見沢。付近の山々には残雪がたくさんあった。
そこにかまくらのようなものを作り、それに入った。そして朝からのことを考えてみる。
「・・・・で、授業が終わって、レナに襲われて、帰り道に気を失って・・・・
こうなりゃ大石さんに相談してみようか・・・・・・・」
圭一は先ほどの出来事を思い出した。
「・・・・・レナの奴が・・・・俺を監禁しようとしているってのはどうだ・・?
しかも替え玉を用意していて・・・・・こんな感じで・・・よし!!善は急げだ!!」
圭一は公衆電話に急いだ。しかし・・・・・・
「レナはああ見えても回転は速い奴だ。多分公衆電話に向かうことまで計算ずくの可能性が
高い。そうなると・・・・・・」
圭一は踵を返した。
「山を越えたほうがいいのかもな・・・・?」
圭一はそのまま裏山の方へ戻っていった。
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「あ・・・・・・・・・・あれ・・・・・・・?この方角で良かったかな?」
3月とはいえ、山々には残雪がまだ深く残る雛見沢・・・・・・
あたり一面真っ白な上にうっそうとした木々が方向感覚を麻痺させる。
「もう道に出るはずなんだけどな・・・・」
圭一は迷っていた。
辺りはもう夕闇が迫っている。
あせればあせるほど深みにはまっていく。
「もしかして・・・・迷った・・・・のか・・・・?」
圭一は夏と冬とではこうも風景は違うのか?改めて思った。
深い雪の中を歩くのだから体力の消耗も普段と比べて激しい。
さらに低い気温が体力を奪っていく。あまりの疲労に思わずひざをついた。
「はあ・・・・はあ・・・・・はあ・・・・・・ち・・・・畜生っ!!」
自分の腿をぱぁんっ!!と平手で叩き、立ち上がろうとする。しかし、すぐにバランスを
失い、倒れる。
「もう・・・・・・駄目か?・・・・もういいや・・・俺は疲れた・・・・・・・
蝋人形にでも剥製にでもすればいいや・・・・もう俺は動けない・・・・・・・・
・・・・あ・・・眠くなってきた・・・・寝るか・・・・・な?」
圭一は大の字になり空を仰ぎ、そして目を瞑った。
その空が最期に見る風景になるとは・・・・。
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裏山に懐中電灯の明かりが六つ。
「?あっるぇ〜?誰か倒れてるよ〜?」
「あ、本当だ〜何でこんなとこに人が倒れてるのかな・・・かな?」
「こんな時期に裏山に入る奴なんて、よほどの物好きだな」
「でも、この人、見れば見るほど「圭一」さんに似てますわよ?」
「あ、本当なのです。瓜二つなのです。圭一は双子だったのですか?」
「あぅあぅ・・・本当にそっくりです」
「あ、実はこいつは実の弟で・・・・・・・・・ってこら!!」
「で、どうしようか・・・・・「この人?」」
「とりあえずは警察に連絡しよう」
「そうしよっか?」
「じゃあ、あたしたちは警察に連絡してくるから。レナはどうする?」
「とりあえずここにいる」
「わかった」
魅音たちはそういって一旦裏山を降りた。
魅音たちの姿が見えなくなるのを確認すると、うっすら「にやり」と不敵な笑みを浮かべ、
「圭一に似たそれ」を見ながら
こう言った。
「警告したのに・・・「逃げちゃ駄目だって」・・・・本当に馬鹿だね・・・・・・・だね?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・圭一くん?」
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昭和59年3月20日付け××新報・朝刊の地方版より。
雛見沢村にて身元不明の男性の遺体が発見される
3月19日、雛見沢村大字**の山中で、男性が倒れているのを近くを通行していた村人が
発見し警察に通報した。男性は近くの病院に収容されたが、同日午後7時ごろ搬送先の病院で
死亡が確認された。男性には目立った外傷は無く、現在警察では死因と身元を調べている。
死亡した男性は年齢が10代前半〜後半で身元が解かるような所持品は無いという・・・。
現在警察では事件・事故の両面から捜査を進めている。
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3月下旬のとある日。
今日は終業式。
明日から春休みだ。
明日から何しようかな〜?
部屋のカーテンを空け、朝日を部屋に入れる。
今日は朝から天気がいい。
朝日がまぶしい。
空にはすがすがしい青空が広がる。
残雪の白と青空のコントラストがくっきりとしていてきれいだ。
レナは自分の部屋のカーテンを開け、部屋の片隅を微笑みを浮かべながら見ると、こう言った。
「ん〜今日もいい天気だね?、だね?ケンタくんに・・・・・・・・・・・・・・・」
「圭一くん?」
(どーん!)←タイトル出現時の音(笑)
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