PBMプレイヤー列伝 |
東京は燃えているか? |
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■戦場の懲りない面々 まあ、『レーベンスラウム』は、数は多くないけれど、ひじょ〜に濃いメンツが集まったわけで、営業もそれなりに良かったらしく第2弾が決定。『レーベンスラウム1985』ということで、「第2次世界大戦で日本が敗北し、南北に分割された世界」が舞台となりました。 で、さっそく所属陣営の選定に入ります。 陣営は、世界第1の勢力となった「ナチス系全体主義の欧州連合」。世界第2の軍事力となったソ連の「共産主義陣営」、これには主な舞台となる北日本が含まれます。そして軍事力では欧州とソ連に負けながらも経済力でそれを補うアメリカの「自由主義陣営」と、その傀儡となった南日本です。とりあえず北日本と南日本の戦いがメインなので、欧州連合は除外。南日本やその宗主国アメリカのトップを別のプレイヤーらが既に立候補したということで、あっさり北日本に決定。こういうときは何か早い者勝ちというか、オークションみたいという部分があります。 そして僕は今回は戦略キャラを選択せず、戦術キャラでエントリーすることにしました。 前回が大変だったからパスしたいという気持ちもあったのです。この戦術キャラと戦略キャラの違いというのは、ロールプレイの違いなんですよね。同じ「ロールプレイ」のロール(役割)といっても、戦術キャラにおいては「職業や性格といった個性」の意味合いが強いですが、戦略キャラのロールとは「自分の陣営が勝利するために果たすべき役割」なんです。これを取り違えると、あの『クレギオン#9』のデネブ大統領のように「戦争のさなかに野球見物にいくアクションをかけて失脚」とか、海兵隊師団長のように「他の師団が激戦を繰り返しているさなかにショッピングに出かけて反逆罪」とかなっちゃうんですよね。チームプレイで、自分の果たすべき役割を果たしていないと、誰も助けてくれないのです。白洲次郎の言葉にも「地位が上がれば上がるほど、役得ではなく役損が増えるものだ。公私の区別はつけろ」というのがあります。 連続してそういうのも辛かったので、とりあえず戦闘ヘリコプター部隊の指揮官でエントリー。なんでヘリかというと、ざっと見渡して司令官、参謀はいて、戦車乗り、潜水艦乗り、戦闘機乗り、パワードスーツ運用部隊はいても、戦闘ヘリ乗りがいなかったからで、別にヘリに思い入れがあるわけでもなければ詳しいわけでもないのでした。そこで慌てて戦闘ヘリのスペックや運用のお勉強。インターネットでスペックや運用について検索し、ミリタリー系のビデオを見つけ、ホーカムのプラモデルを入手。いつもの一夜漬け。 |
■所詮、悪役 さて、ゲームは北日本が突如国境線を突破して南に侵攻したところから始まります。 侵略する共産軍……これ、絶対にワルモノです。戦力表もチェックします……あ、こちらから仕掛けたくせに予備役の動員もかけてないし、ソ連の支援もろくに受けてないし、後詰めの部隊を用意してないでやんの……。本格的に米軍の支援を受けた南日本が反撃してきたら、あっという間に潰走です。後詰めのないバルジ大作戦。完全に、最初は景気よく侵略し、後半で主役に叩きのめされる悪の陣営です。 「追いつめられた共産陣営が何をやるか、見せてやるわ!」 「最後に一花咲かせてやるぜっ!!」 プレイヤー・レベルでの最初のセリフがこれ。状況を把握したら、このセリフしかないでしょ? そもそも最初の作戦会議のテーマが「最終防衛戦をどこに張るか」。基本ドクトリンは「今のうちに進めるだけ進み、反撃されたらゆっくり撤退して最終ターンまで粘る」。敗北主義者です。ま、常に最善は尽くしますし、勝てるなら勝ちに行くけど、冷静に彼我の能力差は認識してたってことです。「負けても、その結果が日本再統一なら万々歳だよね」という言葉を聞いたときは耳を疑いましたって☆ ところが好事魔多し…っていうのか、なかなか負けないんですね。反撃がてんでばらばらなので各個撃破したり、幸運が味方したりで、一進一退はあるものの前進は続き、戦場が中部方面になるとプレイヤーの地元なのをフルに活かし、「あの国道なら戦車は通れる」とか「あの街道で迂回すればいい」とかアクションをかけているうちに、なんと東京と名古屋を包囲したところで中盤戦を終えてしまいます。 問題は内部にありました。最初から戦闘で勝てると思っていませんから、外交などのからめ手で戦争終結の方策を考えないといけません。ですから占領地の住民への虐待などはもってのほか。あくまで解放者でなくてはいけないのです。ところがそんなことにお構いなしの男がいました。家族を資本主義者たちに殺された市川司令です。 「こいつを空挺師団のトップに持ってきたのは誰だ!」 ま、どうせ悪役ですよ。 |
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■さようなら、北の白百合 戦闘は先が見えていますから、まだ勝っているうちに外交を有利に運びたいし、宣伝工作で相手国の国民を嫌戦ムードに巻き込みたいのですから、ここで登場するのが東京ローズ……じゃなくて北の白百合こと朝倉報道官です。 美しい声で前線の北日本軍兵士を鼓舞し、南の市民に平和を訴えかけるという重要な役割です。しかも南日本とそれを支援(支配)する米軍は、反撃のために自国の民間人が残っている市街地を丸ごと吹き飛ばしたり、原子炉を攻撃したりと手段を選ばぬ攻撃ですから、宣伝材料には事欠きません。 さすがに敵に目をつけられました。北の白百合はJCIAの工作員に拉致され、南へ連れ去られてしまったのです(自由の国の秘密機関が公然と民間人の自由を奪うのはいかがなものか)。 彼女が南に洗脳されて逆宣伝に利用されたりされては面白くないので、たまたま戦力再編で手の空いていた戦闘ヘリ部隊の小松崎中佐が潜入して助けに行くことにしました。本来の戦闘以外の話ですから、基本的には作戦に参加するPCの数の勝負で五分五分とみていました。それに大阪に潜伏している工作部隊も使わせてくれるということだったので、いけるかな…とは思ってました。 ところがふたを開けてみると、ソ連や朝鮮の潜水艦まで支援に繰り出しての大作戦となり、無事に成功。やっぱ北の白百合はみんなのアイドルだったんですね。「白百合を助けるなら、うちも空いている艦を回してやるぜ」ということで、続々余剰戦力が投入されたようです。救出した小松崎中佐は原隊に復帰し、救出された北の白百合はしばらく朝鮮で静養した後に職場復帰ということになりました。 朝倉報道官は悪逆非道な米帝の傀儡を糾弾する生き証人です。彼女みずからがこれを世界に伝えられれば、自由主義陣営の世論に対して大きな影響を与えられるでしょう。ちょうど開催されている国際会議に取材として参加するのも良いでしょう。彼女は、戦力的にはそろそろ頭打ちになる共産主義陣営にとって大きな力となるはずです! ……ところが、朝倉報道官はそのままゲームから消えてしまいました。 噂では、たかが非戦闘員の1人や2人を助けるために軍を動かすとは何事かという非難が身内から起こり、それで当のプレイヤーが嫌気がさしてしまった……というのです。 ああ、もったいない! 戦争は軍隊だけでやるのではないという、良い例になったはずなのに!(戻ってこいよお〜) |
■戦場童話 前回ではプレイの息抜きに「ジャブロー電波新聞」などというものを作成しましたが、今回は童話を書いてみました。もともとは反戦童話で南日本軍(米帝)の非道を皮肉り、嫌戦気分をプレイヤー・レベルから盛り上げようというのが表向きの口実。実際は、それっぽい宣伝童話なんて簡単に書けることが判ってやめられなくなっただけのことで……。 『赤い蝋燭と人狼』 冷たい暗い海で話をする相手もいない人魚は、海の外の明るい世界に憧れ、陸の上に子供を産み落とします。 赤ん坊は子供のいないロウソク屋をしている年寄り夫婦に拾われ、大切に育てられ、やがて美しい女性へと成長します。 ある日、娘はお爺さんの作る白い蝋燭を赤い絵の具で染めあげました。その赤い色には不思議な力と美しさがありました。この赤い蝋燭を山の上のお宮にあげ、その燃えさしを身につけて海に出ると、どんな大嵐でも必ず助かるので、飛ぶように売れました。 その噂は遠くの街まで伝わり、ある日、ひとりの警官がやってきました。 警官は黒々とした鎧のような防護服に身を包んでいました。 警官は黒々とした黒い仮面で顔を覆っていました。 黒い警官は店先の蝋燭を見ていいました。 「赤い蝋燭を人々に売るのはけしからん」 少女は答えました。 「蝋燭を売らねば生活できません」 黒い警官はいいました。 「では赤以外の色にするがいい」 ふたたび少女は答えました。 「赤くなくては暗い海は照らせません」 黒い警官はいいました。 「ならば仕方がない」 そういうと警官は拳銃を取り出し、1発パンと撃ちました。 少女は倒れ、真っ赤な花が咲きました。 警官は走って逃げました。本当は逃げる必要はなかったのですが、白い少女が蝋燭のように真っ赤に染まるのを見ていたら、なぜか怖くなってしまったのです。 闇のような鎧は心の弱さを隠すためでした。いつでも誰かに恨まれ、襲われるのではないかとびくびくしていたのでした。 闇のような仮面も心の弱さを隠すためでした。自分の顔を人に見られるのが恥ずかしかったのです。 警官は泣きながら、どこまでも走っていきました。その泣き声は狼の遠吠えのようにどこか寂しく、いつまでもいつまでも響いていました。 それから後、東京湾に入ろうとする船は、嵐によってことごとく沈んでしまったということです。 |
■耐えに耐え そろそろ終盤となりました。望外にも共産軍は着々と前進を続け、ついには名古屋を陥落せしめ、敵首都である京都まで空路30分の位置まで来てしまっていました。 もちろん、北日本軍がいつ負けても仕方がないことは本人たちがいちばん良く知っていました。アメリカの全面支援を受けている南日本に対し、世界戦争を嫌うソ連はあくまで内政不干渉を貫き、水面下の援助はしても本格的な援軍を送ってくれないのです。ですから、いったん前線を敵軍が突破したら最後、首都までカラッポの土地が続くだけなのです。 しかし、さすがに相手も敵は側面も背後もガラガラだと気づきます。いよいよ反撃開始です。さらに世界各地の自由主義国家が火事場泥棒……いや、世界の平和のために参戦しようと日本に向け集結……しようとして次々に海の藻屑となっていますが、そんな雑兵はともかく、まともに戦えば米軍はかなり強いのです。戦力も補給も、戦後のことを考えなければ幾らでもあります。そもそも最初に米軍が5個師団を投入!と聞いた時点で絶望していたのに、すでにその3倍の援軍相手に戦い、限界にきていました。北日本もいよいよ最後の時を迎えようとしています。 ところが北日本の川宮首相がこの期に及んで「やめる」と言い出しました。今回のPBMはリアクションの遅刻が多く、時間もとれないしモチベーションの維持もできないと、ついにサジを投げてしまったのです。気持ちはわかります。前回はほぼスケジュールどおりだったのに、今回は1週間くらいの遅れはザラです。しかも他陣営より共産陣営だけさらに1週間遅れたりしています。神経すり減ります。「おおお、このやり場のないヤル気はぁぁ!」という絶叫はしばしば聞きます(結局、その絶叫は最後まで続きました)。 でも団体戦でまがりなりにも代表と名のつく人に抜けられては、他のプレイヤーも困るんです。そもそも戦闘では最終的には勝てないのが前提ですから、勝っているうちに外交を有利に運び、ぼろぼろの社会システムの建て直しをしてもらわないと困るのです。戦争はあくまで政治の一手段なのですから、気持ちはわかるけど、がんばって欲しいのです。 そこでいよいよ北はてんやわんやになり、ここまでかという話になりました。 |
■ホビデ倒産 なにごとも「絶対」は無いんですねえ。 北は負けませんでした。最終回直前で、主催オフィシャルであるホビー・データが倒産してしまったのです。 マスターによれば、平成15年10月31日の金曜日に電話で「会社、つぶれたから」と連絡を受けて土曜日には会社が無くなってしまいましたとのこと。これでは北が負けるも、南が勝つもありません。 そんなとき、東京本郷で仮想戦記コンベンションIFCONが開催され、そこでレーベンスラウムのマスターとプレイヤーの多くが一堂に会することができました。当初の親睦会の予定が債権者決起集会に変更☆ そこで状況が報告され、その後の方針について説明がおこなわれ、第7ターンの結果についてマスターからの報告がされました。 簡単にまとめてしまうと、 ○米軍と南日本軍らによる九十九里浜への上陸作戦は成功! 房総半島は共産軍より解放された。 ○名古屋方面にも自由主義軍の反撃が行われ、名古屋方面での攻防は続いている。 ○九州では韓国軍や英連邦軍により、朝鮮軍が少しずつ押し戻されている。 ここまでが、自由主義陣営にとって良い話。 |
■パックス・ゲルマニアって知ってる? IFCONでこの話をしていたときに、ふいに武藤マスターが会場に向かって聞きました。 「この中の自由主義陣営の方で、“パックス・ゲルマニア”って言葉を知っている人?」 0です。誰も知りません。これほど大がかりな作戦がこれほど完璧に秘密を守られた例は他にないかもしれません。 これは今までアメリカと仲良しだった欧州が、その横っ面をひっぱたく計画です。中華民国で親欧派によるクーデターが成功。中国大陸に展開していた欧州軍は一気にアメリカ軍に攻撃をかけます。結果として中国方面に進出していた自由主義陣営の海上戦力は全滅。何も浮いていないという惨状。 一方、九十九里浜での上陸戦は大成功ですが、北日本軍渾身の飽和攻撃によって艦隊が壊滅的な打撃を受けてしまい、結果として被害は…というより残った数を数えた方が速いという惨状で、パックス・ゲルマニアもあって極東方面に残っている艦艇は、空母1隻と戦艦4隻。 アメリカと南日本は制空権を握っていますし、陸軍も快進撃しています。それでも損害があまりにも大きすぎます。 それから『レーベンスラウム3』については開発もかなり進んでいたということで、みんなを残念がらせました。 しかし、さすがは言葉のマイスター。第7ターンの結果報告にしても、プレイヤーを上手にもてあそんでいます。まず喜ばせ、がっかりさせ、また喜ばせ……特に結果的に損害が大きい陣営ほど最初に喜ばせるところがなんとも☆ |
■PBMプレイヤーはあきらめない まあ、そんなこんなでイベントは終わり、あとは思い出に浸るだけ。他陣営の掲示板でも別れの言葉と愚痴ばかり。 そんなときにレーベンスラウムの北日本陣営チャットに招集がかかりました。思い出話をするのか、ホビーデータを告訴するとかいう話になるかと思ったのですが、私、ひじょーに甘かったです。 そのときのログを一部編集して再録してみましょう。 > 現在進行形で千葉で第24親衛戦車軍団と向うの上陸第一派が戦闘中 > ああ、札幌ではお世話になりました。祭りは3時間で終了です。(笑) > そういや札幌の詳細は、どうなりましたか? > 3ターンあたりからK大将とF内相に不審な動きをおこしたら暗殺すると書いておいたのでまあ幾らかは役に立ったようです > まああんなもんでしょ。こっちの準備と投入した兵力が違いましたし > 殆どは、残敵のいないことの確認に費やされたのではないのでしょうか?>3時間(実質的な応戦・掃討時間は1時間未満かな? > 名古屋はどっこいどっこいの勝負? > なお、777Dは龍ヶ崎に降下布陣したところ、九十九里と鹿島からの上陸部隊の中間点だったらしく、包囲状態とか > 自力で帰ってこいや。>西方大隊 > さて、第668はどこへ展開するかな。多分また支援任務だと思うけど。 > え、ソ連機動兵力をつぎ込んで反撃するんじゃないの?(笑) > やはり京都強襲か!>668 > 付随部隊は2個機甲軍団>西方大隊救出作戦 > ソ連太平洋艦隊って、太平洋に出ても大丈夫だと思う? > もうでている北海道東方 > 一応確認するけどソビエトはまだ中立なんだね > 戦艦が対馬にいるけど > 制空権は分捕られているので多少の苦戦は必至>向うの空軍の消耗度が不明なため > やはりJCIA抹殺に動くべきか?>次回予定 終わってしまったゲームのログじゃありませんね……。 そうこうしているうちに、11月22日に同人で残り2ターンをやってしまうと発表がありました。諦めない者は報われるのですね!? |