PBMプレイヤー列伝

 鉄面皮の二枚舌たちのルンバ

■参戦しましょ
 やりそうにないけれど、実はいちばんやりそうだったホビーデータが、ついに仮想戦記PBMに参入しました。しかし、その第一報は、ダイレクトメールが届く現役プレイヤーより速く、仮想戦記ファンの方から流れてきたのです。
「仮想戦記PBMやるって? 詳しい話は聞いてる?」
「知らな〜い。それな〜にぃ?」
 ホビーデータの代表作「クレギオン」自体がもともとミリタリー色が濃く、#1では戦闘用の特別ルールを設けていたくらいですから、やりたい気持ちはあったのでしょう。ただ、マスターの余裕と、それに参加できるプレイヤーが採算ラインに届くのを待っていたというところでしょうか。
 やりたがるプレイヤーは多くないかもしれませんが、ホビーデータも既に1000人単位のプレイヤーが参加する大企画1つより、200人のプレイヤーが参加する小企画5つという方向に来ていましたから、問題はないようです。
 やがてパンフレットも到着。テーマは「第二次大戦で日独が勝利した世界での、第三次世界大戦」ということでした。主要国は日独米ソの四つどもえです。さっそく、どの陣営が良いか、参加しようという知人らに打診して打ち合わせです。本来なら、誰がどの陣営に所属しようが気にしない面々ですが、シミュレーション性が強いとなれば、できるだけ連絡のとりやすい人間は固まった方が、ストレスが少なくて済みます。とりあえず、集まったのは、当時はPBMなら何でも参加していた僕、商業PBMは「風雲涌起」以来というていとく、同じく「蓬莱学園の冒険!」以来というぴーちの3人。ちょっと寂しいけれど、ていとくがマキャベリなんかの外交ゲームをオンラインプレイしている相手とか、仮想戦記がらみの人脈で何人か話がつくかもしれないということでした。
 とりあえず、いる人間で相談。
「ドイツは?」
「なんかむちゃくちゃ濃いミリタリーマニアが集まりそうだからパス」偏見ですね。
「ソ連は?」
「兵器が格好悪い。特に海軍と空軍におもしろみがない」偏見ですね。
「日本は? 装備も充実しているし、戦いどころも多そうだよ」
「待ち。これ」
 ぴーちが初期設定の分析報告を差し出しました。日本の初期設定の師団編成を調べてみると、予想される人口に比べて多すぎることが判明。兵隊が多いのは良い事じゃないかと思うかもしれないけれど、理詰めで分析するなら成人男性の大半が軍務に服している計算になるのです。つまり兵員は多く、最先端装備は充実しているけれど、それを支える経済構造が貧弱という理屈になります。オフィシャルがそんなとこまで意図しているかどうかは別だけれど、とにかく「戦艦や戦闘機は格好いいけれど、歩兵が自転車で移動するのはイヤ!」ということで否決。
「…なら、アメリカしかないよ。西海岸を日本にとられ、東海岸をドイツにとられ、仮想敵に挟まれている最悪の布陣なんだけど…」
「なんとかなる!」
 なんていい加減な理由で陣営も決まり、興味ありそうな人間を片っ端から英米陣営に引き込んでいったのです。もちろん、これまでのPBMでここまでのネットワークを作ったことはありません(「数の力でくだらないアクションを通した」と言われても面白くありません)。しかし、このPBMは、シミュレーションで戦闘の勝敗を判定し、ポイントで勝者を判定するというシステムです。つまり純粋な戦争ゲームであり、団体戦です。チームワークが取れていてなんぼの世界ですから、同じ陣営内では可能な限り統率が取れていなければ話にならないのです。
 はっきりいって、あの「88」のときですら、ここまでの集団戦はやってませんね。


 なっちゃんのこと
 週末に遊びに来ていて、そのままなし崩しに「共栄圏」に参加することになっていた。どの程度なし崩しだったかというと、キャラ名を決めるのに我が家の子供が見ていた「星のカービィ」をそのまま使い、カービィ・スターにしてしまったくらい。能力値も周囲の「おまえはハンターキラーだ、細かいこと考えずバーンといけ!」の誘いにのって、ありたっけを対潜攻撃に投入してしまった。
 しかし、そのアバウトさが吉と出て、「レーベンスラウム」では名うての護衛艦隊司令官としてドイツのUボートを片っ端から沈めてまわり、大西洋を独力で清掃してしまう。まるで星のカービィの吸い込みみたい…。終身撃沈数300以上、息をするようにUボートを狩る化物。
 普段のゲームではそんなアバウトなこともなく、たとえば「特命転攻生evo.」では能力アイコン「失敗プログラム×3」のアンドロイド生徒として……やっぱりアバウトだ。

 

■足場固め
 この仮想戦記PBM『レーベンスラウム〜共栄圏』は歴史に名の残っている重要な政財界や軍の指導者をプレイヤーに操らせるVIPシステムを採用していました。これは『クレギオン#9』において完成したシステムですが、そこではキャラクターの自由設定の内容がそのまま第1回のアクションとして採用されてしまったという経緯があるので、状況もルールの全貌も見えないとはいえ、おろそかにはできないのです。
 ていとくは米陸軍のクルーガー将軍で、ぴーちは同じくルーズヴェルト将軍でエントリー。僕はなんかしら「政治家だ」と言われ、チャーチルかアイゼンハワーだなあと思って申し込んだら、チャーチルは競争相手がいて落選。中部アメリカ合衆国大統領、ドワイド・アイゼンハワーに決定。
 これって考えてみたら結構つらいポジションだよね。なんといっても「第二次大戦で枢軸国側が勝利した世界」の話ですから、負けた合衆国にろくな戦力などありはしません。かつての軍主力は降伏した母国を見限ってカナダと南米に潜伏し、残された合衆国は東はドイツの傀儡政権に、西は日本の傀儡政権に分断された残り部分。非武装中立と言えば聞こえは良いけれど、日独の緩衝地帯として残されたようなものです。手元にある戦力は動員もされていない州兵くらい。これでどうして戦いに勝ち残ったり、外交で優位に立ったりできるでしょうか?
 その間に、クルーガーとルーズヴェルトはそれぞれ北米と南米を担当することに決め、さらに隠居しかけていた四国の秋山パパを引きずり出してアンダーソン空軍中将を押しつけていました。これであとはアンテナを張り巡らし、英米連合でエントリーしてくるプレイヤーらと積極的に連絡を取り合うようにすれば、なんとか乗り切れるかもしれません。
 自由イギリスのチャーチル首相は、幸運にもクルーガーのマキャベリ仲間だということが判明。遠隔地であるけれどインターネットで簡単に接触できました。さらにパットン将軍も間もなく発見。しかし海軍はちょっと不安です。バーク提督は連絡が取れましたが、ハルゼーとニミッツはプレイヤー不明なのです。転送サービスで連絡してもなしのつぶて(あげくの果てに全体の方針と逆の動きをし始めます。気持ちは分かるけどね)。
 どうやらプレイヤー数として英米連合はさほど多くはないようです。定員200名で、実参加者がおよそ120名前後という段階で、日本軍が半数の約60名、推定40名がドイツ軍、英米は20人前後のようです(ソ連はもっと少ないけど、そのときは5人程度はいたという話を聞いた)。しかしバランス的に悪くはありません。政治家、陸海空それぞれの上級指揮官、前線指揮官がきれいに揃っていますし、頭数は少ない方が連絡も取りやすいはずです。

 最初のアクションを考えながら事前交渉です。とりあえず州兵を動員しつつ、自由アメリカ軍(米州機構軍)と和解するアクションをかけ、その一方でドイツや日本との和平工作に走ることに。本国で二正面作戦をやろうなどという馬鹿げたマネをしたくなければ、とりあえず日本かドイツか、少なくともどちらかとは和解しないといけません。
 ところがドイツのヒトラー総統は5つの戦線を同時に開くというマネをしながら外交には消極的。余裕です。けれど幸いなことに日本の吉田首相は、アメリカとの講和に前向き。それどころか、全戦力の8割を援軍に回してくれるというのです。
 ところが、うまい話は常に疑うのが外交ゲームのプレイヤーの性分です。本当に来るのか、来ても助けるフリして後ろから刺すのじゃないかとか。
 悩んでいると、ルーズヴェルト将軍いわく「1ターン3ヶ月で言うだけの師団を太平洋を渡すのは物理的に不可能ですし、それだけ引き抜くとなったら、日本はインドやソ連の戦線を放棄することになります」。太平洋を越えての師団移動がどのくらいのペースで可能なのか、まだルールも明確でありませんでしたから、一般常識から判断するしかありません。
 気にしても仕方がないと腹が据わったので、「本当にそれだけの援軍が到着するなら、指揮権でもなんでもあげます」と回答。いきなりの投げやりモード。いいのか?


 ぴーちのこと
 「88」から参加しており、自宅も名古屋市内で出身大学も同じと、案外と近い関係だったのだが、彼と知り合ったのは「蓬莱」も終わりの頃だった。何故かというと「88」では彼は敵対する怪物側だったからだ。毒入り桃缶などをばらまくという悪事をしていたらしい。“ぴーち”の異名はそのときからのもの。
怪しい人 「蓬莱」では港湾委員をしており、学園の海上警備と海運と港湾管理と税関と海外情報収集を取りしきる中核にいた。あの、とんでもない学園の生活資材や体育祭の備品などの供給を維持するための輸送計画を立案し輸送船団を編成したりしていたのだ。最終的には委員長代理にまで上り詰めたが、あくまで黒子に徹し、けっして表舞台には出ていない。李一族に婿いりして李桃桃となり、李朱玲の「胸」にしかれるというウワサもあったけどね。
 その後、10年ほど商業PBMからは遠ざかっていたが、『レーベンスラウム』で復帰。ルーズヴェルト将軍として世界中に展開する英米連合全体の補給と部隊移動を掌握。『レーベンスラウム1985』では謎の潜水艦乗りとして、今度は米軍の補給網を寸断する方に回って遊んでいる。
 もともと囲碁の人であるせいなのか、1手先2手先を読むのがうまく、細かな数値データを掌握するのも得意。思考型からアクションまで「対戦ゲームでは真っ先に潰すべし!」「ぴーちに御仏の情けは無用!!」と言われつつ最後まで勝ち残る、敵に回すとイヤな相手。周囲では「交渉の口先三寸で相手をかき回すヤツは多いけれど、ぴーちは交渉もしないで他人を手の平で踊らせるからなあ」と言われている。

 

■太平洋は広かった
電波新聞 ゲーム開始。日本の援軍は……はやっぱり来ませんでした。輸送能力的に無理かどうか以前に、NPCである議会や世論の反発が激しかったらしいのです。VIPでもNPCが無視できないのは『クレギオン#9』で認識させられたセオリー。吉田首相は失脚の危機に。
 さて、日本以外との外交はというと、ドイツ支配下のアメリカ共和国のケネディ大統領は友好的ではあるけれど、ヒトラーの傘の下から逸脱するには迷いがあるよう。ニューヨークに核を落とされると困るので頭を隠して伏せている…といった感じ。ここで完全に親ナチスに走られ、共和国軍を北米ドイツ軍の支援に回されても困るので、今は何もしてくれないのが最大の貢献です。動かなくてもいいですからねと伝える。
 でもアメリカは米州機構軍と協力することができました。米政府が上に立った…というのではなく、それぞれ外交と軍事で協力していこうという対等の関係でアメリカ再生機構とかいうのを発足(入れ知恵はクルーガー将軍)。それにカナダの自由イギリス軍とも連携し、なんとかドイツ軍の最初の猛攻をくい止めたのでした。えらい。それに援軍は来なくても後ろから刺されないよう同盟は組みたいので日本との交渉は継続。ソ連やインドなどとの接触も続けつつ、ウルトラ作戦の発動です。
 ウルトラといっても、ウルトラマンでもなければ暗号機のことでもありません。最終目標は東海岸、ニューヨーク!…というところから付けられた安直なコードネームです。しかし以後、英米の作戦名は「V作戦」だの「東方不敗」だのますます安直かつ怪しくなっていきます。
 さて、同じ英米連合ではあるけれど、アイゼンハワーとチャーチルは独自の外交を展開していました。まあ、交渉の材料になるならアメリカ大陸以外の利権はすべて放棄していいアメリカと、イギリス本土を奪回することが至上命題のチャーチルでは足並みを揃える方が話が難しいですわね。
 陸の戦いは戦術PCが不足していることもあって一進一退ですが、海の戦いはアメリカの異常なまでの生産力を発揮して南米を拠点に月刊体制(北米はまだまともな港がない)。イギリスも海軍PCが参戦し始めた上に、アメリカのUボートキラーが猛威を振るっているため海上優勢を確保できそうです。
 ところでチャーチルがイギリス傀儡政権のチェンバレンと積極的に交渉しているという話が伝わってきました。いがみ合って喧嘩するばかりが能ではなく、からめ手で妥協点を探っていくつもりのようです。ただ、これに情報部のティプトリー長官が懸念を表明しました。チャーチルがチェンバレンと和解し、イギリス連邦の完全復活を代償に枢軸に寝返ることもありうるというのです。なにせクルーガーのマキャベリ仲間ということは、たたき上げのマキャベリストと同義です。アイクはまさかそこまでとは思いましたが、念のために保険はかけるというCIAを止める必要も感じませんでした。信用するけれど、万が一の保険はかけておく……保険ってのはそういうものでしょ。誰も病気や怪我をするつもりで保険に入りはしません。
 ついでにクルーガー将軍より融合弾実験の提案があったので承認しました。

■ライブ難局会議
 さて、オフィシャルイベントでライブ難局会議というものが開催されました。各国首脳PCのプレイヤーが交渉や演説をおこない、優秀プレイヤーにポイントが与えられるというもので、もともとは傀儡英国のチェンバレン首相がアクション内で提唱したものです。
 ところがここで大波乱。会場にいきなり自由フランスのド・ゴールが出現。NPCだと思っていたらPCだったの?
 不審なド・ゴールはいきなり「ドイツと野合する英米は、共に戦うにあたわず」と席を立って退場。満場の拍手。いかにもド・ゴールらしいパフォーマンスですが、これにチャーチルが態度を硬化。しかも、このパフォーマンスでド・ゴールがポイントを獲得し、さらにインターネット上のオフィシャル記事にフランスがいきなり日・独・英米・ソ連に次ぐ5番目の陣営として表記されたので、ますますチャーチルは怒ります。
「ならば、イギリスは以後フランスに対して補給も支援も何もしない。一国として勝手にやりたまえ」
 こちらにしても4陣営の戦いのはずが、いきなり身内から分派されてはたまったものではありません。亡命政権とはいえチャーチルのイギリスはカナダという拠点を抱えていますが、フランスはまったくの根無し草。今まで面倒をみてやっていたという自負があるだけに怒りも大きいようです。
 さらには仲介に入った吉田首相が、フランス軍を援助してやって欲しいというだけならまだしも「自由フランスが英米連合を離脱することだってありうる。オフィシャルにルール上、可能なことを確認した」と付け加えたのが火に油。そんな確認するほど前から日仏はつながっていたのかということに。戦力的には自由フランスは小さく、無視できないことはないですが、英米連合が陣営内部で分裂しているイメージをマスターに与えたくないし、なにも好きこのんで内部でいがみあったり疑い合うことはありません。そんなの面白くないでしょ?
 そこで仕方がないので、今度はアイクが同盟国として仲介に奔走しますが、もとよりはっきりした考えがないもので、チャーチルの話を聞けばその内容に納得し、ド・ゴールと話せばド・ゴール色に染まって右往左往。なんにせよド・ゴールの言い分は筋が通っています。
「自分は4ターンからの参加なので、それ以前はNPCのやったこと。むしろ自分はNPCの暴走をいかに陣営の不利益にならないよう気を使いながら、辻褄をあわせて修正しているだけだ(実際、リア上はその通りでした)」
「ライブ難局会議の内容は、当事者同士の合意が無い限り、この場限りとのマスターの説明を聞き、ウケ狙いに走っただけ」
「英米プレイヤーが打ち合わせもなにもしてくれないので、日本と相談することはある。自分は英米連合の枠組みできちんとゲームを楽しみたい」
 アイクはあらためて当日のルールを確認し「ライブゲームの結果は原則としてその場限り。ド・ゴールは別に英米連合を離脱したと宣言したことにはなっていない」と確認し、他のプレイヤーに伝えます。しかし、いったんこじれた関係はなかなか修復できず、最後は「英仏の仲の悪さは伝統」と開き直り、以後は自由フランスへの補給はアメリカが担当することで決着。ということは、今度は英米連合軍の補給や師団移動を管理しているルーズヴェルトが板挟みで苦悩することになるだけなんですけどね。


 チャーチル氏のこと
クルーガー ていとくのマキャベリ仲間。甘いものとメイドが好き。マキャベリ仲間ということは、ゲームに参加しているときは常に長期的な損得と短期的な損得をしっかり計算していてシビアだということ。“お友だち”だからといって油断していると、背中からズブリと刺されても仕方がない。
 『レーベンスラウム1』では自由イギリスのチャーチル首相として英米連合の一員として第三次世界大戦を戦い抜いた。その間、マキャベリストの面目躍如で、敵対していたドイツの傀儡政権であった英国チェンバレン首相と水面下の交渉を続ける一方、英国の裏切りを警戒するCIAに対しても警戒を怠りなく、ついに英国統一を成し遂げた。とはいえ、その祖国再興の宣言の最中にUボートによる反応弾攻撃を受けロンドンごと消滅する。合掌。
 『レーベンスラウム2』では北日本軍の空軍を統括し、少ない戦力をやりくりして最後まで戦い抜いた。
 

■既に外交はぐしゃんぐしゃん
 V作戦終了。
 南北に別れてVの字に進撃した連合軍がニューヨークでVサインとはいかず、あちこちで大損害。絶望か!? なんとかドイツ軍の足止めをして戦力再編しなくてはいけません。
 そこにヒトラーから交渉要請が。アイクは乗り気でないけれど、軍部に言わせるとアメリカ再生機構軍としてはV作戦の損害を回復する猶予が必要であるし、マルチゲーム的には現在トップにもっとも近い日本を蹴落とすための下準備も選択にいれる必要があるというのです。ドイツにしてみれば、中東戦線と東部戦線で押しまくられているので、北米は停戦し、部隊をヨーロッパに振り向ける必要があるらしいのですが…。
 今、日本と軍事同盟の締結を進めているのに、そんなことをしていいんですかあ?………あ、問題はないらしい。
 というのは、あくまで北米に限った停戦であること。名目上は難局条約でも確認された捕虜交換のための措置であること。そして北米の部隊を欧州戦線に向けようにも、大西洋の制海権は英米連合が抑え、しかもドイツ輸送船団が壊滅状態に近いことから事実上不可能だからだそうです。約束通り停戦撤退が実現するとしても、北米ドイツ軍はどこにも行けない……ということですか?
 念のためにルーズヴェルトが「撤退のための輸送船の手配はこちらでしなくてもいいか」と聞きましたが、余計なお世話という感じだったらしいです。
 外交的に問題がないことが判明したので、とにかく交渉再開。でも二枚舌といわれても仕方がないわな。
電波新聞 ドイツは後退はしたいけれど、完全に北米から撤退したくはないらしい。その代わり、停戦の追加条件に「アメリカ共和国をアメリカ再生機構に加盟させてもよい」と提案してきました。ところが、念のために東米の方に直接確認してみたら当の共和国大統領ケネディには何も言ってない様子。慌てたケネディが問い合わせたのですが、どういう聞き方をしたかは知らないけれど、いきなりヒトラー総統はケネディを大統領職から罷免し幽閉すると言い出しました。わぁ、まるで本物のヒトラーみたい。
 各国にもケネディを首にするので各国は相手にせぬよう通知してきました。それは向こうの都合だけれど、こちらは相手の言葉が信用できなくなりました。少なくとも、共和国の話については話半分で聞いておきましょう。フロリダなんぞに部隊を残すというのも最終ターンあたりに一気に再侵攻をかける伏線でしょうか。
 ところが戦闘序列を確認してみると、戦況はリアクションの内容ほどには酷くないようです。情報担当のティプトリーCIA長官によれば「リアクション描写では大損害ですが、数値的にはまだ戦えます。ドイツと強気で交渉してOKです」とのこと。ルーズベルトも「いざとなったら戦闘再開でもかまいません」と外交をバックアップ。
 まあ、結局、いろいろ譲ったり譲られたりしながら話がまとまったのですが、トップ交渉から事務レベル協議に移った途端に話がおかしくなっちゃいました。了承事項のはずの内容が担当者に届いておらず、単なる停戦で撤退はないとか、いい加減な話になっているのです。怒ったクルーガー将軍が暴れたため、ヒトラー総統からクレームが来るはめに。
「大事な交渉の場に、話がろくに通じず、会見をぶち壊そうとするような者を送り込むなど言語道断」
 後々まで総統は「アメリカは縦横の連絡が悪い」と文句をたれましたけれど、こちらは交渉の内容を一言一句そのままにリアルタイムで担当者に転送し、その上で全権を与えて送り出しているんで、これ以上はどうしようもありません。ときにはチャットで交渉している背後に、本来なら直線距離で50Km先、150Km先に住んでいるはずの人間が聞き耳たてて、その都度相談しながら返事してましたから、政府と軍部の間の意志不統一は基本的にありえないのです。
 また日本との同盟も推進しなくてはいけません。綱渡り外交というか、二枚舌外交というか、人間的に誉められたもんではありません。ただ「嘘は言わない」ということを前提に交渉しました。相手が勝手に誤解するのは自由だし、約束してないことは何してもかまわないけれど、約束は守る。後で余所から揚げ足取られないためにも、それが最低条件でした。
 融合弾実験については、マスターは「何もこんなことしなくても…」と呆れた口調というかニュアンスの文章だったけれど、プレイヤーとしては必要悪。他国でも融合弾の開発が始まるとかいうペナルティはあったのかもしれませんが、この実験は時間稼ぎに役立ってくれた気がします。他陣営がおおむね、この壮大なハッタリに乗ってくれましたからね。
 実はこんなもの運んでいって落とせるのか?というほど巨大な融合弾。はっきり言って現時点で実戦投入は無謀という代物でしたが、「アメリカはスゴイのを持っていて、とにかく何をするか判らない」と相手が思ってくれたら成功。日本などは融合弾の実体に薄々感づいていたかもしれないが、ドイツなんかが自分が使われる身になったらとヒビってくれればいいのです。
 そのせいかどうか知らないけれど、ドイツは今次大戦初の反応弾攻撃を北米戦線ではなくソ連に対しておこないました。1年先の軍事的優位より、1ヶ月先の時間稼ぎです。


 市川司令のこと
作戦地図 末期戦が大好きな前途ある若者。まったく意識していなかったが、実際に会ってみると年齢が一回り以上も下で、実は世代的には彼の父親の方に近いという恐ろしい罠。それで年寄りのいらぬお節介で、落ち込んでいるときに『ザンボット3』のラスト3話の連続上映会をしたりしては「僕をそんなに落ち込ませたいんですか!」と怒られている。
 『レーベンスラウム1』ではアメリカ再生機構のコマンドとして、ていとくの無理無茶無謀な作戦を泣きながら遂行。通称“片道キップの男”。陰でこっそり中共主席として抗日運動の指揮を執り、帝国日本を泥沼の百年戦争に引きずり込んだ立役者。
 続く『レーベンスラウム2』では北日本軍の市川司令として、作戦の立案指揮は冷静にして大胆、民政においては狂気にして非情というキャラを演じ、一方でこれまた中共主席で大活躍。大陸に展開した米軍を消耗戦に陥れたが、外交交渉では相手の勝手に翻弄された面も。
 口癖は「クーデターしていいですか?」。
 


■みんな偏執狂だ?
 ゲームが盛り上がってくると、情報戦も重要になってきます。
 交流用掲示板がフリーボードから会員制に移行するのはあっという間。会員制掲示板からメーリングリストへの移行は瞬時。そのメーリングリストも幾つも作られては闇に葬られていきます。こうなると自軍の全貌を把握しているのは何人もいません(アイクは既に蚊帳の外)。
 ここでいちばん動いていたのはルーズヴェルトです。もともとは南米の米軍を統括するのが役割分担でしたが、いつの間にか全米軍の部隊移動をコントロールするようになり、さらには全同盟国の補給輸送を管理するようになって多忙なはずが、気がつくと正規の外交ルートから裏のネットワーク、さらには敵陣営の内側まで魔の手を伸ばしていたのです(味方の参謀にいうセリフじゃないね)。
 その情報戦で、もっとも気を使ったのは自由フランスとの交渉。ドゴール出現以後、動向がおかしくなってきたのです。チャーチルとケンカするくらいならいいですが、英米連合の内部情報がどこからか日本側に筒抜けになりはじめ、日本も同盟国だからいいと思っていたら、さまざまな交渉のためにドイツや日本などのプレイヤーと接触した者たちがあちこちから「フランスには気をつけなさい」と忠告されて戻ってくるのです。ド・ゴールの自由フランスは英米の情報を日本へ垂れ流し、その対価に日本軍より援軍や物資を受け取る。日本はその情報を北米ドイツ軍へ垂れ流すといった構図だというのです。これが情報操作だとしたら見事。
 ただ放っておくわけにはいかないので、ド・ゴールに「自由フランスが独自の外交として日本と接触することは仕方がないけれど、日本からドイツへ情報が流れるふしがあるので注意して欲しい」と告げたのですが、逆に「そんなことはしていない。そもそも人に話す価値のある情報なんか教えてもらっていない。フランスは英米連合の連絡網から孤立している」と反論されてしまいます。
 各方面に確認すると、確かにCIAの指示で情報は制限していたとのこと。
自由フランスも重要な友軍です。ちゃんと情報も物資も送りなさい」
 そこで後始末をするのがルーズヴェルトの諜報網です。もはや誰が情報局長だかわかりませんね。将軍はありとあらゆる情報の細部を変えて多方面に流し、それがどういうルートで流れているかチェックし続けていました。そうしたらフランスは真っ黒です。ド・ゴール方面だけに流した情報で、ドイツ軍が防衛ラインを引いていたとリアで確認されちゃったのです。
 さすがに本人に説明を求め、例を幾つか挙げると「そういうことはあったかも知れないが、同盟日本に作戦の打ち合わせで聞かれたら答えざるをえないじゃないか」と弁明。了解と答えた後、もう他のプレイヤーを押さえられないからこれからは気をつけてねと告げて、その件は決着。それから間もなく、チャーチルとド・ゴールが和解。
 ただ、そのときにチャーチルが告げた情報が30分後には日本軍のメーリングリストでだだ漏れになっているのを確認。あーあ。でも、まあ、ドイツ軍や日本軍のメーリングリストの内容を知っているアメリカもなんだかねえ…って感じ(ただ、ド・ゴール閣下の名誉のために言うならば、そのアクションは常に英米連合の一員としておこなわれていたとマスターがゲーム終了後に保証しています。)。
 信じられないといえば、チャーチルも同様。CIAはチャーチルに監視をつけて、こちらにも「裏切りの証拠が出たなら暗殺せよ」とやっているし、チャーチルの方もしっかり味方であるアメリカへの防諜工作は手を抜かず……。親しき仲にも礼儀あり、同盟者にも監視あり。マキャベリストって、こんなんばっかりですか?


 ていとくのこと
クルーガー もともと読んだり話したり編集したり執筆したりのSF畑の人。シミュレーションゲームもやりこんでいるけれど、商業PBMの表舞台に出るようになったのは、つい最近。でも、かかわったのは案外と古い。同人PBMのマスターとしても実績はかなりあるのだけれど、「蓬莱」末期からその後の展開の過程で、学園独立に関するアドバイザーとして、外務委員長、独立問題調整委員長の知恵袋として暗躍していた。
 その後は同人PBMとしては最大規模の部類に入る『封神機ギャラルホルン』の現場監督に就任。マスター、イラストレイター併せて20余名、プレイヤー120名という企画を取り仕切った。
 その後、仮想戦記方面にも力を入れるようになってPBMから離れるが、仮想戦記PBM『レーベンスラウム』で復帰(プレイヤー・デビューは「風雲涌起」だったかな)、クルーガー将軍として英米連合の陸軍の采配を行った。続く『レーベンスラウム2』においても北日本軍の福田将軍として絶望的な状況を掌握し、陸軍の作戦立案の中核となっているが、JCIAのテロで重傷を負いながらも車椅子で指揮するなど、なかなか波瀾万丈。
 

■みんな裏切り者
 既に終盤戦です。
 北米のドイツ軍は停戦はしたものの、ドイツの北米派遣軍は総統命令を無視して北米に居座り、それを総統は追認し戦線は泥沼になっています。
 それも予想のうちだから米軍はかまわないのですが、米軍プレイヤーが囁き合うのは「ドイツ本国が困るんじゃないか?」ということ。中東戦線や東部戦線をどうするつもりだろう?…と思っていましたが、それは「現場の判断というロールプレイだ」とか「北米派遣軍の司令官は日本とお友だちらしいんで、北米でごねて、アメリカとドイツ両方を困らせようという腹みたいです」とか、こういう怪情報が乱れ飛ぶのが、このPBMの怖いところ。真相はいかに?
 そんなところに今度は日本の吉田首相から提案が。日本は中国戦線に戦力を回さないといけないので兵をひきあげる。その代わりに交渉でテキサスを占領しているドイツ軍を撤退させる。条件はいったんテキサスを中立化し、その後石油利権は日本に、国としては米州連合に加盟させる形になるというもの。アメリカとしては戦わずに支配エリアが増えるし、日本は資源ポイントが獲得できるから得だろうというのです。
 日本のメリットは、ドイツが約束を履行しようとしまいと必要な戦力を引き抜く口実ができ、成功すればテキサス油田が手に入る。ドイツ軍が裏切って攻勢を仕掛けたとしても失われるのはアメリカの領土なので損はない。
 アメリカのデメリットはドイツが約束を破れば、貴重な3ヶ月という時間と領土を失う。相手が約束を守れば、これ以上の損害無しにテキサスを手に入れられるが、ドイツがテキサスの戦力をどこへ持っていくかが問題。選択肢は「本国へ帰る」「北米へ移動してニューヨーク戦線のテコ入れ」「南へ移動してパナマ運河の奪取」。本国帰還については制海権を日英米で抑えているので問題ありませんが、それ以外は「停戦せずにテキサスで攻勢」という可能性も含めると、米軍は3つの可能性に対応できるよう待機しなくてはいけません。ただでさえ不足しがちな戦力を必要以上に予備戦力に回さないといけないのです。大損ですね。まだ戦って負けた方がマシです。
 それにそもそもドイツ軍にメリットがあるのでしょうか? まあ、北米のドイツ軍が欧州へ帰還することを諦めているなら、中立化したテキサスから自分たちも石油を購入できることが利点でしょう。それ以外にはありません。でも、吉田首相は「今回の交渉相手のゴルツ将軍は総統から全権を受けている。心配ない。信用できる」といいます。あの〜、それって思いっきり信用できないんですが? 昨日の今日ですよ…。
 困ったアイクはクルーガー将軍とルーズヴェルト将軍に相談。「日本軍が帰りたいなら帰らせろ。やっと自分たちの状況が見えてきた証拠だ」「後始末はなんとかする」との言葉をもらい、吉田首相に回答。軍事同盟を締結し、共に世界の民主化と民族自立を目標にドイツと戦い抜くことを誓った盟友・日本の宰相の言葉だから信用したのですよ………。

■それは誰もが知っていた
 そして翌ターン。
 案の定……いつでも可能な限りの展開を予想し、思いつく限り最悪の事態にも対応するようにはしているのですが、毎回毎回の「やっぱり…」という展開にはそろそろうんざりしてきます。ともかく、テキサスは中立化したものの、英米連合には加わろうとしません。突如PCが出現したテキサス共和国のブッシュ大統領が、今まで彼らを助けるべく戦っていた米軍を追い出したのです。なんだいなあ、ひどい話だなあ…と思っていたら、「ドイツ軍の掲示板に書き込みしてました。ブッシュは親独PCです」「ブッシュのプレイヤーは北米日本軍の元締めの田中将軍です」とのタレコミが。
 こういう仕打ちをされたら、同盟日本に協力してあげようという気はなくなりますよね。これまでもアメリカは日本に内緒で事を進めることはありましたが、決して日本に不利益になるようなことはしていないのに…。そこで中国共産党のマオさんと、朝鮮半島のキム元帥に、「日本なんか困らせてあげなさい」と指示。国共合作も支持することを表明。ソ連やイタリアやスペインとの交渉も進展させることにしたのです。ただ、これも「日本と約束したことを破ってはいない」のですけどね。だって、アメリカは日本と共に「民族自立」を宣言したのですから、それぞれの決定は尊重すべきです。
 さてドイツ軍ですが、中東では日本と停戦にこぎ着けたものの、東部戦線では数十発の核攻撃をおこないながらもソ連軍をくい止められず崩壊寸前。ソ連が最終ターンには単独でベルリン突入か!?という勢いで、そのベルリンではクーデター派とヒトラー派で内戦に突入…といったありさま。ああ、ゴルツ将軍の北米派遣軍がおとなしく帰還の道を選択していたら何とかなったかもしれないものを。
 さて戦況はともかく、ドイツとのクーデター派との交渉も考えねばならず、彼らが勝った場合は講和に応ずることになりますが、日英で講和条件がおりあわず大もめ。日本はなんかフランスを子飼いの手下のように言ってますし、交渉でもなんでも常にフランスの利権を強行に主張し、主語はいつでも「日本とフランスは」。欧州連合へのイギリス加盟にも強硬に反対しています。もしかしたらイギリスを排除した欧州連合において、傀儡フランスを使って日本の影響力を行使しようというのでしょうか?
 一方、北米全面で大攻勢がかけられました。拠点奪取ではなく、あくまで敵ドイツ軍部隊の損耗を目的とするものです。さらにヒトラーによって幽閉されたケネディ大統領の救出作戦が実施。大統領は祖国にとどまることを選びましたが、息子が英米連合に亡命することになったのです。

■締め切り際の魔術師
 まあ、辛いゲームでした。
 戦況が苦しいとか、交渉が難しいというのもありましたが、みんなぎりぎりまで粘って交渉するんですよ。一応、アクション作成期間は2週間あるはずなのですが、本当に最後の最後まで……具体的には最終アクションなら2002年4月22日が締め切り日ですが、その日の23時30分くらいまで電話やメールで意見調整や交渉を続け、日付が変わる10分前に郵便局の夜間受付で速達出して消印を押してもらうというのがザラでした。
 いや、そういうことするPBMは他にもありますし、やる人は多いでしょうけれど、それまで2週間、何十本もメールをやりとりし、メーリングリストの情報を得て、方針を決め、交渉し、その結果を同じ陣営のプレイヤー(それも可能な限り全員)に伝えないといけないのです。1人で勝手にやるのと違います。チームプレイです。攻撃する!と決めていた相手を「やっぱり攻撃しない」ということになり、慌てて連絡したら「やっぱり交渉が最終段階で決裂」…って、これをきちんと伝え損なったら作戦全体が崩壊しかねません。
 最後の24時間でどれだけの作戦や外交交渉がひっくり返り、慌てて再調整の連絡に奔走する羽目になったことやら…。
 あるいは「戦略ポイント」というものがありました。大きな作戦を実行したり、開発や外交などを推進する際に、各プレイヤーが持つ戦略ポイントを必要なだけ投入しないといけないのです。たとえばニューヨーク侵攻作戦に必要なポイントが80ポイントだとしたら、最低でもそれだけは確保しないと作戦開始を前提にしたアクションはすべて没になってしまいます。多ければいいかというと、ニューヨークに200ポイントをたたき込んだら、南米や南アフリカでの作戦が実行できなくなったり、新兵器の開発がストップしたりします。そして総ポイント数は常にぎりぎりです。大統領の仕事の大半は、このポイントの集計にあった気がします。
 いちばん最初にそのターンの作戦方針をみんなと連絡し合って決定し、必要なポイントが決まったら、とにかくポイントが必要数に達するまでカウントし、「欧州空爆にあと3ポイント足りません!」とまるで献血センターの職員みたいなことを延々とするんですね。「××さん、新型機開発に投入するといっていた5ポイント、1ポイントだけ空爆に振り分けてください!」とか…。
 はっきり言って、インターネット環境にないプレイヤーは置いてきぼりにされるゲームでしたね。

■神は天にいまし
電波新聞 そして最終リアクションの到着です。リアが届く前から噂が乱れ飛んでいました。まあ、真偽はともかく「アメリカはエライはめに陥っていて、各国で死者続出」というあたりは確実らしくドキドキ……で、来ました☆ 概要を説明すると、

◎ドイツ第三帝国
「ドイツでは反ヒトラー派のクーデターは失敗したものの、ソ連軍がベルリンに到達し、結局、総統は自害。欧州連合は、戦争に積極的に関与せず外交と産業育成に重点を置いていたイタリアとスペインを中核に再編されることに。フランコやチアーノのロールプレイ的勝利か?」(最下位)
 マスターいわく、「史実でもフランコはあんなやつでした」。

◎英米連合
「自由フランス軍は日本の支援が途絶えたためアフリカで足止め。ヴィシー政権は存続し、自由フランスは議会にド・ゴール派議員を送り込むのが精一杯。イギリスはチャーチルがチェンバレンと共闘し、祖国の再統一と反ナチ宣言。しかしチャーチルはUボートから発射された反応兵器によりロンドンごと消滅。チェンバレンはナチ派英軍と白兵戦をして戦死。一方、テキサスでは日本軍プレイヤーの裏切りについに方面軍司令モリタがキレ、命令無視してテキサス侵攻。モリタの反乱軍を鎮圧するため、全戦線が作戦ストップ。また謀叛の際に防諜担当者が拘禁されてしまったため、日本の手引きで潜入したドイツ軍スナイパーによって大統領暗殺。その知らせを聞いた老将軍も急逝し軍の動きはストップ」(第3位)
 モリタ、気持ちは分かる、気持ちは分かるが、もう少し辛抱して欲しかった……とは皆の声。

◎日本
「中盤以後は軍の主力を中東に振り向け、ドイツとドンパチ。終盤は補給が伸びきり動きが鈍ったところで、中国戦線に火がついて戦線の再編に大わらわ。それでもテキサスとか中近東の油田の権利を獲得し、英米独の蹴落としに成功したためポイント的にはなかなかのもの。政治家は楽しかったかも知れないけれど、軍人には不満が多そう。」(第2位)

◎ソ連
「対独戦に軍事・外交のすべてを結集。ドイツ軍の反応兵器を使いまくる猛攻にも耐え、ついにベルリン到達」(第1位)

 なんというか、凄い結果ですね。仮想戦記史上最強のソ連軍でした☆ でも予定通りではないけれど、予想範囲…かな。そしてゲーム的にはともかくロールプレイ的にはアメリカは悪くはない結末です。
 アメリカは日本の手引きで大統領が暗殺されましたが、既に若きケネディという後継者を見つけ、前ターンから英米連合の内政や外交を一部担当させて実績を与え、副大統領あるいは米州連合議長職に内定させています。ついでにいうとCIAによって日本やドイツの息がかかっていないか調査も済ませてありますし、行政スタッフも育ててあります。
 政治的には東部アメリカからのドイツ軍駆逐は失敗しましたが、これまで分裂していた西アメリカや独立諸州、その他中南米諸国、さらにモリタ謀叛のどさくさでテキサスを加えて米州連合を発足させるのに成功しました。つまり政治・経済・軍事ネットワークの規模でいえば第二次大戦前より拡大しています。これを仕切ることになるのがケネディです。
 経済的には、逆境の戦時中でさえ隔月刊空母(搭載機&パイロット付き)、月刊護衛空母、隔週刊駆逐艦とバカンバカンと量産体制の生産力。日本の1年分を1ヶ月で生産しているんです。これに加え米州連合ネットワークにより資本や人的資源の流動化が促進されたら無敵です。
 これに対して日本は、勢力圏こそ中米から中東まで広がりましたが、中国戦線は激化する一方。吉田首相が外交用のリップサービスで「民族自立」とか「日本は領土的野心をもたない」と言ったのを友好諸国が拡大解釈し、2階の屋根に押し上げ梯子を外してしまいました。ただでさえゲームバランスをとるために「軍事力は凄いが、それを支える経済基盤に不安がある」とされている点を周囲が徹底的につつきます。ルール上の生産能力から見てもストーリー上の設定からみても、日本は長期戦は無理です。かといって全戦力を投入しての短期決戦で大陸を再制圧するのは、(「民族自決はどうした」という外部のツッコミが無くても)困難でしょう。かといって大陸から撤退すれば母国の経済力が貧弱なのでジリ貧は目に見えています。こうなるとなまじ勢力圏が広がったことが裏目に出ます。
 ドイツといえば戦争被害は甚大です。特にベルリンを境に南北分割されてしまい、経済復興も簡単にいきません。壊滅…までいかなかったのはシューペアが懸命に生産拠点の疎開を進めていたからですが、復興までの道のりは楽ではありません。おそらくフランスの扱いを核に、イタリアやスペインとの舵取りをいかにするかで運命は大きく左右されるでしょう。いずれ復活しますが、10年では無理です。
 トップのソ連ですが、勝ちました。ベルリンまで取りました。でも工場施設などの主なものは移転されてしまっています。祖国の主要都市や港湾はすべて反応兵器の標的となっています。シベリアの拠点こそ無傷ですが、ゲームの勝ちほど余裕はないのが現状です。
 まあ、アイゼンハワー史観のように「アメリカの勝ちだ」と言い切るのは説得力がないかもしれませんが、他と比べてそんなに悪くないのも事実でした。

■神は本郷プライベにいまし
 その後、東大赤門近くの旅館を会場に、宿泊プライベが開催されました。参加者は25名ほど。グランドマスターも含めマスターも3名招聘し、反省会やら暴露会やらの一晩です。そのマスター評の一部を紹介しましょう。
「反応兵器の猛攻を受けながらソ連が破竹の進撃を続けたのは、核攻撃の乱発によってドイツがペナルティを受けたからではない。ただ、反応兵器でやられる以上に増援が届き、目標を絞ってひたすら前進を続けた結果である。」
「ヒトラーは的確に交通の要所や軍事拠点などを狙ってきたが、人民パワーには勝てなかった。やはり『核攻撃があった場合は即座に伏せ、爆風が頭上を通り過ぎまで待機すること』という対策を兵士に周知徹底したソ連が強かった」
「ソ連は少ないプレイヤーが一丸となり、互いの足りない分を補いながらムダのない戦いを繰り広げていた」
「日本軍人はいかにも“佐藤大輔”的なキャラが多かった。そのせいか、陸軍はやけに冷静で消極的だし海軍も……」
「ド・ゴールは別に反英米的なアクションは書いてきていませんよ」
「モリタの最終アクションは『テキサスのブッシュは絶対に許さない!』というもの。これにはびっくり」
「英米は基本戦略が統一されていなかったんじゃないかと」
「ヒトラーは本当に1人で采配を振るってましたよ」
本郷プライベ といった感じで朝まで。隅っこでは破れた反ヒトラー・クーデター派が反省会していたり、ルーズヴェルト・ピーチがなにやら裏工作の締めをしていたりと賑やかでした。あまりうるさくて怒られるかと思いきや、同宿が陸橋大学のESSのコンパとかで、大学生が明け方まで廊下やロビーで歌って騒いでゲロ吐いて…私らむしろ表彰されるべきマナーだったかも。
 印象的だったのは、第3ターンで大攻勢をかけてソ連の前線を突破したものの、その後袋叩きにあってしまったロンメル将軍への評価がマスター間でも別れてしまったこと。1人のマスターはベストなアクションと評し、もう1人はダメダメなアクションと評したのです。
「ドイツがソ連軍に打ち勝とうとするなら、あのタイミングしかなかった。絶妙の突破作戦ですよ」
「しかし、後続が続かず、最後は文字通り100個師団を投入したソ連に駆逐されてしまった」
「けれどドイツが勝つにはあの瞬間しかなかった。ちゃんと増援や空軍支援があったら…」
「だって、北米から来るはずの増援が届かなくて、ヒトラーの部隊移動命令が全部キャンセルされちゃったじゃない」
「あれは北米のゴルツ将軍の現場判断だからね」
「まあゴルツが戦力を戻そうとしてもアイクに海で沈められてしまったろうけど」
「「アメリカはずるいよね〜」」
 だから、なんでそういう結論になる?

 クルーガー将軍いわく「裏切りとか抜け駆けとは無縁で、戦線をむやみに拡大せず、誠実な外交を続け、プレイヤーが1つの目標に向かって足並みをそろえたソ連が勝ったということは、この仮想戦記マルチゲームの第1作にとっては喜ばしいことに違いない。他人を裏切ったり陥れようとしたからといって勝てるわけではないという貴重な先例として」。

 ということで、最後のこの曲で締めくくりましょう。

『まことに遺憾に存じます』(「遺憾に存じます」クレージーキャッツ)

♪開戦直後は友邦で
 日米共同 大作戦
 2国の友情を 世界に広げましょ!
 とかなんとかいわれたもんだが
 今じゃ 足の引っ張り合い
 こらまたどういうわけだ 世の中まちがっとるよ
 まことに遺憾に存じます

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