コラムタイトル

 

「恩師」・・・ミュージシャンへの道 (15才篇)

自分が初めてバンドを結成してステージで演奏したのは中3の文化祭。
中3になった時に音楽の先生が転勤して来た。
それまでの教科担任のマチコ先生は温和なお嬢様タイプで「典型的な音楽女教師」だったけれどモリヤ先生は力強い女王様タイプ。
ぐいぐいと生徒を引っ張って行くバイタリティ溢れる人だったので当初は面食らったものだった。


文化祭が近づいたある日、モリヤ先生に放課後、音楽室に来るように言われた。
行ってみると、そこには6組の遠藤と5組の英仁が居た。
これから何が起きるのか?
何故クラスの違う3人が呼びつけられたのか?
ドキドキしていると、モリヤ先生の口から出た言葉は
「あんたたち、バンドを組みなさい」。
出し抜けに何を言うのか、この人は!


遠藤は小1の時「クラスで一番小さいやつ」を競った旧知の仲だ。
英仁は中1で同じクラスになって以降、一緒に遊び、一緒にギターを弾く「相棒」だった。
遠藤と英仁は小3から小6まで同じクラスだったし、ようするに3人とも気心の知れた仲だったので、まあ「相手に取って不足はない」って事で、 バンド(と言ってもアコギ3人なのだけれど)は始動した。


さあて、何を演奏しようか?
自分と英仁はいつもさだまさしやアリスを一緒に演奏していたので、ライヴ栄えがするアリスの曲を、遠藤はオフコースの曲を推し、お互いが譲らず平行線だったので 一人2曲を選曲する事になった。
結果、アリス4曲、オフコース2曲。
自分は曲によってアコギ、ピアノ、エレクトーンとポジションを変更する事になった。


さて、その嬉し恥ずかしなセットリストを記しておこう。
1. Wild Wind -野生の疾風-
2. 涙の誓い
3. その時はじめて
4. 愛を止めないで
5. 帰らざる日々
アンコール. 冬の稲妻
グループ名も恥ずかしいぞ。
「科学特奏隊」だ。

モリヤ先生の快進撃は続く。
校内合唱コンクールだ。
例年だと、歌う人達はピアノの伴奏でステージ上で歌ったものだが、この年は、体育館中央を360度取り囲むようにしてステージに上がらずに歌うスタイルになった。
伴奏もアコースティックギターになった。


更にモリヤ先生と文化委員会(自分が副委員長だったのだ)は校内コン サートを企画した。
午後の5&6時間目を授業の替わりに使って全校生徒に観せる大胆企画だ。
オーディションを通過した4バンド(全てアコースティック)が出演出来るもので、英仁が脱退して2人編成になった「科学特奏隊」は予選2位 通過だった (1位通過は啓ちゃんと修二のデュオで彼等は既にオリジナルを 演奏していた)。
セットリストはうろ覚えだけど
 眠れぬ夜、愛の唄、秋の気配、愛を止めないで
だったような気が。

「バンドマンは女子にモテる」と言うのは本当の事で、 ファンレターなんかを貰うようになった。


今まで一度も思った事は無かったけど、モリヤ先生の転勤があと1年早かったら......
「中2の頃の恋」は違う展開だったかもしれないなぁ、
なんて思ったりして。


いやいや、そんなに欲張ってはいけない。
モリヤ先生がくれた「変化」はとてつもなく大きかった。
「タラレバ」なんてナンセンスかもしれないけれど、先生が転勤して来て「バンドを組め」と言わなければ、別の高校のライヴに出演したり、東京の学校に行ったり、 「全自動パワー融雪機モンスター!」って歌ったり、「に〜いっせ〜んれんじゃあ〜♪」なんて曲を作ったり、 全世界に発売されたDSのテーブルゲーム集ソフトの音楽を作ったりはしていなかったかもしれない。
この人を「恩師」と言わずして誰が恩師足り得ようか?