ガンパレードな妻たち

 麗しき勇気ある花たちの国、FVBはサムライの国である。女戦士も少なくないが、サムライの妻たちも多いのは事実。
 今日もサムライの妻たちは、夫の留守を守って戦い続けている。

「死ぬのはダメよ。浮気もダメです」

 そう背中に語りかけて夫を送り出すと、続いて子供たちを寺子屋に追い立て、一気に掃除洗濯を済ませてしまう。青空の下、家々の軒下にはためく洗濯物。
 そして、主婦たちの本当の戦いはこれからなのだ。

「今なら私は感じられる 広告のお買い得品が見える」

 財布を入れたショルダーバッグを肩に街へと出る。

「あなたの差し出すティッシュを取って わたしもいっしょに走りだそう」

 タダでもらえるものはもらいつつ、目的はぶれない。目指すはスーバーマーケット!

「幾千万の私たち主婦で あの個数制限を打ち破ろう」

 目指すは駅前デパート催事場!

「遙かなるバーゲン会場への階段を駆け上がる 私は今一人じゃない」

 いつしか集まる主婦、また主婦。妻また妻。

「全主婦抜刀 全妻突撃」

 皆が唱える。

「アール ハンドゥ ガンパレード」

 妻往くところお買い得品あり。

「家計のために マーチを歌おう」

 妻往くところお値打ち品あり。

「ガンパレード・マーチ ガンパレード・マーチ」

 今日も妻たちは獅子奮迅の活躍を繰り広げている。もしかしたら戦場の夫たちよりも過酷な戦いを。

「それが主婦の選択である」



(原稿用紙約2枚)